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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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25-15


「わたくしが気になったのは、襲撃の首謀者が竜騎士と魔法士の二人組という事です」

「それはあたしもびっくりしました」


 シュナイダー様を暗殺した二人組と証拠はない。けど…。


「これを。極秘任務の報告書です」


 クローディア様が一枚の書類を貰う。


「…。例の件は帝国が活用拠点。パトロンがいる模様…」

「わたくしは怖くなりました」

「半分突き止めたものなようもんですよ」

「最新の報告書では、煙に巻かれたと」

「ちっ!」


 何やってんだよ!


「大分近づいているようです。竜騎士と魔法士の二人組は目立ちます。すぐに見つかるでしょう」

「だと、いいんですけどね…」


 ご尊顔を拝見したいね。早くさ。


「パトロンについては?」

「特にまだありませんが、資金面から見て、大商人かなと」

「あたしもそう思うんですが…どうにもひっかかって」

「何か心当たりでも?」

「心当たりっていうわけじゃないんですが…違う気がするんですよ。もっと大物ような気がして…」

「大商人では役不足だと?」


 本当に何となくなんだけど。


「商人がここまでやります?」

「そうですね…。何か恨みつらみがあるのかもしれません」

「まあ、それなりの恨みはあるでしょうね。じゃないとここまで、シュナイダー様とシュナイツは狙わないと思うんですよ。計画は練られたものだし、資金面したって、一人じゃない可能性も」

「なるほど。思い込みはよくないですね。あらゆる可能性を考慮しましょう。そう担当者に伝えておきます」

「よろしくお願いします」


 自分で捜索できないのが、歯がゆい。



「北部の治安についてですが、あなたから色々要望がありましたが、さほど実現できず申し訳ありません」

「それは竜騎士隊の責任ですよ」

「ええ。ですが…」

「今日、騎士長にも会って聞いたんですが、竜騎士の常駐には反対意見が多かったと」

「はい…。陛下から勅命も考えたんです」

「そうですか」

「しかし、何が遺恨が残るのは避けるべきと…」


 竜騎士同士が仲違いしては、まずいか…。


 そうと決まれば腹をくくるんだけどね。


「巡回だけでもありがたいです」

「その程度の妥協点しかなかったのが、悔やまれます。それに負担になるのは、六番隊だけ…」

「六番隊は何と?」

「隊長は、何も言わず椅子を粉々にして退出しました」

「あー」

 

 怒り心頭か。


 そりゃ自分達だけ負担になったら、椅子も壊したくなる。


 六番隊はそうでなくも管轄範囲が広く負担は大きい。

 そしてさらに増える事になった。


「六番隊については予算を増額。人員も増やす事にしました」

「人員?竜騎士ですか?」

「いいえ。騎馬隊です。とりあえずは」


 なるほど。


 騎馬隊で補う形か。


 少しづつ竜騎士に配置転換する予定だと、クローディア様は話す。



「あとは…」


 クローディア様はこめかみを押さえる。


 大体、話したい事は話せたと思う。



「ロマリーは順調に出世してますか?」

「ええ。頑張ってますよ」


 あいつはどんどん上に行ってほしい。


 それだけの才があるとあたしは、思っている。


「彼女がきっかけで、メイドからの転属を許可しました」

「それは、クローディア様もでしょう?」

「ええ、まあ…最初のきっかけは、わたくしでしょうけどね」


 いいんじゃない?。


 適材適所ってやつさ。


 才能を埋もれさせるには惜しい人材は必ずいる。


「あたしは、クローディア様の後を継ぐ事ができるんじゃないかって思ってるいるんです」

「え?」


 クローディア様は驚き、あたしを見る。


「そう思いません?」

「わたくしからはなんとも…」


 彼女は困ったように苦笑いを浮かべた。


「ロマリーは、わたくしの後を継ごうとは思っていないと思いますよ」

「はい。あたしもそう思います」

「ならば何故…」

「彼女は、本心をあまり表に出す性格じゃない。継がないにしても、自分はどこまで行けるのか、なんて考えてる」

「親友としての分析ですね」

「買いかぶりでしょうか?」

「いいえ」


 クローディア様は首を横に振る。


「彼女が、頭一つ抜けてるのはわたくしも認めています。ですが、まだまだ経験が足りない」

「でしょうね」

「今後の成長しだいで、変わる可能性もあります」

「今後…。クローディア様、ロマリーをよろしくお願いします」


 あたしは頭を下げた。


「あなたは彼女の親ですか?」

「年齢で言えば、姉ですかね」

「ふふっ。わかりました。善処しましょう」

「ありがとうございます」


 ロマリー、頑張ってよ。


 あんたは王国を背負って立つ気概があるって信じてるからね。



「ファンネリア様にも会っていたようですが、何か話でもあったのですか?」

「大した話じゃないんです。うちの魔法士がファンネリア様を紹介してくれって頼まれまして」

「そうですか」

「うちの魔法士がスランプで…自信をなくして魔法の研究が止まってるんです」

「それでファンネリア様に?」

「はい。これで何かきっかけが掴めれば御の字なんですが、どうだが…。本人はファンネリア様に会って、ガチガチに緊張してましたけど、フッ」


 笑っちゃいけないね。


 エレナは真剣なんだし。


「緊張するのは当然でしょう。あなただって、初めてシュナイダー様に会った時は緊張したでしょう?」

「緊張というよりも、威圧感がすごかった。それに飲まれた感じですね。最初だけですよ。後は普通」

「普通ですか」


 クローディア様は笑いをこらえてる。


 プライベートを知ったら幻滅するよ。誰だってさ。


 国王陛下のほうが緊張するよ、今でも。こっちは当然か。



「今日着いて、すぐにとんぼ返りですか?泊まっていってはどうですか?」

「いえ、大丈夫です」


 魔法で来たと言ったら驚かれた。


「そんな魔法があるのですね」


 クローディア様知らなかったみたい。


「まだ未完成なんですけどね」

「未完成?…それでファンネリア様に?」

「ええ」


 

「ファンネリア様。そろそろ…」

「わかりました。ここまでのようです」

「はい」


 まだ話していたかったけど、国王付補佐官を独り占めしてはいけない。


「忙しそうですね」

「いつもの事です」

「会合が控えてるとか」

「それもいつもの事です」


 クローディア様は苦笑いを浮かべる。


「シュナイツは参加されるのですか?」

「聞いてませんけど、しないはずです。またここまで護衛するのは…」

「魔法を使えばいいいのでは?」

「まだ未完成なんで何かあったら大変ですし」

「そうですね」

「すみません」


 あたしは下げた。


「気にする必要はありません。事情はわかっています」

「はい」

 

 本来なら参加すべきだろうが、遠いしね。


 転移魔法が完成してから考えても遅くはない。


「クローディア様、お体には気をつけてください」

「ありがとう」

「陛下には、あたしとシュナイツは無事だと。問題ないとお伝えください」

「わかりました。必ずお伝えします。それでは」


 彼女を固く握手し、別れる。


 あたしは敬礼で中庭から見送った。


 

 この後、隊長室へ戻り、交換訓練の相談をする。


「後は、時間はかかるが手紙でいいだろう」

「ですね。お手数おかけします」

「お前からの相談じゃ、断れないよ。一緒に戦っていたんだし」


 先輩か、ありがたい言葉を貰う。


「それじゃこれで」

「ああ。しっかり鍛えておけよ」

「わかってますよ」


 隊長とは、握手ではなく拳を合わせてから別れた。

 

 

 エレナを迎えに行って、シュナイツへご帰還だ。

 



Copyrightc2020-橘 シン


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