表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイバーズ・メモリー(3)   作者: 橘 シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/77

24-10


 昨日に引き続き賑やかな夕食。


 うるさいくらいの盛り上がりが、徐々に下がっていく。


 あたしは寝ると宣言して、立ち上がった。


「え?もう?」

「もうって…マリーダ、あんたは話しすぎだよ」

「そうかしら?」


 ウィルが笑いを堪えてる。


「仕方ないわね」


 マリーダも立ち上がった。


 それをきっかけに全員がそれぞれ部屋へと向かう。


 男連中は、昨日と同じくウィルの部屋に泊まるらしい。


「あんたら、もう少し静かにしてくれる?」

「え?そんなにうるさくしてないよな?」

 

 ジョエルがウィル達に聞いてる。


「壁薄いの。下手したら丸聞こえだよ」

「マジで?下ネタ話せないじゃん」


 あたしは、ジョエルのケツを蹴った。


「痛て!ええ…下ネタ禁止なのかよ、シュナイツは」

「あんたのせいで、ウィルの品性が下がる」

「ウィルだって、そこそこ話すぜ」


 そばで聞いてたリアンが表情を変えてウィルの腕を叩く。


「やめて!」

「ぼくはそんなに話さないって…ジョエルが好きなんだよ。こっちは聞き役だよ」

「やっぱりあんたでしょ。ウィルの友人だからって、手加減しないよ」

「わっ、わかったよ!しません!しませんから」


 あたしは睨みを効かせた後、部屋へマリーダとともに入った。



「もう、そこまでする?」


 マリーダは呆れてる様子。


「あたしは竜騎士になるずっと前、ゲスい連中と関わって、酒の席じゃ下ネタが普通だった」

「ジョエルは、そういう人じゃないわ」

「わかってるよ。あの頃の嫌な思い出がよみがえるから…」

 

 マリーダがそれ以上は聞かず、寝床の準備を始める。


 あたしは体を拭き、さっさとベッドに寝そべった。



「毛布貸すよ?」

「大丈夫よ、これで」

「背中、痛くない?」

「この程度の事で音を上げてたら、商人できないわ」

「ふっ、強いね。あんたは」

「強いはあなたの方よ」


 マリーダは横になり、大きく息を吐く。


「強くなんかない」

「竜騎士なのに?」

「竜騎士としては、普通だから。あたしは」

「そうなの?でも、女性で竜騎士はあなただけじゃない?」

「知らないだけさ」


 女の竜騎士が、あたし一人だったら寂しい気がするね。



「なんで竜騎士になったの?憧れ?」

「最初は竜騎士になるつもりはなかった。竜騎士になる前は、一兵卒だったし、その前は…」


 あたしは言葉を切った。


「前は?」

「前は…単なる不良」

「へえ」

「あたしは一兵卒でよかったんだけど、シュナイダー様に乗せられて…」

「シュナイダー様と、どこでどう繋がるのよ」


 マリーダは笑いながら起き上がる。

 そして、ベットに寄りかかった。


「話し始めたら長いし、面白くない」

「時間はあるし、面白いかどうかはわたしが、決める」

「やめてくれる…」


 あたしは寝返りを打って、彼女に背を向ける。

 

「いいでしょ?」


 そう言いながら、あたしに覆いかぶさってくる。


「やだって…」


 いい思い出ばかりじゃない。むしろ、悪い思い出のほうが多いくらいだ。


「そうですか…」


 マリーダはあっさりと引き下がる。


「あたし以外の話なら、いいよ」

「それなら…寝る!」

「あんたね…」

「ふふっ」


 彼女は小さく笑う。


「ねえ」

「なんだい」

「あなた、ウィルとリアンの事、気づいてる?」

「何が?」

「いや…」

 

 はっきりと、言わないマリーダ。

 

 まあ、なんとなくわかるけど。


「いいんじゃない」

「それって二人が…その…」

「二人の問題でしょ?本人達が良ければ、それでいいと思うよ」


 襲撃事件以降、ウィルとリアンの雰囲気が変わった。


 男と女だし、そうなる事は不思議じゃない。



「リアンがね…」

「リアンがどうかした?」

「補佐官だから、ウィルとは一緒になれないって」

「バカだねぇ。補佐官やめればいいだけしょ」

「よね?なんか他にもあるみたいよ」

「なんかって?」

「さあ」


 マリーダは寝直す。


「今は、したいようにさせとく」

「干渉しないんだ」

「さっきも言ったけど、二人の問題だから。二人で解決すべき」

「そうね」


 あたしは、ウィルとリアンが男女の仲になる事に、反対しない。

 どっちかっていうと賛成の立場だ

 

