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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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25-14


 ハーシュ様に写本の魔法を教えてもらった。


 難しかったが、ハーシュ様のおかげで、なんとか理解する事できた。


「他の魔法と同じで、構造と意味を理解できれば難しいものではないでしょう?」

「はい。ハーシュ様の教え方もお上手なのもあります」

「褒めても何も出ないわ」


 そう言って優しく笑う。


 他にも教えてもらったり、談笑しているうちに時間が過ぎ、ヴァネッサが迎えに来る。




 あたしは、エレナをファンネリア様に預け、一番隊隊長の元へと向かった。


 隊長ともなると自分の部屋がもらえ、メイドや秘書もあてがわれる。

 部屋といっても仕事場も兼ねたもので、だだっ広いものじゃない。

 

 事務作業に支障がない広さ。


「どこだっけ?…」


 場所は変わってないはずだと思うんだけど…。


 ウロウロしたあげく、近くにいたメイドに訊いた。


「隊長室は一つ上の階です」

「そう。ありがとう」


 一つ上ね。


 あったあった。


 ドアプレートに一番隊隊長室と書いてある。


 ドアをノックする。


「はい」


 出てきたはメイド。


「隊長いる?」

「はい。おられます」

「ヴァネッサが来たって言って」

「かしこまりました。少々お待ちを」


 ドアの隙間からはデスクは見えない構造。


 すぐにメイドが顔を出す。 


「どうぞ」

「どうも」


 中へ入って右へ。


「来たか」

「来ましたよ」


 デスクのそばには秘書が一人。男性だった。


 その秘書が椅子を出してくれた。


「ありがとう」


 座るとすぐにメイドが紅茶を出してくれる。



「そっちの用は済んだのか?」

「とりあえずはね。クローディア様には、会えてないけど…まあ、それは当然なんで」

「そうか」


 隊長は秘書から何かを受け取り、デスクに広げる。


「で、お前んとことの交換訓練なんだが…」

「はい。こっちはいつでも」

「こっちは、会合が控えてるんだよ」

「会合か…」


 領主が集まる定期会合。


 シュナイツは参加しないはす。


 護衛任務は勘弁してほしい。



「じゃあ会合前にどうです?」

「いや、ダメだ」


 即否定された。


「各隊、各部署との警備の打ち合わせがあるし、事前確認もある」

「あー、そうでしたね」


 班長以上は打ち合わせに参加するんだよ。


 この辺の予定は、頭からすっぱり消えてる。 


「会合が終わった後だな。それで頼む」

「わかりました」 


 夏ぐらいかな?…。



「お前の方からは何人出す?」

「シュナイツからは…三人」

「三人っと」


 隊長はメモしてるみたい。


「三人の内、二人が若手。お目付け役に、サムを出す」


 サム本人には言ってない。


「サム!懐かしいな」


 隊長は、笑いながら頷く。


「ド新人だったやつだろ?」

「スチュアートとね」

「そうそう!。ちゃんとやってのか?新人訓練終わって配属されたばっかりで、大した訓練も任務もやってないし」

「あたしがキッチリ教えこんでますよ。ガルドとレスターもいるし」

「ガルドとレスターか。懐かし過ぎて涙が出るぜ」

「なんですか」


 そこからは昔話に発展する。


 確かに懐かしい。


 

 あの頃は、かなり気を張ってイた気がする。

 今は、気を張ってないわけじゃないよ。


 一番隊だから下手できないなって。



「お前達がいた頃が、一番気合いが入ってた気がする」

「今は入ってない、みたいな言い方ですよ」

「実際、今の奴らはたるんでる。緊張感って、いつもあったろ?」

「まあ、なんとなく」


 隊長が言いたい事はわかる。


 どこかこう…張り詰めた、ピリピリする何かがあった。


「今は、緊張感が全然ない。帝国に攻められたら、瓦解するぜ。一番隊といえども」

「隊長、言葉に気をつけてください」

  

