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カム・フロム・マルチバース 2

「ほっ、とっ、やっ、っと」


 軽い掛け声で並木道を駆けながら、ポニーテールを靡かせ―――ソウジ・フツミは刀を振るう。

 斬る相手は人間大の猿型の眷属。 

 斬った数は、


「45―――2っと」


 木々の合間、道の先と後ろ。

 前後左右、加えて上。あらゆる方向から眷属たちが迫りくる。正面、猿が飛び上がってから降ってくる。

 首を落とした。

 続けて両サイドから6匹。

 

「―――スキル≪大剣豪≫」


 ソウジの握る刀、神話級武具≪フツノミタマ≫が微かに光った。

 右側の二体は斬撃を飛ばして首を両断。刀を返しながら左の頭を刺突でぶち抜き、隣の一体を蹴り飛ばして右その3にぶつける。迫ってきた左の最後は回転しながら首を飛ばし、残った2体も回転の勢いのままに斬撃を飛ばしてやはり首を落とす。

 魔物だろうと魔族だろうと、人の形をしているなら首を飛ばすのが一番速いとソウジは経験則から知っている。心臓もいいのだが種族によっては場所が違うこともあるので第二候補だ。


「んー、大体Bランクっすね」


 ソウジの世界、アース349は冒険者の世界だ。

 迷宮があり、迷宮都市があり、魔王がいて、冒険者ランクがあって、亜人もいて、魔物がいる。

 普通と違うのは、精々魔王と呼ばれる存在がぽこじゃが生まれてくるくらいだろうか。

 こっちもぽこじゃが倒すのだけど。

 その上でこの数だけはやたらいる猿型眷属はBランク。

 魔物も冒険者もEからSランク。

 Sランクともなれば、ソウジの国には7人しかいないほどの実力者だ。


「っ―――お?」


 前に走り出した途端、その前から壁のように眷属たちが集まっていた。それだけではなく全方位、それまでとは段違いの数が殺到する。

 10や20じゃなかった。

 一体一体は大したことはないにしても、30、40、或いはそれ以上ならば。

 その答えを、ソウジは今はじき出す。


「―――≪刹那滅空斬≫」


 一瞬。

 周囲一帯に空間に上書きされたように線が乱れる様に走り―――何もかもがバラバラに切り捨てられた。

 自身の半径数メートルの敵対象、その全てを切り捨てる≪大剣豪≫スキルの奥義だ。

 ソウジの世界はいわゆるステータス、スキル、レベル、クラスという概念が存在する。

 肉体情報や技術は数字化されており、鍛えれば鍛えるほどレベルが上がる。

 アースゼロでいうRPGゲームがそのまま実現したような世界であり、転生といえばまず思いつく様な仕組みである。

 そしてソウジ・フツミは最上級クラスであり、最上級スキルを多く持つ冒険者である。


「ふぅ」


 周囲を見回しながら刀にこびり付いた残滓を振り払い、


「むっ」


 一匹範囲外にいたのか、生き残っている。こういう時、いつもなら仲間兼奴隷に処理をしてもらうのだが。

 一人戦うのは久しぶりだなぁと思い、


 ―――――振ってきた大戦斧が眷属を両断した。


「―――っ?」


「おっと婿殿の友人。余計なことをしたかな?」


 大戦斧の柄から伸びる布が《《くんっ》》と引かれ、高速で吊り上げられる。

 軽い動きで大重量の斧をキャッチしたのは黒羽織に赤装束、隻角の鬼族。天津院御影だ。

 彼女は大きな乳房を揺らしながらも肩を竦め、


「大した腕だな。刀一本でそこまでやるとは。婿殿の友人はみなけったいな恰好をしているが、お主はわりと見知った姿だな。≪皇国≫出身だったりするのか?」


「…………」


「…………?」


「…………いや」


 ソウジ・フツミは――――コミュ障である。 

 掲示板ではいいのだ。加えて転生者同士なら前世が同じ世界だからと敷居も低い。

 だが、それ以外はダメだ。何を話していいか分からない。ついついどもり掛けるので無口になりがちだ。

 喋りが苦手なこととが寡黙と勘違いされてるので冒険者ギルドや国からの評価は高いのだが。最近は近しい人の間ではマシになったのだが初対面での会話は難しい。

 何より。


 ――――ソウジは「わー、鬼の巨乳っ娘エッチ~~」とか、ウィルと戦う御影を見て似たような奴隷を買ったのだから。


「…………」

 

 内心、ソウジは冷や汗を流しまくり、滅茶苦茶てんぱっていた。

 だが、なまじ女性と見間違わんばかりの中性的な顔立ちに艶やかなポニーテールと顔がいいので黙っているだけでそれなりに絵になるのだ。

 

