楽集新聞
「おはよう」
登校直後、わたしはいつものように双葉ちゃんに話しかけた。
双葉ちゃんは眺めていた紙から視線を外し、顔を上げて「おはよう雛」と短く返した。
サラサラの長い黒髪が流れていくさまはとても綺麗でつい感嘆してしまう。
「何か面白い記事あった?」
わたしはそう言いながら内容をのぞき込んだ。
双葉ちゃんは「別に」と言いつつ私が見やすいように紙の位置を少し横にずらしてくれた。
今わたしがのぞきこんでいるA3用紙の紙は『楽集新聞』と呼ばれる校内新聞だ。
校内新聞とは言っても、新聞部が独自に発行している非公式なもので、基本的には学園内のうわさ話やちょっとした事件を取り上げたりしている。
双葉ちゃんが言うには「八割は下らない内容」とのこと。
その割に毎朝欠かさず読んでいたりする。
ちなみに私はというと、そんなに嫌いじゃなかったりする。
校内新聞と言えば、生徒会が発行している公式な物あるけれど、あっちはお知らせや注意事項の喚起などあまり面白い内容とは言えない。
楽集新聞は確かにゴシップ記事が中心だけど、他の部との共同連載記事も会ったりするので、意外と一つ位は自分の興味のある話題が乗っていたりもして、双葉ちゃんが言うほどつまらない内容ではないと思う。
何よりも四コマ漫画があるのが大きい。あれがあるのとないのでは、新聞を読んでる感が全然違うのだ。
面白い面白くないは関係ない。一面記事の裏面に四コマ漫画が乗っていることこそが新聞の真の定義と言っても過言ではない!
こんなことを以前力説した事があるけれど、双葉ちゃんは困った顔をして「そう」とだけ返して理解はとても得られた様子ではなかった。
まぁ当然私は新聞なんて滅多に読まないんだけどね。
「また切り裂き魔出たんだー。というかまだ捕まってなかったんだー」
わたしは双葉ちゃんに肩を寄せながらザックリと興味のありそうな記事を探す。
「ふーん。一年に転入生? 鷺宮先輩またなんかしたのかな? えーっと――」
忙しなく私が記事を眺めていると双葉ちゃんは新聞を折りたたんで私に差し出した。
「読んでいいよ。私はもういいから」
わたしは折りたたまれた用紙を受け取ってお礼を言う。
自分でとろうかなとは思ってはいるけど、毎朝双葉ちゃんがこうして渡してくれるのでついつい先送りになってしまっている。
それに毎朝別々で読んでくるよりは、こうして肩を並べながら読む方がずっと楽しいだろうから。なんて。
「ぬへへへへ」
「? どうしたの?」
自分でも気持ち悪い笑みだなーと思っていると、双葉ちゃんは不思議そうな顔をしてたずねてきた。
「何でもない」と軽く誤魔化すとわたしは新聞を開いて記事を読み始めた。