第10話 凉花の情報と佳入の勘
「どう思う?」
「はい?」
夜会が終わり、寝る準備をしていると、佳入が声をかけてきた。
普段、あまり声をかけてこないので、凉花は一瞬動きをとめた。
短い沈黙のあと、布団三枚分離れた佳入を見ると、まっすぐ凉花をみていた。
「分隊長の二人だ」
「…なんの話ですか?」
話の内容が見えない。
凉花は特に顔色を変えず、首をかしげた。
凉花の脳裏には奈須の顔が思い浮かんでいるが、わざと黙る。
しかし、佳入の顔からはいつもより真剣さを感じる。
「これは垂れ込みの情報だが」
佳入は姿勢を正して、凉花に向き合った。
「俺の隊、第一部隊に裏切り者がいるという情報が入っている。おそらくあの分隊長二人の中。何か知っていることはあるか」
「なぜ、分隊長の二人に限定するんですか?」
「普段の働き方、情報の漏洩具合、あとは勘だ」
「あ、そうですか」
凉花の持つ情報と佳入の勘が合致することにわずかな感動をしつつ、言おうか迷う。
その短い迷いをみて、佳入は一つ頷いた。
「……わかった」
「何がですか」
「誰が、という話ではない。だが、俺の隊に何かがあるのは確からしい」
その言葉の背後を読み取った凉花は、思い切り眉を寄せた。
「まさか私の作り笑いをやめさせたのは、その意図があったんですか」
「何を言っている?」
「私が作り笑いをやめるように言ったのは、こちらがもつ情報を手に入れるためですか、と」
「それは誤解だ」
肩をあげて、佳入は軽く息を吐いた。
「お前が人間の顔をしているほうが、俺の気分がいい。その……他意はなかった」
「…そうですか」
凉花はそういいつつ、布団の中に入った。
もう佳入を信じるはずがなかった。




