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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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25-17


「エレナが、そこまで熱く語るって事は、相当珍しい魔法という事か…」

「興奮しすぎダヨ!」

「興奮はしていない」


 これは魔法士として見逃せないもの。


 魔法のさらなる可能性を示すかもしれない重大な案件。



「魔法に関しては、エレナに任せておけば間違いない。転移魔法は別にして、王都へ出向いた甲斐があったと」

「はい。ありすぎるほどに」


 思わぬ収穫であったの確かだ。




「ヴァネッサのほうは?交換訓練?だっけ?」


 ウィルがそう訊いてくる。


 あたしはスプーンを一旦置く。


「ああ。許可はもらって、時期的は夏頃なるかな」

「すぐするわけじゃないのね」

「会合があるから。それが終わってから」

「会合か…忘れてたよ」


 忘れてても支障ない。


「断ってきたよ」

「え、なんで?」

「なんで?って…行く気だったの?」

「出たほうがいいんじゃないかと…」

「また王都まで護衛はちょっと…」


 やめてほしいね。


 寿命が縮む。


「転移魔法があるじゃない」

「やめた方がいい」

「私も推奨しない」


 エレナが言うんだから間違いない。


「そう?」

「無理する必要はないって」


 ウィルは納得いってないような表情していたけど、あたしは拒否した。


「ウィル様の護衛は、君にとってトラウマのようだな」

「トラウマは言い過ぎ」

 

 いい経験になったのは確かだろうけど、またやりたいかと言われたら、やりたくない。


 他の誰かに任せのも嫌だね。


 小麦の買い付けにシアリバまで任せたけど、あれだって正直気が気でなかった。



「リアンは留守番で、僕だけなら…」

「嫌よ!私も行く!」

「アタシは全然オーケーダヨ。また美味しい料理食べれるんでショ?」

「だから、行かないっての!」


 ソニアとアリス、ジルが笑ってる。



 王都へ行く行かないを、話し合う場じゃない。



「わかったよ…」

「そりゃどうも」

「交換訓練をする時期が決まっただけ?」

「いや、こっちからはライノとミレイを出す。お目付け役に誰か」

「三人か…。一番隊からも三人?」

「向こうは、一班四人」


 誰が来るのかは分からない。


 特に指定はしなかった。

 

 今の一番隊に誰がいるのか、いや知ってるのはロキぐらいだしね。


「同じ人数じゃないけど、いいの?」


 リアンが食後の紅茶を飲みながら、そう訊いてくる。

 

「一人ぐらいならね。他に行きたいやつがいれば、連れて行こうかな」

「それは、竜騎士以外でもいいのかな?」

「一番隊の訓練について来れる自信があるなら、誰でも」


 あたしは笑いながら、ライアに答えた。


 いないだろうね。よほどの自信がなかったらさ。


「志願したい」


 ライアが手を挙げる。


「あんたは、隊長だし…」

「いけないか?」

「そうじゃないけど…行く必要ある?」


 彼女の二刀流は、あたし達が驚くほどメキメキ腕が上がり対抗できるのはシュナイツではわずかになった。


 だけど、ライア本来の剣の精悍さは、まだ戻っていない。


 本人も二刀流は未完成と言ってる。


「腕試しをしたいんだ」

「あんたらしくないね」

「そう…かな?…」

「そんなに好戦的だった?」

「どうだろう…」


 彼女は腕を組む。


 ライアは一番隊の訓練についていけるかどうか分からない。女だし。


 あたしみたいな、体力があるならまだわかる。


 ライアが訓練について行けずに、自信をなくす姿は見たくない。


「訓練なら、あたしが付き合ってあげるから。やめときな」

「そうか?…」

「じゃあ、アタシが行ク!」


 今度はミャンが手を挙げた…。


「あんたこそ、行かなくていい」

「なんでサ?」

「あんたは訓練が目的じゃなくて、食べ物でしょ?」

「え?いやァ…ハハハ…」

「たく…」

 

 お見通しだよ。


「即否定しない所があなたらしい」


 エレナがそう話す。


「だね。即否定して、短槍の腕前を上げたいって、真面目に訴えていたら…」

「もちろん、アタシはネ!…」

「はい、もう締切りました。残念!」

「エー!!」


 ミャン以外の全員が笑った。


 締切は冗談で、募集はしてみようかな。


 

