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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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26-23


 宿をなんとか確保し、夕食は何にしようかと、探しながら町の様子を見回る。


 夕食時をということで、食事処が並ぶ区画や持ち帰りできる割安な屋台には人が多い。


「今のところ、混乱してるようには見えませんね」

「ええ…」

「陛下が亡くなられて、二ヶ月だから喪に服しているのかなと、思ったんですけど、私の知ってる都の様子と変わらないです」

「そう…」


 ソニアさんは、そっけなく答える。


「ソニアさん、聞いてます?」

「え?ええ。聞いてるわ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫…じゃない」

「え!?」


 私は慌てて、彼女の体を支えた。


「ど、どこか座る所は…」

 

 周囲を見回すが、見つからない。そもそも、人混みの中心。

 

 そうだ、近くの店に入ろう。


 どこでもいい。まずはソニアさんを座らせよう。


 私は、彼女を支えつつ、目についた食事処へ向かった。


「大丈夫ですからね。そこの店に入って落ち着きましょう」

「そこの店、美味しいの?」

「わかりませんが、そこそこお客さんが入ってるみたいですし、それなりの…」

 

 ん?美味しいの?。


「ソニアさん?」


 違和感を感じた私は、彼女の顔を覗き込む。


 彼女の顔は血色がよく、具合いが悪い様子ではない。


 不思議そうな顔で、私を見つめ返していた。


「どこか体の具合いが悪いんじゃありませんか?」

「いいえ」


 ソニアさんは、真顔で首を横にふる。


「でも、大丈夫じゃないって…」

「あー、それはね…そこら中で美味しそうな匂いがしてて、お腹が空いてきちゃって…」


 そう言いながら、苦笑いを浮かべてお腹に手を当てた。


「なんだ…そうだったんですね…」

「あの、ごめんね」

「いえいえ!いいんです。私の方こそ、早とちりしてしまって…」

「心配してくれて、ありがとう」


 お礼を言われる事なんて一切していない。


 もう、何やってんだろう?私は…。


「何でもないから、もう腰に手を回さなくもいいんじゃない?」

「ファァ!すみません!」


 私は、ソニアさんから離れ平謝り。


 顔が熱い。


「もういいから」

「はい…」

「うふふ」

「指指して笑ってくれてもいいです…」

「もう、そんな事しないって。それより、夕食どれにする?」

「そうですね…」


 ソニアさんは全部食べたいと言ってるけど、それはさすがに無理。


「屋台ならすぐに出て来ますけど」

「ええ。屋台が気になるのよね」


 同じ料理でも屋台よって少しづつ違う。


 特徴づける事によってライバル店との差別化を図っているんだと思う。



「ソニアさんが、気になってものを食べましょうよ」

「全部、気になってて…涎で溺れそう」


 そう言って、ゴクリと喉をならす。


 どれがいいかなぁ…。


「オコノミヤキにしましょう」

「オコノ?」

「オコノミヤキ、です」

「どれ?」

 

 彼女を屋台の近くまで連れて行く。


「あれです。鉄板のうえで焼いている」

「丸いやつ?」

「そうです」


 小麦粉、野菜、玉子などを混ぜ合せて焼いた物。


「いいわ。あれにしましょう」

 

 オコノミヤキを焼いていた店主がが、テーブルと椅子がたくさん用意されている場所があると教えてくれた。 


「熱々のまま食べたほうがうまいから、そこ行きな。すぐそこだから」

「ありがとうございます」

「他におすすめのものってあります?」

「イカが豊漁らしいから、イカ焼きがお手頃かもな。あんた達が買った、それにもはいってるけど」 

 

 イカ焼きか…いいかも。


「俺のお袋がオデンをやってる。行ってみてくれ。さっき言ったテーブルが

たくさんある近くでやってる」


 そうだ、オデンもあった。


 オコノミヤキを買い、オデン屋の場所を聞いてそこへ向かう。


 行く途中でイカの串焼きを買う。


「イカって何?」

「海にいる生物です」

「魚とは違うの?」

「全然違います。骨がほぼないんですよ」

「骨がない?」

「はい。ぶよぶよで柔らかいです」

「ぶよぶよ?…さっき買ったイカ焼きはぶよぶよじゃないみたいだけど?」

「火を通すと固くなるんです」

「へえ。そこは肉や魚と同じなのね」


 ソニアさんはイカ焼きを興味深げに見る。


「足が八本があるんです」

「足が八本?…これには、ないみたいだけど」

「あるのも売ってたりしますよ。足だけを売ってる所も」

「へえ」


 ソニアさんは、我慢できなくなったのかイカ焼きを食べ始めてしまった。


「美味しい」

「私もたべちゃお…うん、美味しい」

「味付けはオショウユね」

「ですね」

「イカ自体はたんぱくでくせがない」


 彼女は気にいってくれたようだった。


 

