桜のように

　その見慣れぬ場所で、私は窓際の席に座り、周りを見渡していた。目の前には広大な海が広がっていて、空は青く、海は静かで、まるでその世界に包み込まれるような感覚だった。部屋の構造はちょっと変わっていて、六角形の空間になっていた。窓の外の景色は美しすぎて、思わず心を奪われてしまったが、その静けさの中で、私の思考はふわりと漂っていた。

　突然、耳元で雑音が響き、それが私の思考を現実に引き戻した。

「ここは一体、どこだろう？」

　その疑問が心に浮かんだものの、すぐにその答えは出てきた。

　これは私が高校に合格したクラス——高一2班。

　周りを見渡すと、私は一瞬、ただ茫然としていた。見知らぬ顔、見知らぬ机、そしてその空気までもがどこか不安で、居心地が悪かった。私は机にうつ伏せて、まるで眠っているかのように装いながら思った。未来の三年間、私はここで過ごすのだと。しばらくは、この場所に慣れるための時間が必要だろう。

「すみません、この席、空いてますか？」

　その声に私は思わず顔を上げた。その声を発したのは、どこか社会的な雰囲気を漂わせた男子だった。しかし、なぜかその礼儀正しさに驚かされる。

「空いてると思います……」私は少し迷いながら答えた。

「ありがとうございます。」

　彼は礼儀正しく座った後、私に向かって静かに尋ねた。「あなたの名前は何ですか？」

「阿良良光一、です。」私は淡々と答えた。

「优股和人です。」

「よろしくお願いします。」

「こちらこそ。」

　簡単な自己紹介を交わした後、私たちはまた沈黙に戻った。私はまた机にうつ伏せて、小さな猫のように目を閉じ、周りの動きをただ静かに感じ取っていた。クラスの空席は少しずつ埋まり、同じクラスの新しい顔が次々と座っていった。親しくなるつもりはなくても、みんなが少しずつ言葉を交わしていた。結局、三年間を共にするクラスメートだから、自然とこうなるのだろう。

　壁に掛けられたデジタル時計が9時30分を指し、ようやく先生が教室に入ってきた。身長が低く、少し年配の先生だ。

「みんな、揃ったか？」

　先生は部屋を見回し、確認した後、自己紹介を始めた。

「私は木村修一。皆さんの国語の先生であり、クラス担任だ。教職歴は長い。」

　彼は少し笑いながら言った。「ここにいるみんなは、賢いわけじゃない。もし賢かったら、こんな学校にはいなかったはずだ。」

　その言葉を聞いた瞬間、空気が少し重くなった気がした。心の中で、無意識に不安が広がっていく。あの時、なぜこんな学校を選んだのか、少し後悔の気持ちが湧き上がった。

「さて、自己紹介を始めようか。前の方、君からお願い。」

　最初の生徒が立ち上がり、黒板に名前を書きながら自己紹介を始めた。その後、恥ずかしそうに小声で話す子もいれば、自信満々でスラスラと話す子もいた。中には冗談を言ってみんなを笑わせるような子もいて、教室の空気が少し和んだ。

　そして、ついに私の番が来た。準備はしていたけれど、心臓がドキドキして、少し不安な気持ちが湧き上がった。まるで目に見えない力に引き寄せられるように。

「次の人。」

　私は立ち上がり、黒板に名前を書きながら、事前に考えていた簡単な言葉を一気に言った。その瞬間、なんだかホッとした気分になり、席に戻るときは安堵感が胸を包み込んだ。

　その後、他の生徒たちの自己紹介が続いていく中で、私は無意識に目を横に向けてしまった。その目線が導かれた先には、彼女が座っていた。茶色の髪が風に揺れ、光の加減で艶やかに見える。その髪は、まるで時間に優しく包まれたシルクのようだった。彼女の肌はまるで北欧の冬の雪のように白く、冷たくも美しい。グレーの制服に、海軍ブルーのスカートがとても似合っていた。彼女の唇の色も特別で、鮮やかな赤ではなく、どこか落ち着きが感じられる、優しい色合いだった。

　突然、彼女と目が合ったような気がした。私は無意識に目をそらし、他の生徒の自己紹介に集中するふりをした。

　窓の外では、夏の風が穏やかに吹いていた。その風は温かさを含んでいて、私たち新入生を静かに迎え入れているようだった。風は教室の窓を軽く開け、私たちに無言の招待状のように、新しい物語を始める準備をしているかのようだった。