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裏切りの発覚

登場人物紹介


蟲騎士……〈勇者殺し〉の名を持つ全長20mの人型モンスター。虫タイプ。勇者と英雄の役割を持つ人間が苦手。


ナナジ……蟲騎士と同化しその額に女性の姿で生えている。性格が残虐で争いと戦闘を好む。

 下級魔物達の姿が消え静寂だった大森林に突然爆発音が続けて鳴り響き巨木が爆発の威力でへし折られメキメキと鳴りながら巨木は倒れるが地に着く寸前に黒い影に跳ねられ別の方角へ倒れた。

 巨木と衝突した影は何事も無いように太陽の光に真上で照らされる木々の間を縫うように走っている。

 走る影の前に別の影が横切ると影はピタッと足を、長い身体に列をなす足を止めた。

 影は巨大なムカデだった。

 足を止めた大ムカデは目がある頭部を空へと見上げている。

 ひゅ〜と笛を鳴らすような音と共に何かがムカデの前方に幾つも落ちてきた。

 ――ザン! ダン! ダダン!

 落ちてきた物がムカデの前方の大木や地面に突き刺さりそして突き刺さった物が一斉に爆発。

 轟音と爆風で飛び散った木片や石がムカデの身体に当たりカンカンと音をたてる。

 爆発音の後、静寂の中で巨大ムカデはキキキキキと空に向かって鳴いた。


 青空と太陽の中心で別の影が羽ばたく。


「全弾外れました」

『クソ! クソ! クソ! あの野郎笑いやがった!』


 ムカデの前を横切った影。大森林の空を高く飛ぶ魔物が羽根を広げ風を切って飛んでいた。

 空を飛ぶ魔物はこの世界で空を支配するドラゴンという生き物……に、似ている。

 左の先から右の先まで二十メートルはある大きな二枚の羽を何度もはばたき高度を上げながら方向転換。


『クソ! もう一度やる!』

「了解」


 全身は濃青色、ゴツゴツとした爬虫類を思わせる顔と体、飛びやすく空気抵抗を下げる為に手足をたたみ首を真っ直ぐに伸ばし太い棘が幾つも生えた尻尾を揺らしながら翼を広げ加速するドラゴン。その背には人が、人が背に跨がるように、だが両足が無く上半身だけの人間が、()()()()()()()()()()()()

 ドラゴンの背に生えている人間は厚手の外套を纏い顔には特別製の兜で覆いその面当てに付いている機械を手袋で包まれた手で器用にいじりながらドラゴンの背から身体を斜めにして下を覗き込み再び移動再開する大ムカデに目と機械のレンズを向けた。人間の目にはムカデは赤い六角形のマークに囲まれて表示され機械のレンズからはズームされたムカデの姿と距離と高度の数字が表示されていた。


「方向は良し。高度はこのままですか?」

『このままだ!』


 一つの兜の中で二つの声が風を切る音の中で会話している。


「高度が高過ぎます。このままだと直撃は難しいでしょうもう少し……」

『駄目だ! これ以上下げると姿が見えない雌の方、〈万の足〉がここまで飛びかかってくるぞ!』

「ここまで……」


 上半身だけの人間は大森林には自分達を超える魔物が潜むから注意しろと飛ぶ前に言われた事を思い出した。


『奴に捕まるとクソ面倒だからな! この高度でやるぞ!』

「了解」

『外皮の硬いあの野郎に直接ぶつけないと抜けないんだからな! 俺が下向けない代わりに良くみろよ!《再装填》する!』

「森を燃やしちゃだめですよ」

『わかってる! 破裂するだけだ!』  


 ドラゴンの長い尻尾に生える棘の内いくつか棘の中間がボコボコと太く膨らみそこが黄色に輝きだした。


『《炸裂》準備良し』

「並走しています丁度真下、投下用意」

『コース良し、姿勢良し、今度こそぶつけてやる!』

「まだです……まだ……奴の進行先に……」

『《投下》!』

「あ、投下待て! 投下待て!」


 人間の声は待てと言うがドラゴンの尻尾からポンポンポンと軽い音と共に棘が切り離されて落下して行った。


「待てと言ったでしょ……」


 人間の目には目標の大ムカデが走る方向を変えている。この高度で落下する棘が地面に着く頃には避けられているだろう。


「全弾外れました」

『クソ! 動いてる奴と手の内がバレてる奴とはやりづらい!』


 人間はハァと息を吐いた。


「相性が悪かったのです我々でなく白騎士殿に出てもらえば良かったですね」

『クソ! もう一度やる! 今度は当てる!』


 尻尾から切り離された棘があった場所に真新しい棘が生えてきている。ドラゴンが首を動かしたので空気抵抗を受けてバランスとスピードが落ち何度も翼を羽ばたかせた。


「……いえ奴の縄張りから道を離す目的は達しました警告して帰還しましょう」

『クソ!』


 悪態の声の後ドラゴンは口を開けて咆哮をあげた。人間には理解できない言葉で大ムカデに警告しているのだろう。

 ムカデから離れ帰還する為に向きを変えた時、地を走っていた大ムカデは脚を止めキキキキキと高い鳴き声をあげた。


『……何?』  

「どうしました?」

『あの野郎、貴様らも人間の味方になったのかと言いやがった』

「それが何か?」

『貴様らもと言った貴様ら「も」と、魔獣兵はここらで俺達と白以外……そうか! あの蟲野郎だ! あの野郎むこう側に付きやがったか!』

「虫?」

『そうだ! 同化者を甘やかして可愛がる変態蟲だがこれはクソ面白くなってきやがった! 《通信》! ――軍師! こちら竜騎士! 至急知らせたい事あり。送れ!』


 兜の中ではしゃぐ声の後少し経ってから背の人間には聞こえない返信が帰ってきた。


『――?』

『勇者殺しが敵側に付いた可能性がある!』

『――!?――!』

『いや、まだ姿は確認はしていないが今から西へと飛んでみる。そちらでも調べてくれ!』

『――!――!』

『南部への潜入作戦? 空飛んでる俺達が知るか! 《通信》終了!』


 そう言ってから竜騎士は羽ばたいて西へと向きを変えた。


「このまま西へ飛べば西方南部領郡ですが」

『おう! 帰還は少し遅くなるぞ!』

「私は構いませんが一つよろしいでしょうか?」

『おう! なんだ?』


 竜騎士の背に生えている人間は顔を覆う機械が付いた面当てを上へとずらしその下にあるゴーグルもずらして現れた眠そうな黒い瞳が風をうけてさらに細くしながら自分の耳を手で押さえた。


「兜を付けている時に私の口で叫ばないでください耳に響いて痛いんです」

『ああ! ミカちゃんごめん! 鼓膜大丈夫? 本当ごめん! ごめんよ〜!』


 竜騎士は自分の首を背に生える同化者に向けて心から詫た。         

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