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アラウンド・フォール


 ≪龍の都≫西部の大道路をトリウィアは駆け抜けていた。

 元々はこの都の唯一の外部との出入り口に通じる道ではあるが、そもそも訪れる人間なんてめったにいないのでただの広い道であるだけと言って良い。

 龍種が龍形態で通れるために横幅が広く、魔法によって敷かれた石畳がしっかりしており、田畑の真ん中にそれだけの道があるのはどこか不自然ながらそれを気にする龍人もいない。

 

『――≪|黄金童話・戦乙女騎行《Nibelungen・Der Ritt Walküren》≫』


 発動しているのは最も早く、最も長く移動するための魔法だ。

 身体能力強化魔法『黄金童話』。

 そこから持久力と移動力に特化した長距離移動身体強化『戦乙女』。

 もとより多種多様な魔法を用いるトリウィアは自身の使用魔法を細分化しており、その一つでもある。

 この場合、魔法による効果は単なる肉体強化だけではない。

 一歩ごとのストロークを伸ばし、『落下』系統を中心に術式を組むことにより前に落ちて加速する。

 足を速く動かして走るというより、歩速自体は緩めながら低く速く跳ぶのだ。

 コツはやはりジャケットの裾を美しくはためかせること。 

 横回転だろうと直進だろうとそれは変わらない。


「ちっ……!」

 

 だが、その裾を焼き焦がすものがある。

 

「中々の俊足、だが私の車輪も劣らぬとも」


 一歩につき概ね四度迫る車輪。

 そして≪神性変生(メタモルフォーゼス)≫によりその身姿を変えたアポロンだ。

 真紅の全身重鎧。獅子を模した兜からは鬣の様に炎が噴出している。

 見るからに重厚な鎧ではあるが、獅子の速度は速くトリウィアにも劣らない。

 なぜならば、


「直立滑りとは……!」


 彼は腕を組んだ直立状態で足を動かさずに高速で移動している。

 アポロン自身は微動だにしていないのだ。

 移動リソースは足首に。

 脚甲の足首、その外側。最早車輪の形をした炎が高速で回転し移動力を生んでいる。

 重そうな鎧姿が腕を組んで足を揃えて直立し、両脇の輪炎に乗っているのはなんとも奇妙な光景であるが安定しているし速度も出ているのでちょっとおもしろい。

 普通の車輪と魔力式動力で移動方法にならないだろうか。

 腕組みはやはりシュールさが勝るのでちょっとした舵的な持ち手でも付けたり。

 

「名付けて旋駆影……! 128個目の技術特許、頂きます!」


「多い気がするがお前としては少ない気もするがどうであろうな!」


 魔法術式特許は1000超えたあたりで数えるのがめんどくさくなって実家管理にしているので仕方ない。技術特許の大半は技術的には革新的だが実用性はいまいちで一部の物好きにしか認知されないものでもある。

 ちなみに彼女の最高傑作は両手に握る変形銃であり特許を取得しているが、使いこなせるのがトリウィアしかいないので特に意味もなかった。


「あ、ちなみにヘファイストスさんがくれたタイプライターはしっかり私が特許取って予約も入ってるので将来派手な結婚式する時の派手な費用の足しにさせてもらいます。最低でも3国分の様式しないとですし、えぇ」


