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ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


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25-7


 騎士長の所へ向かう途中。


「城内を自由に歩ける許可、もらえません?」

「交換訓練の話なら、歩き回る必要はなくないか?」

「他も会いたい人がいるですよ」

「誰だ?」

「ファンネリア様と…できれば、クローディア様も」

「普通に会おうとするなよ」


 隊長は呆れる。


「色々と事情あるの」

「わかったよ…それも騎士長に頼め。お前自身でな」

「はいはい。で、今の騎士長って誰?」

「今の騎士長はな…」

「会ってからのお楽しみということで」


 ロキが割って入る。


「今言ったっていいだろ?」

「いやいや。今の騎士長とヴァネッサ隊長は…昔」

「昔…」

「忘れちゃいましたか?」


 ロキが隊長に耳打ちした。


「誰なの?」

「あー、あったな、そんな事」

「ね?」

「だから、誰なの?」

「確かに、会ってからのお楽しみだわ」


 そう言って、隊長とロキが意味深な笑顔を見せる。



 一体、誰なの。

 

 あたしは面識あるみたいな話しぶりだし。



 結局、教えてくれなくて騎士長室に到着。



 騎士長付事務官が応対する。


「騎士長はおられるますか?」

「はい」

「お時間は取らせまんので、面会願いたい」

「わかりました。少々、お待ちください」


 事務官は、隊長と話している間、あたしをチラチラ見てた。


「さて…感動のご対面となるか」

「血の雨が振るか!」

「あんたたちね。あたしで遊ぶんじゃない」


 事務官が帰ってきた。


「どうぞ。お入りください」


 許可が出て、中へとおされる。



「失礼します!」


 三人並んで、敬礼する。


「は?」

「フヒヒ…」

「あれは、二番隊の隊長でしょ?」


 向こうもあたしを見て、口を開けたまま驚いてる。



 深き森でウィルに話した賊の強盗、放火事件。

 あの時、切り込み役を巡って言い争った。

 

 あれは、あれで終わった話で、その後は特に何もない…遺恨はないはず。


 

 騎士長は、若干わざとらしく咳払いをし、手招きする。


 無駄とも言える騎士長室を歩き机の前へ。


 近づく間、騎士長はずっとあたしを見ていた。



「ロキ、あんた先行きなよ」

「どっちでもいいでしょ」

「あたしは、正規の竜騎士じゃないんだから」

「知らない仲じゃないし、気にしすぎでは?」

「気にしなさすぎなんだよ、あんた」

「いい加減にしろ!おれの評価に関わる」

「はい」



 机の前で、もう一度敬礼。


「お忙しいところ申し訳ありません」

「別に忙しくないから、構わん」

「はい」

「で、何の用だ?珍しいやつが一人混じってるが」


 そう言って、椅子も背もたれに体重を預けた。


「ヴァネッサ」

 

 隊長に呼ばれ、前に出る。


「お久しぶりです。ヴァネッサ・シェフィールドです」

「ああ、久しぶりだな。何年ぶりだ…」

「さあ…」

 

 隊長に注意されたが、実際分かんない。


「ふっ…」


 騎士長は小さく笑るだけ。


「まあいい。で、用件は?」

「はい」

 

 あたしは交換訓練の依頼をする。


「…というわけなんですが」

「うむ、なるほど…」


 と言って、腕を組み考え始めた。


 あたしたちは待つしかない。


 詳細を話している時、あまりいい反応じゃなかった。


 だめか、こりゃ…。



「どうかお願いします」

 

 あたしは一歩下がり、頭を下げる。


「ヴァネッサ隊長…」

「お前…」


 頭を下げるだけで、交換訓練ができるなら安いもんだ。


「頭を上げろ」

「…」


 あたしは上げなかった。


「まだ何も言ってないぞ。とりあえず頭を上げろ。話ができないだろう」


 そう言われて、あたしは頭を上げた。


「いいんじゃないか」

「え?いいんですか?」


 あっさり了承される。


「断る理由は、今の所ない」

「ありがとうございます」

「スケジュールはこっちに合わせてもらいたい。いいか?」

「はい。わかりました。シュナイツはいつでもいいです」

「わかった。後は一番隊と話しあえ。いいな」 

「はい」


 隊長が敬礼する。


「最終的に精査して許可を出す」

「予算とかは?…」

「当然一番隊から出す」

「ですよね~」

「できるだけ節約してくれ」

「はい…」


 王国もお金がないのかね。


「用件が終わったんなら…」

「もう一つだけ」

「なんだ?」

「城内を自由に歩ける許可をください」

「何故だ?これで終わりだろ?」

「いえ。会いたい人がいまして…友達とか…」


 ロマリーには迷惑なっちゃうと思うけど、ごめん!。

 

 さすがに、ファンネリア様やクローディア様の名は出しづらい。


「余裕だな。お遊び気分とは」

「そういうわけではありません。会いたいのは親友ですし」

「…わかったよ」


 そう言って、紙を取り出し何かを書き始める。


 

