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過去③ -悲しい勇者の話-

過去回想3話です

 追われる身の勇者と女神がこの国にきて数ヶ月が過ぎた


2人は様々な依頼をこなし国中から信頼を得ていた

この国内のみの活動とし、国民には

2人の情報は決して他国にはもらさぬように

と国王からお触れが出ていた


しかし他言無用と言われても

噂話などから2人の名声は国外へ漏れ出していく

その噂は2人を追っていた帝国連合諸国のギルドに知れ渡り

やがて国対国の大ごとに発展していく


帝国側は2人の身柄を渡すように求めてくるのに対し

武の国の王は要求を突っぱねる

そんな2人は知らない、と

そんな嘘を鵜呑みにする訳のない帝国連合諸国は

4カ国からなる軍を武の国に向けて進行を開始する


勇者と女神は若き国王に迷惑をかける事になると

国を出るつもりだったが国王が2人をそうさせない

 

 お前ら2人はすでに私の国民であり

 国の英雄だ

 そんな2人を守るのも国王の責務

 そして恩を仇でかえすなど

 男としてそんな恥さらしな真似ができはずもなかろう

 それとは別に2人とも私の親友だ

 俺はお前ら2人が好きなんだよ


そう言われてしまっては2人も逃げ出す訳にもいかず

そして国民のほとんどが2人の為に戦う覚悟でいた


この国は小国でありながらも

S級ランクの冒険者がたくさん集う街

その大勢のS級冒険者達が2人実力を認め

そして大好きだった


それでもこの国に戦火をもたらす訳にはと

2人は最後まで悩み続ける事になったのだが

帝国諸国の軍は思ったよりも足が速い

もう2人がいようがいまいがこの国は戦火に覆われる

それならいっそ勇者の力が必要になると2人は

決心して戦いに臨む事になる

勇者が出来る限りの戦闘は避け

女神の結界と大袈裟な魔法と

大地を裂くほどの斬撃で

国王軍を追い払うつもりでいた


しかしそれも難しくなる

帝国諸国は4カ国から軍を進行させていたが

それぞれの軍を率いていたのが

元勇者パーティーの仲間達だった

実力は勇者に及ばずとも

S級冒険者を凌ぐSS級レベルだった

勇者の元パーティーメンバーの4人は

それぞれ魔族によって、親、恋人、兄弟を

目の前で嬉々として惨殺、食い殺され

燃やされ、出来る限りの苦しみを与えられ殺された

恨み、などと一言では片付けられないくらいの

復讐心で魔王の元にたどり着いた

その思いが成就する目前で

魔王にとどめをさす直前で

勇者に裏切られた


絶望


信じていた勇者からまさかの魔族と和解提案

それも魔王を追い詰め後少しの所での事だった

呆然とした、目の前が真っ白になった

何を言ってるの?

悔しさを噛み締めるあまりに歯茎から血がながれた


魔王にとどめを刺そうにも勇者がそれを許さなかった

話合いもしたが、勇者は信念を曲げなかった


パーティーは解散


胸をはって帰る事ができなくなってしまった

勇者の元パーティーの面々は

親愛する物の墓にも行けず

ただ行き所のない思いが、悔しさが

勇者への怒りに変わっていく

そこへ国王からの依頼

握りしめた拳をぶつける場所を求めて

軍隊を率いる事になった


その真実を知った勇者は涙する

そして女神にも衝撃がはしる

帝国の軍隊の中に人に扮した

天使軍が混ざっている

総勢100名あまり

女神による検知によって判明した

天使の軍が来たという事は

女神界からの本気を意味する


勇者と女神は守るべき物が国になり

相対する敵が、あまりにも強敵になりすぎた


手加減しながらの戦闘が出来るのか


たくさんの犠牲者がきっと出てしまう


勇者の心が追い込まれていく

それを癒す唯一の安らぎが女神だけとなっていく


つづく

全ての生物の心がすさんでしまった世界

地獄ですね


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