番外・鹿郡領、牛郡領領境線
鹿郡領の北砦から更に北、牛郡領の城塞都市から更に南の土地。
縦に一本の道と、横に十数個の石の塚が並ぶこの地が、鹿郡領と牛郡領を分ける領境線である。
横に並ぶ塚から、南が鹿郡領の土地、北が牛郡領の土地と決まりだが、昔は中心にある、小さい石の塚が一つあるだけだった。
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三十年程前。
ヴォルケが鹿郡領の領主となり、それまではっきりしていなかった牛郡領との領境線がやっと決まり、石塚が建てられて数ヶ月後。
北砦の兵が警備にやって来ると、石塚の位置が南に少しずれているのに気付いた。
動いた? 転がった? 兵士達は困惑しながらも石を全員で抱えて元の位置、……よりも少し北側に置いた。
次の日、石はまた南に移動していた。
兵士達は確信し、石の位置を戻して隠れていると、牛郡領の兵士達がやって来て石を抱えて運び始めたのを見て、鹿郡領の兵士達は飛び出した。
「コラー! 何動かしてんだー!」
牛郡領の、若い指揮官が驚く。
「げぇ鹿郡! いや、君らだって動かしたじゃ〜ん!」
「領境侵犯! 領境侵犯だぞ!」
「残念でした〜! ここはいま牛郡領です〜!」
その後殴り合いになったが、誰も剣を抜かなかったので死者は無かった。
……
「何それ? 子供かな?」
報告を聞いた鹿郡領主ヴォルケは、一応深刻なこの事件に、無駄と分かりながら牛郡領に遺憾の意と抗議し、それから領内にあるミスリル鉱山街に居る、西方王から鉱山管理に派遣されている代官に相談する。
「子供かよ……俺忙しいのに……」
これも仕事だと代官は、西方王に報告する。
「なんじゃそりゃ、子供か」
「お父様、これを軽く考えたらあかんよ。ちゃんと締めんと、竜郡と蛇郡のような争いの種になるで」
「う、う〜む……」
西方王は、ヴォルケが手を回した次の西方王、ベアトリス姫の口もあり、迅速に解決策を命じた。
「できた領境に不満のある者がおったのだろう。今回塚を動かした者は罰せぬが、もう動かせぬよう塚の数を増やす。重く大きい石塚を領線に沿って置き。それから石には、西方王の名を刻め」
……
こうして領境線の石塚は現在の形になり、西方王の名を刻まれた石を動かす者は居なくなった。
もし許可なく動かせば、それは西方王に逆らう事になる。
ちなみに石塚を動かした兵士達の指揮官だが……
「うん? あ! いえ〜い! ピースピース! みんな見てる〜?」
顔を腫らし、青痣を付け、こちらに手を振るこの若い男。
牛郡鉄槍三兄弟の長男、クリフとロメロの兄であり、のちの牛郡領領主、ウイリアムとロジャーの父親である。
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牛郡領主の名前ですが、どうせすぐ死ぬしええかw
と考えてませんでした。_……✍(:3」∠)_




