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番外 芸術は大破壊だ!

「はあ〜相変わらず上手いもんだなあ〜」


 魔物を見張る二人の兵士。いや、もはやナナジの護衛の兵士になっていた一人が紙の束にサラサラと絵を描いていた。上等な紙では無く表面は荒いがその紙に兵士は巨大な魔物の姿を細かくそして素早く正確に描きえがいていく。相方の同じ護衛の兵士がその絵を覗き込んで見て関心する。


「へへ〜ん役割が暗殺者じゃなかったら絵師になろうと思ってたからな!」

「なりゃ良かったじゃないか前領主様は職業の自由を布告してたんだぜ?」

「しょうがねえじゃん暗殺はうちの家業なんだよ」

「……やな家業だなあ」


 兵士は呆れ顔で言った。


「そういやお前もさっきから何書いてんだ?」


 暗殺者は相方に聞く。彼も紙に何か書いている。絵ではなく汚い文字だった。

 兵士は聞かれてニカッと笑う。鋭く尖る犬歯が生えていた。


「良くぞ聞いてくれた! これは詩だ!」

「詩?」

「シズカ様の兵士達に話聞いてよお。まとめて詩にして吟遊詩人達に売ってひと稼ぎしようと思ってよ!」

「……お前狂戦士だろ? 吟遊詩人って柄か?」

「ガハハハ! 俺もそう思う! 題名はそうだな……小魔王と蟲姫騎士ってどうよ?」

「小魔王てシズカ様か? 小魔王じゃ分かり辛いだろ。西南のって付けたらどうだ?」


 狂戦士はおお! と指を鳴らす。


「それ頂き! 〈西南の小魔王と蟲姫騎士〉これだな!」

「……出来たら聴かせてくれ爆笑してやるからよ」

「お前の絵も出来たら教えてくれ鼻紙が欲しい所なんだ!」


 フン! と二人は鼻を鳴らし自分の作業に集中する。


 ――後にこの二人は歴史にその名を残す作品を世に生み出すのだがそれはまだまだ先の事であった。



 兵士達の先では巨大な魔物が森林砦の大門にその頭を突っ込んでいた。


『頭が入ればだいたい通れます』


 その魔物が言ったので試してる所であった。

 ……だが思いっきり身体が引っかかって先に進まない。だが蟲騎士は身体をぐいぐいと押す。金属製の大門の枠から嫌な音とオーガの一撃にも耐えた城壁が震える。


「シズカ様! 無理です! ほんまあれ止めてください!」


 オットーと名乗ったここ森林砦の砦将がシズカに進言する。


「そうね……壊れるとまずいわねえ……」


 シズカの言葉を聞いてオットーが腕を回す。それを見て三機の機械甲冑が魔物に駆けて行く。


「身体をもう少し斜めにしたら行けそうだがなあ」

「いやあ多分無理でしょう今度はあの羽根が引っかかると思いますよ?」


 調査隊の隊長の言葉にアーダムが否定する。


「砦の上を飛び越えたら良いのに」


 アベル少年が呟きリズが同意するように頷いた。


「後ろは今散らかってますからね」


 オットーの女性副官が少年に教えてくれた。

 森林砦の裏には先の戦いで出た問題点の改善の為に工事用の物資が山積みで事情を知らない職人達が大騒ぎを起こしていた。


「ナナジさん! シズカ様が下がれって! さ〜が〜れ〜!」


 調査隊の兵士トカゲが蟲騎士の側で両手を筒にして口に当てて叫ぶ。魔物は聞こえたのかピタッと止まり今度は手を壁に当てて引く。

 だが何かが引っかかり頭が抜けない。

 機械甲冑達が蟲騎士に取り付き一緒になって引く。トカゲはここは危険と判断して離れて行った。

 機械音が三つ増えている。どうやら門の裏からも機械甲冑が魔物の頭を押してるようだった。


 クルトが副官に訪ねた。


「他に機械甲冑はあるか?」

「ええあります。乗り手のいない機械甲冑が……ニ機」


 女性副官の目はクルトの機械乗りの革鎧を見て上下に動く。


「ニ機あるのか」


 クルトはハチに顔を向けハチもクルトを見てその髭面の口の端をつり上げていた。


 バキバキバキバキバキーン! 


「あああ! 俺の砦がぁぁぁぁ!」


 大きな金属音と頭を抱えるオットー砦将の悲鳴で全員の視線が魔物に集まる。

 蟲騎士は頭を大扉の枠事引っこ抜いた。


「「おお〜!」」


 暗殺者と狂戦士は歓喜の声を出し新しい紙を取り出すと熱心に筆を動かし始めた。

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