 秘書が苦言を呈する。


「事務方のお前にはわからんだろうが、そうなんだよ」

「あたしはわかります」


 瓦解はしないと思うが、そうなったとしても驚きはしない。


「わかりませんが、一番隊の隊長が言う事ではないです」

「はいはい…」

「大体、帝国との戦争はもう終わっているんですよ…」

「馬鹿か?お前は…」


 隊長は、大きなため息を吐く。


「終わってないんだよ、戦争は」

「え?でも…」

「停戦してるって、だけなんだよ」


 あたしは、そう秘書に言った。


「終戦条約も不可侵条約も結ばれてない」

「そうだったんですか…すみません。今知りました…」


 意外に知らないやつは多い。


「今日明日、帝国が攻めてきても不思議じゃない」

「わかってないやつが多いんだよな。竜騎士でも」


 今の脅威は帝国よりも賊という認識になっている。

 実際そうなんだけど…。


 帝国の事も、頭の片隅に入れておかないといけない。

 

 

「士気については、俺に責任がある」

「しっかりしてくださいよ」

「わかってるって」


 基本真面目な人だから大丈夫でしょ。



「それで…こっちからは…」


 と、言いかけた時、メイドがバタバタと急ぎ足でやって来る。


「どうした?」

「クローディア・ファレル様がお見えです」

「ここに?」

「はい」

「すぐにお通ししろ」

「はい!ただいま!」


 クローディ様が直接来た?。


「なんだよ…急に」

「多分あたしだと思う。研究所か隊長室にいるって言伝頼んだから」

「別の所にしろよ…」

「ごめん…」


 あたし達は立って、クローディア様をお迎えする。


 

 クローディア様が一人で入ってきた。


 あたしと隊長は姿勢を正し、敬礼する。秘書も姿勢を正す。



「お仕事中、申し訳ありません。隊長」

「いえいえ」

「ヴァネッサが来てると連絡を受けたので…彼女を少しお借りしてもよろしいですか?」

 

 いつも通りのクローディア様だ。


 この人は上からものを言う人ではない。

 こっちに非がない場合はね。


「どうぞどうぞ。返却期限はありませんので、むしろ返さなくもいいです」

「は?」

 

 隊長の秘書が笑いをこらえてる。


「すぐにお返します。ヴァネッサ」

「はい」


 クローディア様に呼ばれ、デスクを離れた。


「まだ話し合い終わってないからね」

「わかってるって。早く行け、待たせるな」


 まあ、後は手紙でもできるけど。



「お久しぶりです」

「ええ」


 軽く握手をして廊下へ。


 廊下にはクローディア様の秘書が数人待っていた。


 彼らを従えて、クローディア様についていく。


「お仕事中だったのでは?」

「あなたは別です…と言いたいですが、少し予定を調整しました」

「すみません、わざわざ」

「事前に連絡をしてくだされば…」

「はい…」


 クローディア様はついでだったからなぁ…。本人には言えない。


「まずは襲撃の件ですが…なんと言ったらよいか…」

「あたしは、生きてるので」

「亡くなられた兵士はお悔やみを」

「ありがとうございます」


 

 廊下を進んでいく。


「陛下もご心配されていました」

「そうですか」


 陛下まで…。


「なんかすみません…」

「いいんですよ」


 いいわけがない。


 陛下もクローディア様も忙しい身だ。心労を掛けてはいけない。



「六番隊を動かした件については、あたしに責任あります」

「ええ。でも、緊急…いえ、非常事態でしたから、不問とします。六番隊についても、不問としています」

「はい」


 

 クローディア様について行くが、どこへ行くのだろう?



「報告書は読みましたが…」

「書きなぐりで申し訳ありません」

「怒りと焦燥が滲み出ていましたよ」

「あはは…」


 そんなつもりはなかったが、自然と筆に乗るみたいだね。


「北部の治安を軽視しずぎていました。反省しています」

「クローディア様が反省する必要はないかと…」

「いいえ。北部の治安が悪い事報告は前々からありました。シュナイダー様が、シュナイツ領をお開きになってから減ったので、それで良しと決め込んでしまった。それが仇となって…」


 シュナイツがある事で治安よくなったのは、事実だろう。


 今回はシュナイツがピンポイントで狙われた。



 中庭が見え始めた。


 こういう小さな庭が場内と宮殿内にいくつもある。


 クローディア様が庭へ出たので、あたしも出る。

 彼女は、秘書達には中に留まるよう指示した。


 二人だけで、中庭へ。


  


Copyrightc2020-橘 シン


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