「……ふむ」


「っ」


「……?」


 御影が首を傾げて何かを言おうとし、思わず緊張しすぎて体がこわばる。

 どうしようかと思い、びびり、目線をそらした先。

 人間大の猿たちとは違う、全長5メートルはありそうな蛇型眷属がいた。


「―――先に行く」


 これ幸い、離れる口実発見と言わんばかりに風のように駆け出し、


「…………婿殿より無口な男がいるとはなぁ」


 御影は嘆息し、任せていいかと別方向へ駆け出した。

 そして、


「――――斬る」


 ソウジ・フツノは敵へと抜刀する。



 Fromm earth 349  元奴隷童貞冒険者/Sランク冒険者―――――≪刀神≫ソウジ・フツノ。








 その生物をフォンは初めて見た。

 魔法学園上空、様々な鳥型魔族が舞う中でなお異彩を放つものを。

 それはシルエットだけなら鳥人族のそれに似ている。

 だが実際の姿はまるで違った。

 羽毛と骨格で構成されているのではない。

 金属質のフレームと――光の膜でできた翼だった。


「はえー、綺麗」


 自身も空を舞い、翼で魔族を叩き落し、蹴り落としながら加速しつつ、その飛翔を見る。

 鳥人族の飛び方とは違う。

 風の流れを読み、その流れに乗って飛ぶのではない。

 どういうわけかそのフレームウィング自体に浮力が発生し、加速を行い、風を切り裂くように飛んでいる。

 例えばフォンが空中で戦うのならば敵との戦いも飛行に利用する。

 第一飛行形態(ヒトガタ)四肢に加えて双翼の六つの攻撃方法による打撃。

 或いは第二飛行形態(ハーピースタイル)であれば双翼による打撃と趾による爪と掴み。

 それぞれ攻撃手段は異なるが一つ一つの動きと加速させるのがフォンの闘い方であり、鳥人族の闘い方である。


「とりゃっ」


 軽い掛け声ながら、猛禽類型の魔族に翼を叩き込み両断する。

 体重は軽い鳥人族であるが加速を乗せた彼ら彼女らは、魔法により風の刃を纏う。加速を重ねることによってあらゆる行為を音速超過で行い、重さではなく鋭さで敵を倒す。

 そのまま魔族を裂いた抵抗を体を回転させることで加速。

 さらに真っすぐに伸び、別の魔族に体に趾を引っかける様において加速任せに引き裂く。引き裂いた瞬間、残った体をさらに蹴りつけてまた加速。

 真上にいた魔族に両趾で着地。その握力任せに体を握りつぶし、潰れた身体を足場にして真下へとさらに加速。

 加速に加速を重ね、その上でさらに加速を。

 鳥人族は魔法に適した体ではなく、二桁の系統適正を持つことは極めて稀。

 だが、だからこそ飛行に特化している。

 飛ぶために翼を羽搏き、飛ぶために敵を切り裂き、飛ぶために敵を穿つ。


 アース111最速の翼。

 地上から見れば白と黒の影が一瞬で視界一杯に軌跡を引いたと思えば消えたかのようにしか見えないだろう。

  

「……とんでもねぇな」


 超音速、どころか音速の数倍まで加速するフォンを見てガスマスクにフレームウィングの男―――(ケイ)・フォード・黒鉄(クロガネ)は飛行用ゴーグルの奥の赤目を細めた。

 空における生物としての格が違う。

 景の飛行はネオニウムという地球外物質によるドーピングによって体を強化し、フレームウィングの起動もネオニウムよって行われている。

 精製の方法によっては体内に取り込むことも、燃料としても、あらゆる科学文明の動力源として運用できるのだ。

 彼の戦闘能力の大半はこのネオニウムが根幹にあるために、世界が変わったから使えないなんてことがなくて幸いだった。

 ネオニウムを取り込むために景の体は諸々人体改造されまくっているのでネオニウムが効果を失うと全く使えなくなってしまう。

 脊髄にはフレームウィングや両手両足のネオンガントレットを意思で操作するために脳波制御チップが埋め込まれているし、アンダースーツにはシールタイプの身体強化ネオニウムが仕込まれてもいる。ガスマスクから伸びるチューブは腰のネオニウムストックと繋がっているために、ネオニウムがなければやはりただ息苦しいだけだ。

 思わず口の端が歪む。

 ガスマスクの奥で皮肉げな笑みを浮かべながら―――フレームウィングを加速させた。

 呼吸はガスマスクで、眼球はゴーグルで保護されているが空気抵抗や加重に対しては無抵抗だ。ネオニウム粒子で強化された肉体任せで強引に耐えながら、飛ぶ。

 フォンの流れるような加速とは違う。

 無限加速による飛翔ではなく、加速と減速、停止のサイクルだ。

 ネオンブレードの柄に付属するトリガーを引き、カートリッジが排出。高熱を発するレッドネオニウムが充填され、ブレードに装填。ネオンレッドに輝き、1500度の刃が発生する。


「――だっラ!」


 梟型の眷属を叩き切る。 

 抵抗はほぼ無いに等しい。

 故にそのまま真っすぐ飛ぶ。

 

