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遭遇。そしてごはん

 蟲は夜の道を進む。星の位置も変わった頃、突然足を止め『この音は川か』と言った。


「え?」女の目には大小の石が転がる道しか見えない。

『こっちだ』蟲は道を外れてまた森を進む。


『今度は音を聞こうとしてみろ水の流れる音を探せ』


 女は目を閉じ耳に手を当てる。

 木の葉が風に揺れて葉が当たる音。小動物が地面を蹴って走る音。鳥のような生き物の群れが蟲の足音に驚いて羽ばたく音。

 様々な音が大音量で女の耳には聞こえた。蟲に枝が引っかかり、折れて落ちた音が大きく。驚いて耳を塞ぎ目を開けた。 


(この能力は慣れが必要そうだな)耳を塞ぎながら女は思った。


 もう一度、イメージ。今度は聴く向きを絞る。女の後ろに生えている櫛状の触角がふるふる動く。いくつかの不要な音を省く。そして伸ばす。伸ばした物を左右に振って探る。しばらく動かしていると水が流れる音が聴こえた。


「みつけた!」と女は喜びの声をあげ目を開けた。



 蟲と比べると小川のようだが人には結構な水量がある川が流れている。 


『近くに滝と湖があったはずだ』


 蟲はそう言ってから川にしゃがみこみ顔を水面に寄せる。


「ちょ、ちょっと!」


 女は一瞬水に浸かるのかと思い服と荷物を気にしたが、蟲は大顎を水面に付けただけでズズズと水を吸う音がした。


 ほっと息をつき蟲が水を飲んでる間に女は辺りを見渡す。生き物は見当たらない、いても蟲の足音に驚いて逃げ出しているだろうし例え獲物がいてもどうやって捕らえるのだろう。


 今まで教えてもらったこいつの能力を考える。名前を付けるなら。


 《暗視》《視覚強化》《聴覚強化》《超擬態》と、いった所か。

 嗅覚、《嗅覚強化》も能力かも。女は遺跡から出た時の事を思い出した。


 生き物としてこれほど強力で凄い能力だと思う。だがこいつは大した能力では無いと言った。こんな能力ばかりだと。


 ……もしかして。と女の脳裏に閃く物があった。何故思いついたのかは分からない。これがあるだろうと確信していた。


 森に目を向けて。


「《熱感知》」


 スッと視界が暗くなる。夜中の熱の少ない木々がボウと青紫色で暗く浮かぶように写る。


 蟲は驚いたようで川から大顎を上げる。


 木々の間に赤い点。《視覚強化》で赤い点が拡大される。《熱感知》を解除。《暗視》を使用。 


 それは丘の上に四本の足で立ち。長い尻尾があり。首が長く。頭に一本の大きな角。顔はシカに似た動物が川にいる巨大な怪物を遠くから警戒しているのかこちらをじっと見ている。