 夕食兼報告は終わる。


 魔法士のナミが、呼び出されるわけなんだけど、見張りつく者、興味がない者、眠たい者は多目的室を出ていった。




 夕食が片付けられた多目的室に魔法士隊全員を呼ぶ。


 ナミだけでいいのだが、全員がついてきた。


「いや、気になるし…」

「面白そうよね」

「魔法に関わる事は、勉強と思って見ておきたい」

「だな。知っておくことは、無駄じゃないはずだ」


 レベッカ、リサ、ウェイン、エデルは興味津々と感じ。


 一方、ナミは不安気だった。


「治癒魔法の説明はわかりましたが、多目的室で確認する必要があるのでしょうか?」

「あなたが治癒魔法を使える事が判明したらやってもらいたい事がある」

「なんですか、それ?…」

「後で話す」


 治癒魔法が使えないとなったら、それはそれで問題だが、私には使える予感があった。 


 

 多目的室にはウィル様とリアン様。


 ヴァネッサとライア、それからソニアが残っている。


「来たね」


 私はテーブルに王都で写本してきた治癒魔法の魔法陣を広げた。



「まずは…ナミ」

「はい」

「あなたにいくつか質問がある」

「はい…」

「大丈夫。難しい質問ではない」

「はあ…」


 私は事前に質問事項をメモした紙を出す。


「カレン・カシマという名に心当たりは?」

「カレン…ひいおばあちゃんがカレンという名前です」

「そう。魔法を使っていなかった?」

「いいえ」


 ナミは首を横に振る。


「本当に?」

「はい」

「そう…」


 カレン・カシマ氏が身内だと思ったのだが、違うか…。


「ねえ、ナミ。おまじない、使ったなかった?」

「え?あー、うん。でも、魔法じゃないでしょ?」

「どういう事?」


 ナミとレベッカによると、カレン・カシマ氏が、おまじないを使っていたと。


「おまじないで何を?」

「よく覚えてないんですよ…でも、村の人が、よくひいおばあちゃんに会いに来ていました」

「村の人が?…」

「はい。みんな喜んで帰っていってました」


 喜ぶ?。


「ひいおばあちゃんが何か関係あるんですか?」

「あなたのひいおばあさんは、治癒魔法を使えた可能性が高い」

「まさか!普通の人でしたよ」


 しかし、状況を見れば魔法士である可能性が…。


 別人、なのか…。


「ナミ。あれっておまじないじゃなくて、魔法だったんじゃない?」


 レベッカがナミのそばに寄る。


「ねえ。小さい頃さ、木登りして枝が折れて落っこちたの。覚えてない?」

「覚えるよ。レベッカに無理やり登らされて…」

「あーごめん…」

「いや、もういいんだけど」

「そ、それでさ、カレンおばあちゃんがすっとんできて」

「うん」


 あまり楽しい思い出ではないとうだが、ナミは笑顔になる。


「私、背中を打って、大泣きして、カレンおばあちゃんが背中を擦りながら、痛い痛いの飛んでけーって、それで…痛みが消えて…まさか!?」

「そうだよ!あれは魔法だったんだよ!」

「そう魔法!みんな喜んでいた。腰の痛みが消えたって、切り傷が早くなおったって、呼吸が楽になったって…全部、カレンおばあちゃんの魔法…エレナ様!」

「ええ」

「カレンおばあちゃんは、魔法が使えたと思います」


 カレン・カシマ氏が魔法が使えた可能性が高くなる。



「しかし、ナミは魔法が使える。身内に魔法が使える者がいると、本人は魔法が使えないか、使える可能性が極端に低く、セロに近いと習いました」


 ウェインがそう話す。


 彼の言っている事は間違いない。


「ええ。それは間違いない」

「では、どうして…」

「治癒魔法と、あなた達が使える攻撃魔法は特性が違う」

「特性?」


 私は、治癒魔法と攻撃魔法とでは、発動させるための魔法力がいが違う事。

 治癒魔法と攻撃魔法は、両方は使えない事を説明した。


「攻撃魔法とは逆で、身内に治癒魔法を使える者がいても、関係なく魔法を扱える可能性がある」

「なるほど。それで合点がいきます。攻撃魔法が使えなかったのは、治癒魔法が使えるからと」

「そういう事になる」



Copyrightc2020-橘 シン


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