「貴様ァー!」


 怒りと共に燃える輪炎が迫った。

 動きとしてはそれまでとは変わらない。

 ただ速度と大きさが違う。

 車輪が燃えているのと炎が車輪の形をしているというのはトリウィアからすれば一長一短に感じるが、ヘファイストスと同じく特定の目的の為に特化しているのだろう。

 先ほどよりも速度も熱量も圧倒的に高い。

 疾走中、何度か撃墜したり弾き飛ばしたりしたがその度に勢いは増してきている。

 故に彼女は相手をしなかった。

 跳躍の途中体を回すことで回避を常とする。

 ジャケット故の行動の最適化は既に完了した。

 短く広がる裾で風を受け止め、空気抵抗による簡易ブレーキと姿勢制御を行う。白衣だと広がりすぎるので、ジャケットの長さがちょうどいい。

 そして、


「やっと着きましたか」


 ≪龍の都≫を取り囲む外壁へと辿りついた。

 一歩、強く大地を踏みしめて大跳躍。

 外壁に着地し、


『≪|黄金童話・英雄凱歌《Nibelungen・Siegfried》≫!』


 そのまま駆け上がった。 






「むっ……!」


 アポロンはトリウィアの動きが変わったのを見た。

 それまでのゆっくりと足を動かし、長いストロークで跳ねることで前に進む動きではない。

 速く重く、連続で外壁を蹴りつけジグザクに駆け上がる動きだ。

 おそらく身体強化における魔法の配分を変えたのだろう。

 先ほどのものが速力や移動力を重視したものなら、これは膂力や肉体機動の精度を高めたものだ。

 垂直に壁を駆けあがっているのだその選択も理解できる。

 ノータイムの魔法移行。

 賞賛されてしかるべき技巧。

 単なる魔法の技術だけではなく体術も達人だ。

 このアースにおいて最強というのは伊達ではない。


「だが、私も捨てたものではないぞ」


 アポロンはそのまま岩壁に直進し、腕組直立状態でそのまま駆け上がり始めた。


「なんですかそのぬるっとしたちょっと面白い移動は」


「愚問、我が車輪はあらゆる場所を踏破する!」


 車輪による移動の際は自動的に体の向きに補正が掛かる。

 垂直の壁だろうが天井だろうが関係ない。

 故にそのまま行く。

 

「そろそろ追いかけっこも終わりでいいだろう……!」


 この最西端の外壁はもっとも背が低く、10メートル程度しかない。

 今のトリウィアとアポロンならば文字通り一瞬だ。

 彼女の狙いは自分とアルテミスを遠ざけて合流をさせないようにするためだろう。

 これまでは勝負に乗ったが、それも終わりだ。

 ここが勝負の決め時だと判断する。


「回れ、廻れ、舞われ……!」


 両腕を広げた。

 その手甲に炎が渦巻き、やはり車輪の形を得る。

 だが、ただの車輪ではなかった。

 車輪から回転を邪魔しない持ち手が伸びることで、車輪を振り回す得物となる。

 トリウィアは飛び上がりながらそれを確認し、目を見開いた。

 

「なんと――――ピザカッター!?」


「日輪式回転鋸と呼ぶが良い!」


 アルテミスや他の兄弟姉妹に散々言われたことなので強めに強調しておく。

 断じてピザを食べやすく切り分けるものではないのだ。

 それは、


「獲物を確実に狩る刃である……!」

 

 脚甲車輪のギアが上がる。

 それによって引き起こされるのは即ち加速だ。

 ジグザクに跳ねるトリウィアとは違う。

 岩壁に焦げ付く轍を刻みながら真っすぐに彼女を追うのだ。


「爆進……!」


 言った通りになった。

 狙いは彼女が岩壁の終わりに届く二歩手前。

 膂力任せで跳んでいる都合上トリウィアは急停止できない。仮にそうするなら跳躍の瞬間力む必要がある。

 故にまずは背に右の回転鋸を叩き込む。

 それを回避されたのならさらに左を。

 移動と加速は脚甲の車輪で行っている為、岩壁を介した平面機動は自由自在だ。どう回避されても追いかけられる。

 或いは空に逃げたとしても空中を駆ける輪炎で追撃をすればいい。

 単純な三段構えだが、それでいい。

 膨大な手数を持つトリウィア・フロネシスに対しては変に捻ったことをしても、その場その場で対応されかねない。

 反撃されるなら―――それはそれでも都合がいい。

 だから真っすぐに女を追う。

 トリウィアが跳ねる。

 岩壁の頂上まであと二歩半。

 長めの上昇の後にあと二歩になった。


「刈り毟れ……!」


 彼女の背へと燃え盛る回転鋸が振るわれ、

 

「―――おっと」


「!?」


 アポロンの視界が潰された。




 



 トリウィアは自らの行為が結果を為したのを見た。

 特別なことではない。

 腕を後ろに流し、双銃を蛇腹剣状態にすることでひっかかりを無くし。

 ジャケットを脱ぎ捨てたのだ。

 加速と重量に従って当然上着は落ちる。


「ぬおっ!? ……小癪な!」


 結果、アポロンの兜に絡まり視界を潰す。

 勿論それは一瞬のことだ。

 彼の兜は鬣が燃えているので当然ジャケットもすぐに燃えてしまう。

 だがその稼いだ一瞬でトリウィアは三つのことを行った。

 