 六角形の緑色のマークが動物を包む。そして。

 〔〈役割__獣〉__〈角馬〉〕という文字が六角形に付く。


 女と蟲は同時に叫んだ。


『「肉だ!」』



 獲物を目にした女は蟲の小指を立てるイメージをする。


 すると篭手に納まっていた刃が折り畳まれた鉈が飛び出す。四本の指で柄を掴むと畳まれてた刃が起き上がりさらに伸びる。


 女はその刃が黒く光る鉈を見る。この武器の強さはよく知っていた。目覚めてすぐのあの遺跡で石材の建物に叩き付けても刃こぼれもせず粉々に破壊したのがこの武器だ。

 だがこれでどうやって獲物を捕らえるのだろう。走って追いかけても獲物に向かって投げても木々が邪魔で苦労しそうだ。


 女は蟲に聞いた。


「それでどうするの?」

『こうする』と蟲は鉈の先を獲物に向け『放つ』と言った。


 角馬と名が付いた動物は、動いた怪物が自分に振り向いたので走り去ろうとした。


 だが次の瞬間。角馬はジュッという小さい音と同時に、角馬の頭が吹き飛び糸が切れたように倒れる。

 頭があった場所はえぐれ火に当てられたかのように肉が焼けた匂いが漂っていた。


『まさか教えてない能力を使うとは驚いた』

「まさか熱光線がとんでくとは思わなかった」


 仕留めた獲物に化物は近づきながら同時に言った。



 角馬と呼ばれた動物は頭が吹き飛んでも3メートルはある大物だった。だが20メートルはある化物からしたらとても小さい。だが蟲はそれでも上機嫌だった。


 死骸を拾って川まで戻り角馬の倍以上の大きさがある鉈で後ろ脚の一本をちょんと切り落とす。それから蟲は小さい脚を摘んでブン! と振る。切断部から血が飛び散った。


「何してるの?」

『血抜きとかいったかな。こうすると人間が食べる肉は旨くなると昔聞いた事がある』


 蟲は切断部を下に向けて上下に振ったりしている。


「やり方あってんの?」

『わからん血を抜けとしか聞いてない』


 だいたい血を出し終えたと思い蟲は頭上の女の所に肉を渡そうと腕を上げる。蟲には小さいが女には身体の大きさ程の肉の塊が迫る。咄嗟に女は蟲の腕を止めた。


『どうした?』 

「え? あ、これ私の分?」

『そうだ』


 血は抜けてるのだろうが皮にはべったりついて真っ赤だ。


「あ〜生はちょっと」

『あとで焼いてやる。持っていろ。食べたいのだろ?』

「うん、あ、いや、あの」

『どうした?』


 女は正直に言う事にした。


「服が血で汚れるからそっちで持っててくれない?」

『む? ああ、そうか』と言って蟲は女から肉を離した。

 蟲は通路を進んでいるさい蜘蛛の巣に突っ込み、頭上の女が汚れた! と泣いて怒って頭をバンバン叩かれたのを思い出していた。


『すまない汚れてはいないか?』


 女は自分の着てる服をよく見て調べてから「大丈夫」と返事する。


 蟲はその間持ってる肉をじっと見て『そうだ』と何か思い出したように言った。

『ロープか何かなかったか』

「え? えっと、あったと思う。ちょっと待って」


 お腹に巻いた鞄から粗紐の束を引っ張り出して蟲が伸ばしてきた指先に引っ掛けて渡す。紐を受け取った蟲は昆虫の指先で器用に肉に括り付ける。

 そして紐を木の枝に括り付け肉を川の水に放り込んだ。


『こうすると良いと大昔の仲間から聞いた事がある』

「へ〜でも何で?」

『わからん。でも人間にはこうした肉は旨いらしい。あと塩で保存すると良いとも聞いた』

「塩かぁ〜難しいなぁ」


 今はモンスターなのだ人間の町に行ってお買い物はできないだろう。


『こうやって食うのが、一番うまいのにな』

 蟲は残った動物の死骸を拾い上げ大顎に突っ込む。顎からぼりぼりと何か折れる音がする。コロンコロンと嬉しそうに鳴く。


「美味しい?」

『うまい!』


 蟲は久々の血と肉の味を楽しんでるようだ。



 蟲の食事後。先程の能力を学ぶ。


『名を付けるとそうだな《熱弾》という。これから高熱の弾を飛ばす能力だ』


 鉈を持って蟲が言った。


『使った後でその《熱感知》は使うな。目がいかれる』

「ビー※ライフル とか レ※ザー 砲とか超電※砲とか持ってるモンスターてズルくない? いや、この姿になってりありてぃ〜とかもうどうでもいいのか?」女が半目で何か言ってる。

『何を言っているんだ?』

 女も抱えた頭にノイズが流れまくって自分でも何を言ってるか解らない。


『強力だが弱点がある。一発撃つと暫く撃てない。連続で撃てるのは両方で二発までと思ってくれ』

「射程距離は?」

『どこまでも。と言いたいが空気の影響を受けてすぐ拡散する。雨が降ってる時は全く使い物にならない、あの程度の獲物なら小さい弾で良い。最大で撃つと食う所が無くなるぞ』

「弾を小さくして撃っても二発まで?」

『二発までだ』

「二発かぁ切り札なんだね」女は外せないなあとつぶやいた。


『切り札は別にある』


 蟲がサラッと言ったので女は聞き逃しそうになった。


「まだ何かあるの!?」

『ああ、取って置きのがある』


 蟲は自分の最大の切り札を説明し始めた。


 空が明るくなりつつある。夜明けが近い。




 森の中で2つの影が這って動いている。


 影は背に弓と矢筒を腰に短剣を差している。顔が火に当ったように赤い。動物の毛皮を身に纏った狩人風の男が連れに震えながら言う。


「見えたか?」


「わがんね! だが何か居る! とんでもねぇのが!」


 連れも似た装備だが腰には手斧を差していた。こちらも顔が真っ赤だった。


「シッ! 静かにしろ!」

「ドラゴンじゃねえ! バケモンだ! 領主様に知らせにゃあ!」


 連れは隠れる事も忘れて走り出した。


「待て! あ、待ってくれ!」


 男も連れを追いかけようと走ろうとするが腰が抜けていた。「畜生!」と這いながら連れを追いかけた。


お料理回書きたいと思いましたが途中でこいつらたぶんお料理とか出来ないなと思ってあきらめました_(:3 」∠)_

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