「シュナイツ襲撃の件だが…」

「あー、はい」

「大変だったな。報告書を読ませてもらった」


 書き終わった紙を受け取った。


「申し訳ありません。六番隊に救援をお願いしまして…」

「おの状況なら、仕方がない。多分、同じ事をしたんじゃないかな。な?」

「自分もしたと思います」


 隊長が頷く。


「え?隊長も報告書を?」

「読んだよ。汚ったねえ書き殴りのやつをな」

「嘘でしょ…」

「おれも読んでますよ」


 竜騎士ほぼ全員が読んでるらしい。


「陛下付補佐官に出すもんじゃないぞ」

「あはは…」


 そうなんだけど、クローディア様とは知らない仲じゃないから…いいかなって。



「リカシィより北に竜騎士を常駐させる件。私も賛成したんだが…」


 騎士長は賛成だったのか、ちょっと驚いた。


「反対意見のほうが多くてな」

「常駐する竜騎士は各隊から持ち回りでってなったら、ああだこうだと…」

「要するに面倒だと」


 怒りが湧いたが、ここは我慢した。


 怒りをぶつける先は、騎士長ではない。



「何かできる事があれば、相談に乗る。連絡をくれ」

「はい。ありがとうございます」


 騎士長にできる事ね…。


 そう言ってくれるだけで、多少は気分的に楽になる。



「さあ、終わったんなら出ていってくれ」


 追い払うのように、手を降る。


「そんな邪険しなくても…」

「お前の顔見て、昔の嫌な気分を思い出した」

「もしかして、あの件、まだ根に持ってます?」

「あの件?」

「切り込み役ですよ」

「あー…あれは別にもうなんとも」


 あれじゃないのか。


「昔の自分が、くだらない事で威勢を張って、対抗心むき出しで…って、いいからもう行け。行ってくれ」

 

 騎士長は机を叩く。


「再会を祝して、紅茶で乾杯します?」

「ふざけるな…さっさと行け!拘束して牢屋に入れるぞ!」 

「了解しました」


 敬礼し、騎士長室を出る。いや、追い出された。



「許可証って、どこ行けばいいんだっけ?」

「警備部じゃなかったか?」

「多分、そうですよ」


 場所は覚えてないな…。


「ロキ、あんた分かる?」

「はい」

「じゃあ、案内して。隊長、後で隊長室行きます」

「後って、話し合いするじゃないのか?」

「急いでるわけじゃないんで、許可は出たからとりあえずは…」

「あーこっちのスケジュールに合わせるって話だしな」

「すみません。交換訓練以外に、会わなきゃいけない人がいるんで、そっち先に」

「わかった。ロキ、お前は案内が終わったらすぐ帰ってこいよ」

「わかってます」


 隊長とはここで別れて、警備部へ。



「あんたはまだ、班長なんだね」

「ええ、まあ…」

 

 本人は、もう一つ上へ上がりたい気持ちがある。が、なかなかうまくいってないみたい。


「一番隊で小隊長は厳しいのかなって」

「それはあるかもね」


 一番隊には実力者が揃って傾向にある。

 その中で上に上がるには、それなりの実力が必要だ。



「二番が三番隊に転属したら?」

「うーん…」

   

 ロキから返事は返ってこない。

 

 やっぱり一番隊がいいのかな。


「一番隊にこだわってたら、今のままかもしれないよ」

「こだわってるわけじゃないんですけどね…」


 ロキにだってプライドはある。

 

 あたしはこれ以上話すのやめて、話題を変えて話しつつ警備課へと向かった。



 あっちこっち曲がって警備課へ到着。


「あそこですね」


 警備部と書かれた立て札とドアプレートが見えた。


 警備部は城内と宮殿の警備を担ってる部署。


 いつもの詰め所があり、兵士が常駐してる。

 

 ここは、本部ってことになるのかな?。


 城門のいた衛兵も警備部の所属だったはず。


 

 中に入る。

 

 忙しそうに、事務官達が動き回っていた。


「何か御用でしょうか?」

「ああ。これを」


 入口付近のカウンター越しに騎士長が書いてくれた紙を渡す。


「来客用の許可札ですね」

 

 一旦離れる事務官。


「ロキ、ありがと。もういいよ」

「はい。それじゃあ帰ります」

「ああ。武運を祈ってるよ」

「どうもです」


 ロキは、あたしと拳を合わせ去っていく。



「これに所属と氏名と」


 渡れた書類に書き込み、事務官に返す。


「シュナイツ領、竜騎士隊、ヴァネッサ・シェフィールド様ですね」

「はい」


 事務官がまた引っ込む。


 奥にいる誰かに渡し、受け取った者がさらに誰か渡しに行く。


「少々お待ちください」

「はい」


 ややしばらく待つ。


「お待たせいたしました」


 事務官から許可札をもらう。


 手のひらサイズの木札。

 

 何か模様書かれているが、意味は分からない。

 それを首から下げる。


「これで宮殿に入ることはできません。城内のみです。」

  

 でしょうね。


「今日限定のものですので、必ず返却してください」

「はい」

 

 他にもいくつか注意事項を聞いてから、廊下へ出た。



 さてと、まずは誰に会おうかな…。


「ヴァネッサ!?」

「え?」




Copyrightc2020-橘 シン


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