「さぁて」


 まずは岩壁の頂上、数メートルしかない戦闘には物足りない足場に着地。


「ぬっ……なんだ貴様!?」


 すぐに追いついたアポロンが彼女を見て少し驚く。

 なぜならば、


「貴様―――――何故こんな糞寒い所でノースリーブを!?」


「勿論ギャップ狙いでウィル君にドキっとしてもらうためですが」


 アポロンの気づきに返答。

 これはこの男に対しての仕込みではないが、しかしそこに突っ込むとは中々の伊達男。

 男装のスーツ姿の下はノースリーブのタートルネックセーター。

 ウィルはわりとこういうシンプルな奴に弱いのだ。

 この場合問題はジャケットは一着しか持っていなかったので、ギャップ作戦が使えないが仕方ないとする。

 そして三つ目の動き。

 仕込みは既に終えてある。


「むっ……これは……!」


 アポロンも気づいた。

 ジャケットを脱ぎ捨てた時に変形した蛇腹剣、それが伸びて彼に巻き付いている。

 本来は分裂した刃片が超振動し、それを繋ぐ魔力の帯が刃となるが、全ての攻撃性能はオフになっていた。

 だから彼が気づくのが数瞬遅れた。

 その瞬間だけで十分だった。

 脳裏に過るのは、かつて天津院御影が風竜を一本釣りした光景。 

 全身に浮かぶ幾何学的な光のラインは肉体強化の魔力があふれ出たもの。

 ≪英雄凱歌≫による限界までの肉体強化により、蛇腹剣を思い切り引き込み、


「大鎧一本釣り……!」

 

 釣り上げた。


「ぬおぉぉ……!?」


 鎧の男が宙を舞う。

 細身の彼女からは想像するのが難しい鬼種顔負けの膂力。

 振り回した先は、


「貴様、よもや!」

 

 外壁のさらに外。

 即ち≪龍の都≫の外。

 舞い荒れる極寒の風雪。

 本来人の生存に適さない世界。

 トリウィアはアポロンをそこに投げ入れ、


「さぁ、最終ラウンドと行きましょう」


 自らも飛び込んだ。

 






 数百メートル続く垂直の壁をトリウィアは駆け降りて行った。

 それは垂直落下と共に行うバレエだ。

 跳ねて。

 落ちて。

 回り。

 落ちて。

 駆けて。

 落ちて行く。

 強風が絶え間なく吹き付ける為に何もしなくても跳ねた体は断崖に戻されるため、再度『戦乙女騎行』を発動、壁面への蹴りつけと跳躍時の体捌きによって姿勢制御を行う。

 ブレーキ代わりに使っていたジャケットは脱ぎ捨てたために、減速は行わず四肢の振りによってひたすら加速を重ねて行くのだ。  

 気温は氷点下。高速で落下するれば体感温度は当然さらに低い。

 ≪龍の都≫を飛び出したと同時に炎属性によって発熱することで運動性能を維持し風属性によって呼吸を確保する。

 

