25-6
このエピソードはエレナがメインでしょ?。
そんなに詳しく話さないからね。
エレナと別れたあたしは、西の城門へ向かった。
あいかわず、王都は人が多い。
比較的空いてる西側もだ。
「また増えたんじゃないの…」
城門には当然衛兵がいて、鋭い視線を周囲に向けてる。
さてと、事前に連絡してないんだけど、入れてくれるだろうかね。
あ、先にマリーダの所に行こうかな…いや、遊びで来たじゃないんだ。
あたしは衛兵と近づく。
「ちょっといいかい?」
「なんだぁ?」
衛兵はあたしを訝しむが、緊張感にかけた態度だ。
まず誰に会おうか考えた。
交換訓練したいから、竜騎士隊と話をしたいんだけど、統括してるのは竜騎士長。
今の竜騎士長は、誰だか分からない。
なら、一番隊の隊長かな。それか元部下のロキ。
ブリッツ教官いたらね…楽だった。
竜騎士隊は当然として、ファンネリア様にも話が通る。
ロマリーは…今の部署はわかんないし、私用で呼び出すわけにはいかない。
迷惑をかけたくないし。
一気にクローディア様に会うか?。
襲撃の件について直接話したい気もする。報告書は出してるけどさ。
そもそも、おいそれと会える方じゃない。
国王付補佐官なんだから。
「参ったね…」
とりあえず、ロキでいいっか。
宮殿内に入っちゃえば、どうにでもできる。
「申し訳ないんだけど、竜騎士隊のロキってやつを呼び出しもらえる?」
「呼び出す?」
「ああ。知り合いだから」
「何者だ、貴様。素性の知れんやつの話を聞いてる暇はない」
知り合いだってえの。
そういうふざけた態度を取りたくなる理由はわかるけど。
「とりあえず、ロキがいるかどうかだけ確認して」
「…」
衛兵は面倒くさそうにため息を吐く。
「所属と名前を言え」
「シュナイツ領、竜騎士隊、ヴァネッサ・シェフィールド」
「竜騎士?もっとマシな嘘をつけよ。あはは!」
そう言って、衛兵が笑う。
こいつ…あたしを知らないだろうけど、笑う事はないでしょ。
胸倉を掴もうと一歩出た時だった。
「待て」
違う衛兵が近づいてくる。
「シュナイツの竜騎士隊と言ったか?」
「言ったよ」
「竜騎士ヴァネッサ殿か?」
「先輩知ってるんすか?」
「お前…」
この衛兵は私の事知ってるみたいだね。
「失礼しました」
姿勢を正し、頭を下げる。
「いや、いいから。ロキに連絡してもらえる?。時間がないわけじゃないけど、予定が詰まってんの」
「わかりました」
衛兵は、城門の奥にある見張り塔にサインを出す。
「あの先輩?マジで竜騎士なんですか?この女」
「黙ってろ!」
ふざけた衛兵を押して、あたしから離す。
本人はわけがわからず、困ってる。
「すみません。新入りが」
「いいよ。あんたはあたしを知ってるんだね?」
「竜騎士を目指していたんで。色々調べて知っています」
「そう。もう目指してないの?」
先輩衛兵は、苦笑いを浮かべる。
竜騎士隊の訓練を見て怖気付いたと、話す。
「自分に無理そうで…それに年齢的にも」
「遅咲きの竜騎士もいるよ」
「ええ。でも、今くらいのほうが自分にはあってます」
「そう」
自分の道は、自分で決めるもの。
あたしは特に何も言わなかった。
「今日は…」
「ん?」
「竜は一緒ではないのですか?」
「今日はね。色々事情があって」
転移魔法がどうなるかわかんないっていうから、竜は連れて来なかった。
竜を連れてくれば、もっとスムーズに行けただろうね。
「最近の王都はどうなの?」
「特になにも。いつも通り平和ですよ」
「平和過ぎて暇なんじゃない?」
「ええ、まあ…気を抜かないよう務めるつもりです」
「あんあのが、増えたら困るよ」
あたしは、顎でさっきのふざけた衛兵を指す
「あはは…。注意しておきます…」
意外と時間がかかる。
巡回中で今はいないのか、非番で出かけるのか。
「来たようです」
「やっとか…」
通用口からロキが顔を出す。
笑顔で手を振ってる。
「世話になったね」
「いえ。お気をつけて」
衛兵は、敬礼する。
「ありがと」
あたしも敬礼を返し、ロキの方へ向かう。
の、前にふざけたふざけた新人衛兵の元へ。
みぞおちに軽く拳の打ち込んでから、胸倉を掴み耳元へ顔を寄せる。
「うっ!痛って…な、何か…」
「王国の兵士なら、もう少し礼儀を知ったほうがいいよ」
「はい…」
「緊張感ないし。あんたなら、剣を抜かずに拳一つで殺れる」
「…」
「あたしの部下なら…一発、いや二発…ぶち込んでるよ?」
