表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/77

26-31


「嘘…テオ君?」


 え?。


「やっぱり、カシマだったか…」

「ナミさん、知り合い?」

「はい!知り合いです。同じ村の出身なんです」


 同郷でもあると。


「何年ぶり?元気だった?今何してるの?」


 彼女は、すごく嬉しそうな顔で、立て続けに質問をする。


「その前に、剣を収めてくれねえかな…」

「ごめんなさい。ソニアさん、大丈夫です。彼は悪い人じゃないです」

「ええ…わかったわ」

 

 わたしは剣を鞘に収めた。



「ほんと久しぶりだよね」

「五年ぶりくらいか」

「うん!そう」


 二人だけで、話が盛り上がっている。


 わたしそっちのけで。


 まあ、それはいいんだけど、ナミさんのテンションが高い。


 ここまで、饒舌に話してるの初めて見た。


 アーロンさんの時とは大違い。

 

 あれ?もしかして…ナミさんは、彼の事を…。



「ナミさん」

「はい?」

「一応、紹介してもらえる?」

「あ、すみません」

「いいのよ」


 彼女が苦笑いを浮かべて謝る。


「こちらはテオドール・デッケルス君。彼女はソニア・バンクスさんです」

「どうも」

「ああ。よろしくな」


 軽く握手をする。


 当たった手のひらが固い感じがした。


 彼は、あまり感情を表に出す性格ではないみたい。


「立ち話でもいいが、座って話さないか?」

「うん、いいよ」

 

 ナミさんが即答する。


「来てくれ。そんなに離れてない所にいい店がある」


 テオドールさんは、手招きしつつ歩き出した。


「行きましょう」

「え?ええ…」

 

 ナミさん、積極的ね。それにずっと笑顔。

 

 

 ナミさんは、テオドールと呼ばずに、テオと短く呼ぶ。でも、テオドールさんは、ナミさんをカシマと呼んでいる。

 

 不思議な関係ね。

 

 ナミさんが一方的に好意を寄せてるのかしら?。


 

「ここの二階だ」


 さっき通った裏通りにあるお店。


 ドアを開けると、ドア鈴がなった。


 食事よりお酒がメインみたいね。


 棚に酒瓶が、ずらっと並んでる。


 カウンター席とテーブル席があるけど、誰も座っていない。

 

「よお」


 テオドールさんは、片手を上げて、店主らしき人物に挨拶する。


「おう」


 店主もわたし達とそう変わらない年齢みたいね。


「珍しいな。一人じゃないなんて」

「店が潰れそうみたいだからな」

「そいつはありがたいねぇ」


 

 わたし達は一番奥の丸いテーブル席に座る。


「好きなものを頼んでくれ。一杯目は俺がおごるよ。怖がらせたみたいだからな」

「別に怖くなんかなかったよ。そうですよね?ソニアさん」

「うん…まあ、わたし達は慣れてるから、いうほど怖くなかった」

  

 それなりに怖かったんだけど、ナミさんはテオドールさんを気づかって言ってるんだし、話を合わせておこう。


「別にいいんだぜ。たいして高くないし」

「悪かったな安酒で」

 

 店主がそういいながら、緑色の何かを出す。


「これサービスね。お金いらないから」

「どうも…」


 テオドールさんが店主から耳打ちされてる。


「知らねえよ…」

「いいじゃねえかよ」


 面倒くさそうに、ため息を吐くテオドールさん。


「たくっ…あんた達の名前を聞きたいとさ」

「わたしはソニア」

「ナミです」

「へえ」

「へえじゃないだろ。お前も名乗れよ」

「今言うって。俺マレクです。よろしく~」


 そういいながらメニューを出す。


「何飲みます?」

「お酒はちょっと…」

「私も…」

「飲めないのか?」

「うん…私はね。ソニアさんは大丈夫ですよね」

「大丈夫だけど、今はやめとく」


 町中で酔っぱらうのはマズイ。

 

 何かあった時に対処できないから。


「ここじゃないほうがよかったか…」

「私達はいいから、テオ君は飲んでいいよ」

「ああ…」

「いつもやつでいいか?」

「ああ。一杯頼む」


 マレクさんはカウンター裏へ。


 