「……!」


 背後、即ち上方より輪炎が駆け抜けた。

 ことこの期に及んで、その燃える円環の大きさは倍近い大きさになっていた。

 直径一メートルを超えている。

 落下中くるりと体を斜め横に回して回避、続けて横から来た車輪は体を横倒しにした回転で瞬間的な減速を掛けつつ避けていく。

 氷が張りついた壁を蹴り、


「命知らずだな……!」


「そちらこそ!」


 追いかけて来たアポロンの回転鋸を右剣で受け止めた。

 衝撃に逆らわなければ体が左斜めに落下し、跳躍によってさらに落ちて行く。

 炎獅子はやはり、跳躍すること無く氷壁を足首の輪炎によって駆けながら落ちて来た。

 速度自体はトリウィアよりも速い。

 落下している自分とは違い、アポロンは垂直の壁を自らの意思で走ってきているからだ。


「―――やる気ですね」


「無論だとも!」


 ゴーティアの眷属。

 自分たちが魔族信仰派と呼ぶもの。

 おそらくその幹部。

 果たしてどれだけの鬱憤が溜まっていたのだろうか。

 超高所からの落下にも構わず追いかけて来た。

 何度も迫る輪炎は、こんな極限状態にあって尚、さらに勢いを増してきている。

 何もかもが高速で流れる状況の中、トリウィアは燃えるように輝くアポロンの目を見た。


「我等≪ディー・コンセンテス≫、来る日に向け父の為に影で備えをするだけだった!」


 だが、と燃える回転鋸の回転数が増す。

 それによる攻撃は苛烈であり、何度も激突を繰り返し、トリウィアは吹き飛ばされながらその叫びを聞く。


「父は倒れた! 予想外にな! なればこそ我らは立ち上がり、それでもまだ雌伏の時よ!」


「……!」


 連続する交叉。

 回転する炎の刃がトリウィアの双剣を焦がし軋ませる。

 『耐熱』系統を保有していないため、刀身を『氷結』『硬化』、高熱を『拡散』させることで強度を維持させていた。


「そんな時に貴様を、この世界における最強の女を狩る! それに猛らぬほど私は燻っておらんよ!」







 己は本来とっくに死んでいるものだっとアポロンは自嘲する。

 虐げられたものだった。

 大戦により親を失い、王国のスラムで生まれ育った。

 治安が良く、戦災孤児の救済を国策として行っていた王国だったがそれでも全てが救えるわけでもない。

 勿論帝国や聖国、連合に比べれば救われた孤児は多いだろう。

 そもそも国家全員が戦闘者である皇国や碌に大戦に参加せず高みの見物を決め込んでいた共和国とも違う。

 それでも取りこぼされた子供はいた。

 アポロンはそういう子供だった。

 そしてゼウィス・オリンフォス/ゴーティアとヘラに救われたのだ。

 後の20年、自分もアルテミス、ヘファイストスやヘルメスも含め雌伏の時だ。

 いつかゴーティアが動き出すまで、という目標は父が死ぬことによってヘラの主導によって変わったかと思えばまたもや裏工作だ。

 来るべき『その時』に向けて。


 そして――――『その時』の主役は自分ではない。


 ≪ディー・コンセンテス≫の中心に立つべき者はまた別だ。

 自分たちはその者の為にお膳立てをしているのであり、母であるヘラもまたその者を導くために動いている。

 だから己は脇役だ。

 スポットライトを浴びる者の背後で控えるべき者。

 そこに文句はない。

 父が残した無念とそれを引き継いだ母の願いをかなえる為の人生だ。

 救われ、育てられ、高度な教育と鍛錬、異世界の知識を与えられただけで感謝するべきだ。 

 だが、


「ここで貴様を倒せば、痛快であろうよ……!」


 トリウィア・フロネシス。

 『その時』に立ちふさがるであろう相手の中で最も危険度の高い女。

 大戦により世界から零れた自分が。

 世界に背反して尚、輝かぬ太陽が。


「自ら光るならば今を置いてあるまい……!」


 両足の車輪が音を立てて加速を生む。

 ≪桂冠至迅(アポロホイール)≫による機動は高速落下だろうと関係ない。

 こんな状況であれ自在に駆ける。

 必ず跳躍を挟まなければならないトリウィアとは違い、攻撃の主導権はこちらにある。

 事実数十秒も続く交叉は全てアポロンからであり、彼女はそれをしのぐためのものだった。

 

「回れ、我が日輪……!」


 故に行く。

 回転鋸を交差し、挟みのように突進する。

 輪炎の回転を内側にすることで、彼女を逃がさないためだ。 

 その熱量と回転率は過去最高。

 ≪龍の都≫を飛び出す直前よりも限界値はさらに上がっている。

 トリウィアはアポロンを引き離す為にこの断崖落下の戦闘を選んだのだろうが、それこそが彼にとっての勝機に他ならない。

 そして。

 アポロンは落ちて行くトリウィア・フロネシスの。


「……!」


 その輝く青い片目を見た。







『≪外典系統(アポクリファ)≫――――≪|汝、叡智を以て叡智を愛せ《φ ρ ό ν η σ ι ς ・φ ι λ ο σ ο φ ί α 》≫』


 蒼く輝く右の瞳、それに浮かぶ十字架。

 溢れる蒼き陽炎。

 あらゆる魔術魔法術式を『解析』する叡智の魔眼。

 トリウィアは最早、壁面を蹴ること無く頭から落ちて行った。

 ≪桂冠至迅(アポロホイール)≫の特性は既に分かっている。


 即ち、エネルギーの吸収だ。

 