新人衛兵が震え出す。
「隊長、もう良いでしょう。何があったが知りませんけど」
ロキがあたしの肩を軽く叩く。
あたしは体を離した。
「世の中甘く見るんじゃないよ」
「はい!」
「竜を連れて来なかったあたしにも非があるから、もうこれ以上は言わない。正規の竜騎士でもないからね。相手の雰囲気を察するできないと生きていけないよ」
そう言ってロキとともにその場を離れる。
城門のいた衛兵が全員敬礼してた。
「お久しぶりです」
「だね。呼び出して大丈夫だった?」
「ええ。休憩中なんで」
「そう」
訓練中だったか。
「ヴァネッサ隊長が来るってことは、のっぴきならない状況だったり?」
「いや、全然」
「そうなんですか。じゃあ何なんです?」
「あのさ。悪いんだけど、騎士長に取り次いでくれない?」
「騎士長に?」
ロキは不思議そうな表情。
「いいですけど…おれから直接は無理ですよ。まずは隊長を通さないと」
「だろうね」
「理由、聞いていいですか?」
「交換訓練をしたいんだよ」
「交換訓練?」
「シュナイツの竜騎士とこっちの竜騎士で」
「ああ、なるほど」
とりあえず、通用口を通り城内へと入る。
「さっきは、何があったんです?」
通用口をくぐりながら、ロキが聞いてきた。
「何でもないよ」
「そうですか」
橋を通り堀を渡る。
「次の門で待っててもえらます?隊長呼んでくるんで」
「ああ、いいよ」
ロキは足早に先を行く。
あたしは言われたとおり、門前で待つ。
待ってる間に、衛兵から握手を求められる。
こんなの初めてだった。
「おかしいやつだね」
「有名ですよ」
「そんなわけないでしょ」
ふざけた噂ばかりで辟易してたよ。ここにいた時は。
「よお!」
隊長がロキともに現れる、
「お久しぶりです」
一応、敬礼。
「いらないぜ。敬礼なんて」
「元上官に敬礼しない失礼なやつ、なんて言われなくないんで」
「ははは!言わないから」
こういうのが尾ひれがついて噂が大きくなるんだよね。
「ロキから聞いたが、交換訓練をしたいんだって?」
「はい。是非」
「できるとは思うが、先に手紙をくれよ」
「昨日思いついたんたんで。手紙を送るのが先なんでしょうけど、時間がかかるし」
「それで、直接か…ん?昨日思いついて、今日ここにいるって…」
隊長は首をひねる。
「実はシュナイツから魔法できたんです」
「は?お前、何言ってんだ?」
「だから、魔法で来たんですよ。うちの魔法士が作った魔法で」
「マジか…」
「マジです」
あたしは指をパチリと鳴らす。
「一瞬で」
「信じられないが…まあいいや。魔法に関しちゃ、門外漢だからな。そういう事にしとく」
あたし自身も信じられないんだけどね。現実感がなさすぎて。
「ここじゃなんだ。中に入れ。歩きながら話そう」
「はい」
武器預かり所で剣を預け城内へ。
「交換訓練だが、おれの一存じゃ無理だな」
「でしょうね」
「上に話すよ」
「はい。できれば、一番隊としたいんですが…」
シュナイツから行かせたいのは、ライノとミレイ。
二人には経験を積んでほしい。
一番隊じゃなくてもいいと思うけど、第一線で戦っている竜騎士を見て、なにかを感じ取ってもらいたい。
「それはどうかな~…」
隊長の反応は良くない。
「交換訓練ってことは、こっちもシュナイツに出すんだろ?」
「じゃないと交換訓練の意味がないっすよ」
ロキが当然のツッコミを入れる。
「遠征任務は人気がないからな」
「六番隊以下とやってるでしょう?」
「やってるよ」
「なら…」
「シュナイツって、ど田舎なんだろ?」
「それは言わないでください」
ど田舎だけさ。否定しようもない。
「遠い分それなり予算を出さないといけない」
「一番隊は潤沢でしょうよ」
「潤沢だからってジャンジャン使っていいわけないだろ。監査が入るんだぜ?」
「監査?」
「本当に必要だったのか、意味があったのか、成果は…」
なんか聞いたことあるかも。
「隊長って大変なんですねぇ」
「ロキ。お前、他人事のように言うなよ。小隊長になったら、予算の管理もする事になるんだぞ」
「えー…めんどくさ~」
よかった。班長どまりで。
「騎士長に全部任せよう」
「うわぁ出た。丸投げだ」
「こっちは命令通りやればいい」
一番楽な方法を取るのが、今の隊長なんだよね。昔と全然変わらない。
直接、騎士長の所へ向かう事になった。
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