 わたしはさっき出された緑色の何かが気になっていた。


「ナミさん。これなに?」

「これはエダマメですよ」

「エダマメ…。あ、豆なのね」

「はい。こうやって…押し出して、中の豆を出して食べるんです」

「へえ」


 一つ手に取り、教えてもらった通りに食べてみる。


「イケる!美味しいわ」


 塩味で、豆のいい香り。そして、いい歯ごたえ。


「エダマメ食った事ないの?」


 マレクさんがそういいながら、テオドールさんにグラスを出す。


「今日。初めて食べました」

「へえ。どこから来たの?」

「王国です」

「王国から?マジで?」


 マレクさんは驚きつつ笑う。


「何しに?」

「お前、向こう行ってろ」


 テオドールさんがマレクさんを押し返す。


「はいはい…わかったよ。俺、何か買ってくるから」


 そう言って店を出て行ってしまった。


「いいんですか?」

「ああ、いいんだ。よくある」

「そうですか…」


 テオドールさんが信用されてる証拠かしら?。


「で、何か用があってきたのか、観光か?」

「まあ色々…」

「観光ではない事は確かです」


 わたし達がここにいるわけを話した。


「なるほど…。お前、魔法士になってたのか…」

「まだ全然…ベッキーの方が先行ってる」

「ベッキー?…あー、あいつか…」


 テオドールさんが、眉間に皺を寄せる。


「覚えてる?」

「ああ、覚えてよ…勘違いしやがって」

「ふふっ。ベッキーは全然信じてくれなかったよね」

「何があったの?」

「木の実を取ってもらっただけなのにベッキーは、私がテオドール君からいじめられてるって勘違いして」

「その話はもういい」


 まだ疑いが晴れてないらしい。


「王国にいるなら顔を合わす事はないからな」


 彼は、迷惑な話だと言って、グラスに口をつける。



「テオ君は、今どうしてるの?」

「革職人やってる」

「そう。夢叶えたんだね」

「一応な」


 テオドールさんは手に職をつけるのが目標で、ナミさんよりも先に村を出た。

 

 手のひらが固い感じしたのは、そのせいかな?。

 

「ずっと都に?」

「ああ」

「ベッキーと来た事あるんだけど…」

「都は広い。相手の所在がわからなければ、会えないぜ」

「だよね」

「今回は、運が良かった」

「うん」



 マレクさんが帰ってきた。


「はい、どうぞ」

 

 彼がテーブルにお皿をおく。


 お皿にはナッツやチーズ、ソーセージなどがのっていた。


「もしかして、わざわざ買いに行ってくれたんですか?」

「いや」


 そう笑顔で言いながら、カウンターへ。


「私達のため、ですよね?」

「でしょうね」

「気にするな。よくあるって言ったろ」

「なるほど…」


 この店では常識らしい。



「ここにはいつまでいるんだ?」

「いつまで…」


 ナミさんは、わたしを見る。


「状況による」

「状況?」

「さっきも言ったけど、魔法研究所に用があるのよ」

「治癒魔法?だっけか?」

「うん。でも、連絡の取りようがないから…」


 研究所の人に連絡が取れれば、あとはもう全て上手く行く。


「あそこの所長は、シンシア・レーヴって人だよな?」

「そう、そうだよ。テオ君、なんで知ってるの?知り合い?」

「いや、まさか」

「城内に出入りできるとか?」

「一度も入った事ねえよ」

「じゃあ、なんで知ってるの?」

 

 テオドールさんは、お酒を一口飲む。


「あの人、孤児院と学校の責任者もやってないか?」

 

 ナミさんは、何かを思い出しのか、口元をおさえる。


「孤児院…あっ!エレナ様は子どもの頃、レーヴ様の孤児院に引き取られたて…」

「いつかは忘れたが、革張りの椅子を修理してくれって注文が来てな。先輩と何度か、孤児院に出入りしたんだ」


 そして、レーヴ様から直接報酬をいただいた。


「その時は、高名な魔法士だなんて知らなくて、後で知って驚いたよ。もらった報酬も提示額の倍を払ってくれたし…あ、すまん。話がずれたな」


 ということは、そこの孤児院に行けば、レーヴ様に会える可能性が高い!。


 わたしとナミさんは、立ち上がる。


「「それってどこ?」」



Copyrightc2020-橘 シン


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