「―――ギブソン、右腕・ブレード固定!」


『copy』


 ガスマスク内臓イヤホンから機械音声から返答がある。

 クロノにとってのアルカのような魂すら溶け合ったパートナーではない、純粋なガジェットサポート人工知能だ。

 脊髄に脳幹チップ埋め込めばガジェット操作簡単と思ったけど、戦闘中の思考とごちゃって逆に面倒になるので友人に作ってもらったのは懐かしい話である。

 右腕をブレードごと固定したままに空を飛び、超高温ブレードの威力任せに眷属を焼き切りながら空を突っ切る。

 最高速度でやっと音速に到達するという具合。

 フォンの加速度や空中での自由度には大きく劣る。

 そもそも種族として飛行に特化した彼女に、その分野で叶うはずもない。


「自分で言って、悲しくなるなァ!」


 空を突っ切り十数体倒した所で反転。


「ンぎぎぎぎぎギッッッ……!」


 フレームウィングを大きく広げ、加重に耐えながらも急制動。直進突撃では倒しきれなかった取りこぼしたちが殺到してくるが、停止の勢いのままにネオンブレードを振り上げ、


「ガンモード……!」


 振り下ろした柄が直角に折れて銃形態へと移行。それと共にカートリッジを排出し、新たに装填。赤ではなく黄色。

 トリガー。

 銃口から放射線上にネオンイエローの雷撃が中空に迸る。

 射程範囲約30メートル、カートリッジ内ネオニウム全消費の大技だ。

 ネオニウムはその色と精製に応じて万能に近い反応をもたらす。

 自らネオニウムを精製し、ネオニウムによる汚染耐性が極めて高い景だからこそそれらを十全に使いこなせるのだ。


「ふぅぅゥ――」


「凄いね今の!」


「――――まぁナ」


 振り返ったらフォンが真後ろに滞空していた。

 強化した感覚器官ではそこにいることには直前には気づいていたが、しかし接近するまでが分からなかった。速すぎる。完全に景のアースの速度上限を完全に超過しているだろう。

 

「んー、貴方私と同じ鳥人族? その割にはヘンな飛び方するけど」


「違う違う、アンタの主と同じ人間だヨ。ちょいと弄ってるが――まぁ、人間ダ」


「へぇ――主は交友範囲が広いんだね!」


「……お、おウ」


 影も曇りもない明るい笑顔に思わず圧倒される。

 今の自分はフードにガスマスク、ゴーグル。体のあちこちがネオンライトに光るわりと怪しい人物なのだが。

 景の知り合いは大体何かしら過去に影やら傷やらがあるので滅多似合うことのない人種だ。

 

 いや、それを言うならそもそもウィルこそ出会ったことのなかった人種なのだけど。


「にしても、魔族って思ったより大したことないかな。私と貴方だったら、大体空はカバーできそうじゃないかな」


「おイ鳥ちゃン。そういうこと言ってると―――」


『■■■■――――!!!』


 轟いた咆哮は眷属たちが集合して生まれた―――ワイバーン型だった。

 約15メートル近い大型眷属。学園内で生まれたものでは現在最大級だ。


「………………」


「…………ほら、大体こうなるんだよなァ」


 嘆息しつつ、


「ギブソン、《《アレ》》やるゼ」


『|正確に指示をください《Say correct.》』


「…………こほん」


「何か言った?」


「………………いや」


 ちょっと格好つけたら言葉足らずだった。

 帰ったらAIのアップデートをしたい。マキナあたりが上手いことしてくれないだろうか。

 気を取り直して、


「―――ギブソン、オーバドーズ」


『Copy. Overdose』


 指示と共に、ガスマスク内部から通常の摂取量をはるかに超える純粋ネオニウムが噴出され、呼吸器からそれら全てを吸い込む。

 通常の人間であれば一吸いで中毒死するレベルを、転生特権の状態異常無効任せに取り込むのだ。


「―――フッゥゥ……!」


 過剰摂取によりゴーグルとフードの奥で、真紅の瞳が輝いた。


「ハイでイクゼ……!」




 Fromm earth 984  サイバーヤクザい師/黒鉄製薬事務所所長―――――≪オーバドーズ≫景・フォード・黒鉄。


 


ソウジ

勘違い系転生者

彼の世界で7人しかいないSランク冒険者。

魔王と呼ばれるSランク魔物がわりとぽこじゃが生えてくるけどばっさばっさ斬り殺してる。

スキル名はなんかテイルズとかあんなノリ。

わりとモテるがコミュ障。

御影さんの顔見るのが滅茶苦茶気まずい



多分一番番外編スピンオフ主役適性が高い

変形機構武器やら機械翼やらAIサポートやらガスマスクにお薬過剰摂取で強化とか男子が好きそうなやつを盛り込みまくってる。

滅茶苦茶モテるが複雑な関係も多い。

ちゃんとメカニックの相棒もいたりするのでアメコミのダークヒーローのノリ



フォン

ちゃんと戦ったことなかったけど、やっぱり強い。平気で音速の数倍に行くわ、翼でぶっ叩いても加速するとか物理法則を舐めている。

空中戦だとアース111最強候補。



キャラが……キャラが多い……!!!!!

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[一言] ふと思ったんだけど状態異常無効にドーピングって効くんだろうか
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