 炎輪、ないし輪炎が受けた衝撃を燃焼力や回転力に転換している。

 最初の噴水広場、その後の外壁までのレース、現在の落下劇。

 進むにつれて火力が増してきたのはその為だ。

 不審に思ったのは噴水広場で水滴散弾で弾いたものが、消火されずに勢いを増していたこと。

 だから外壁に至るまでにそう推測し反撃を控えて回避に専念していた。

 単純だが、良くできると思う。

 戦闘が長引き、苛烈さを増せば火力が上がるのは不思議ではない。

 ≪龍の都≫外、極寒の風の中でも勢いを増さなければ考えすぎで流していただろうし、自身の≪外典系統(アポクリファ)≫がなければ気づけなかったかもしれない。

 だが気づいた。

 故にやることは決まっている。


「―――」


 ≪|汝、叡智を以て叡智を愛せ《φ ρ ό ν η σ ι ς ・φ ι λ ο σ ο φ ί α 》≫。

 古代語にて発音するその≪外典系統(アポクリファ)≫が発動した視界は色だけの世界だ。

 通常の視界とは別に魔法の術式だけで構成された色彩がある。

 以前戦ったヘファイストスも、今のアポロンも驚くことに人型の魔法式に見える。

 魔法を纏っているとか強化しているとかではなく、存在そのものが魔法なのだ。

 それも今のアポロンは、ヘファイストスのそれよりもさらに緻密。完成度が上がっている。

 アポロンがそもそもヘファイストスより強いのか。

 或いは強くなったのか。

 本人である鎧姿、加えて二振りの回転鋸、さらには周囲から迫る大型輪炎。

 前者には術式核が見えず、後者二つには見える。

 おそらく彼の≪神性変生(メタモルフォーゼス)≫がそれだけ高度なものということだ。

 魔法による肉体の変生。

 トリウィアの魔眼でもそれは簡単には砕けない。

 だから狙うのは簡単に砕ける方だ。


「―――叡智の祝福を」


 引き金を引いた。 

 風の轟音に紛れる小さな発砲音。

 

「なにっ……!?」

 

 それによりアポロンが握る炎の回転鋸が消滅した。

 彼女の魔眼による『解析』。それによって看破した術式核を破壊することで魔法そのものを消滅させるのだ。

 

「……まだ我が日輪は落ちておらんッ!」


 しかし彼は止まらなかった。

 指運にて操作するのは周囲に巡る輪炎八つ。

 上下左右からトリウィアへと迫る。

 

「えぇ、知っていますよ」


 だからトリウィアも止まらず、回転。

 自身の天地を入れ替え、


「っ―――だぁあああああああああッッ!」


 らしくもない声を上げて。

 中空に足場を生み出し、踏ん張った。


「!!」


 人種は空を飛べない。

 鳥人種のように自由に空を舞うのは不可能だ。

 浮遊するくらいならある程度できる。

 そして、空中に足場を作ることで跳ねることも。

 高速落下故、ただ足場を作っただけでは停止しきれないので、ブーツの裏から作った足場を岩壁に突き刺す。

 岩と石、土と氷をまき散らしながら彼女は急制動。


「―――熱が足りんな!」


 その動きにアポロンは対応した。

 同じく急制動。

 こと機動という点に関しては彼の方が大きく上回るのだ。

 一度ジャケットによる目くらましをしていたのもあり、反応は即座。

 

「集え我が日輪……!」


 輪炎の機動が修正され、トリウィアに殺到する。

 

『―――≪|From:Tisiphone《慈雨と殺戮》≫』


 彼女はただ、撃鉄を押し上げた。

 即座に双剣の刃が分裂し蛇腹剣となり―――通常とは違う配列を生んだ。

 真っすぐに蛇のように伸びるのではない。


『|不滅の栄光よ《Gloire immortelle》、|我等と我ら祖先に忠実であれ!《De nos aïeux, Sois-nous fidèle》 |彼らのように私も命を捧げよう!《 Mourons comme eux》 』


 刀身の延長上、より大きな刃片を描く。

 それぞれの空白に魔力が張られ、形成されたのは巨大な二振りの魔力刃。

 逆手でそれを握り、彼女は腕を、体を回し、


『≪魔導絢爛(ヴァルプルギス)≫―――≪十字架の栄光ヘカテイア・グローリア≫ッッ!』


 一閃。

 直径十数メートルの真円が発生した。

 トリウィア・フロネシス、三つ目の究極魔法。

 拡大展開した魔力刃に28系統を乗せた広範囲消滅斬撃。

 それを、輪炎が自身に接触する直前のタイミングまで引き寄せた上で残らず全てを一息に切り裂き、

 

「まだ、届かぬか……!」

 

 太陽の日輪を、深淵の円環が断ち切った。


トリウィア

何気に一番戦闘描写多いんじゃないでしょうかねこの人。

この後どうやって≪龍の都≫に戻るか頭を抱えることになる女

態々ノースリーブ仕込んでいる当たり卑しいですね。浮かれポンチですね。

彼女の技術特許は大半が浪漫武器です。

いつかマキナと仲良くしていたグラサンハゲことマックとかは喜んでるけど、マキナがそういう武器の特許取ろうとしてたら半分くらいトリウィアが取ってる。もう半分で特許取っても人気はまるでない。


アポロン

相手が……悪い……!


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  一個二個どころじゃないふりがなミスの多さが非常に残念。
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