 紹介してもらったオデン屋に到着。


「煮物なのね」

「はい。味付けしたダシ汁で煮込んでます」

「何を煮込んでるのかしら?」

「主に魚をすり潰して成形したのが主ですね」

「へえ。あ、あれダイコンじゃない?」

「そうです」

「玉子も?」

「はい。どちらも味は染み込んで美味しいですよ」


 オデンは種類が多いから迷いがち。


「お嬢さん達、どれする?」

「どれって言われても…ナミさんに任せていい?」

「はい。ソニアさんも気になるのがあったら言ってください」

「うん」


 全種類を食べさせたいが、ものすごい量になってしまう。それだけ種類が多い。


 代表的なものを中心に選んだ。


 竹製の器に入ったオデンを受取り、代金を払う。


「はい。毎度!」

「ありがとうございます」


 今日の夕食を無事確保。


「後は、食べるだけね」

「はい。いただきましょう」


 私達はテーブルへと急いだ。



 

 とある区画Iに、テーブルと椅子が大量に並べられいた。


 周囲を囲むように屋台が並んでいる。


「結構、混んでるわね」

「みなさん、夕食でしょう」


 お酒を飲んでる人もいる。


 わたし達は空いてる席を見つけ座った。


「やっと食べれる」

「私もお腹が空きました」


 買ってきたものを目の前に広げる。


 オコノミヤキとオデン。


 イカ焼きは、すでに美味しく食べてしまって、もうお腹の中。


 どっちから食べようかしら?。


「オコノミヤキは味付けが濃い目なので、オデンからの方がいいかと」

「そう?じゃあ、オデンからにしようかな。いただきます」

「いただきます」


 ナミさんがダイコンを食べ初めたので、わたしもダイコンから食べよう。

 

「うわ」

 

 ダイコンとハシで二つにしようしたら、なんの抵抗のもなく入っていく。


「柔らかい」

「結構な時間煮込んでますから」

 

 白いダイコンがダシ汁と同じ色してる。ダシが染み込んでいるんだ。

 

 わたしはダイコンを一口。


「美味しい!」

「美味しいですよね」

「柔らかいし、ダイコンの味とダシ汁が口の中に広がる」


 美味すぎ!


 玉子も他の具材も味が染み込んで美味しい。


 魚のスリミを使った具も、全部味が違っていて、これも全部美味しい。


「このスジってやつもぷるんとしてて、これ最高」

「ですね」

 

 次はオコノミヤキ。


「上にかけてもらった緑色の粉って何?」

「アオノリです。海藻の一種です」

「へえ。この薄いのは?」

「それはカツオブシを薄く削ったものです」


 カツオブシについて、ナミさんが説明してくれたけど、想像の域を出ず、よくわからなかった。


「と、とりあえず食べ物ですので…当たり前ですけど」

「そうよね。食べられないものをかけたりしないのも」


 オコノミヤキをハシで一口分に切って、口に入れる。


「ん!!美味しい!」

 

 甘辛いソースが合う。


 アオノリとカツオブシの風味も。


 正直、美味しそうに見えなかったよね。


 何が白いドロドロしたものを鉄板で焼いていたから。


 ドロドロの中には、野菜とその他の具材が入っていた。

 

 焦げ目がついているが、固いわけではなく、ふわふわとした食感。

 

 これ好き。


「もう二枚くらいいける」

「買いに行います?」

「うーん…いや、やめとく」

「どうしてです?時間的には余裕ありますよ?」

「食べすぎて、太っちゃうわ」

 

 太って帰ったら、なんと思われるか…。


「そんなすぐに太らないと思いますけど…」

「わからないわ。ヴァネッサ隊長になんて言われるか」

「あー…」

「あんたらさ、なにをし行ってきたわけ?」


 わたしはヴァネッサ隊長の口調を真似る。


「あはっ!ふふ!…」


 ナミさんは口を押さえて笑いを堪えていた。


「いいそうです。ミャン隊長が羨ましがっちゃったり?」

「そうそう」


 そんな事を話ながら、買った夕食は全部キレイに食べきる。

 

 夕食でこんなに満足したのは、初めてだった。 



Copyrightc2020-橘 シン


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