 リアンには、誰かがそばにいないといけない。


 それはあたしではダメ。


 あたしは竜騎士で、いつどうなるかわからない。

 いつ死んでもおかしないんだ。


 あたしよりも、ウィルのほうがいい。


 駆け落ちするとまで言った。その覚悟を信じたい。



「マリーダ」

「なに?」

「あんたには、いい人、いないの?」

「いないわ」

「あんたのほうが適齢期でしょ?」

「なんだけどねぇ…」


 彼女は、特に切羽詰まってる口調じゃねい


「仕事楽しいから」

「忙しいから、じゃなくて?」

「それもあるけど」

「あんたもウィルと同じく仕事人間だね」

「別に望んでないわけじゃないのよ?ほら、果報は寝て待てなんていうし」

「何もしないで、ただ待ってもダメなんだよ」

「流れに身を任せる!」


 だめだこりゃ。


「ヴァネッサはいいの?」

「あたしなんかと付き合いたい奴なんでいないよ」

「わかんないわよ。一応いたでしょ?」

「誰?…あー」

 

 六人の内の一人ね。


「わたしより可能性あると思う」

「んなわけないでしょ…女の竜騎士なんだよ」

「それよ!竜騎士同士なら、いける!」

「はいはい」

 

 マリーダは、一人で盛り上がってる。


 あたしと付き合いたい奴がいたら、とんだ酔狂だね

 

 

 マリーダとは下らない話をかなり遅い時間までしていたと思う。


 同性とこんな話したのは久しぶりかも。


 ロマリーを思い出した。


 よく深夜まで隠れて話していたっけ。


 久しぶりに手紙書こうかな。

   



 翌日の早朝。


 マリ姉達が早めにシュナイツを出発するので、いつもより早く起床する。


「まだ暗いじぇねえかよ…」


 ジョエルが起き上がりながら、ボヤく。


「早く出発して、ポロッサで準備しないと。ポロッサ以降はリカシィまで小さな村ばかりだよ」

「わかってるけどさ…」


 彼は、そう言いながら立ち上がり、身支度を始める。

 ティオとキースも同様だ。



 多目的室にはすでに、朝食と支払金が用意してある。


 グレムには、マリ姉達に昼食も頼んでおいた。



 ミャン以外は起床し多目的室に集まっている。


 僕達は朝食には早いので、紅茶だけ。ヴァネッサ以外は。

 なぜかというと…。


「あたし、護衛に出るから」

「ヴァネッサ自ら?」

「え?ダメ?」

「別にいいけど…珍しいなって」

「たまにはね」


 ヴァネッサの他はライノとミレイ、スチュアートだ。


「竜騎士の護衛付きかよ。いいのか?」

「本人がやるって言ってるから」

「逆に緊張するぜ」


 貴重な体験である事には間違いない。



「ヴァネッサがいるなら安心ね」

「ポロッサまでだよ」

「リカシィまでじゃないの?」

「してあげたいんだけどさ…」


 僕自身も、リカシィまで護衛してほしいけど、余裕のある状況ではない。


「まあ、大丈夫でしょう。来る時は護衛なしだったんだし」

「ジョエルの言う通りだ。一人じゃねえしな」

「護衛なしが普通だからね」


 ジョエル達は特に気にしていないようだ。



「ユウジとタイガがいれば、任せるだけどねぇ…」


 二人はまだ帰って来ていない。


「あいつら、どっかで野垂れ死にしてないよな…」


 ジョエルは苦笑いを浮かべながら、そう話す。


「二人は吸血族だから、早々ないと思うよ」

「わかんないぜ、ははは!」



「だーれーが、野垂れ死にするって」

 

 多目的室の出入り口から声がして、皆が振り返った。

 

 タイガは怒りの表情で、ユウジは苦笑いを浮かべている。


「よ、よお。元気そうだな」

「元気そうだな、じゃねえよ。何なんだよ、さっきのは!いつまでもガキ扱いするなっての」 


 そう言って、ふんと鼻息を漏らすタイガ。


「悪かったよ」


 ジョエルはタイガを宥めている。



「ただいま戻りました」

「うん。ご苦労さん」


 ユウジは、彼らしく丁寧に挨拶する。



「二人とも、久しぶりね」

「はい。お久しぶりです。マリーダさん」

「久しぶりっす」

「うまくいってる?商売の方は」

「なんとかやってます」


 二人は商売を主にしてるわけではない。


 深き森の管理を任され、そのついでに必要な薬草を届ける。 

 それと元猫族の住処だったところに住み着いた者達の見守りをしているのが現状だ。


 あと、シュナイツは情報が届かないため、情報収集も兼ねている。



「あんた達、なにか用事ある?」

「ないぜ。な?」

「うん。今のところは」

「じゃあ、帰ってきたばかりで申し訳ないんだけど、マリーダ達の護衛してくれる?」

「いいですよ」


 帰ってきた時は、ジルとアリスによる特訓があるが、護衛のあとにする事になった


 ユウジとタイガは、初対面のキースとティオと挨拶。


「よろしく頼むぜ」

「吸血族だって?色々話を聞きたいな」


 

 朝食はすぐに終わり、あっという間にマリ姉達の出発となる。

   


Copyright©2020-橘 シン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