第六話 空を自由に飛……べたらいいな
「ははははははっ! イィヤッホォーゥイッ!! どうだ、俺はやれば出来る子なんだっ!」
あれから、再び三十分程経っただろうか。
飛ぶコツを掴んだことにより、ナメクジクラスと言われた俺の飛行速度は格段に上昇した。
「どうだ、メイ! 俺すごくねっ!? もうゴキブリ未満とは言わせないぜぇっ!」
「――――うん。ハルヤ、凄い。凄いよハルヤ!」
あのメイが、叫んだ。
あのメイが、叫んだ。
あのメイが、叫んだ。
とても大事なことなので三回連続で言いました。
「もう、平均速度を越えてる。それも、自力で」
そう、俺は今メイに飛ばして貰っているのではない。俺自身の――所謂‘魔力’を使って飛んでいるのだ。
正確には魔力を消費して、魔法を使用しているのだが。
「……うん。これならきっと、すぐにわたしを越えられるよっ!」
「――――という夢を見たんだ」
「ハルヤ、可哀想。……頭が」
「うっさいわ! そもそも俺が夢の国に旅立ったのはお前が原因だろう!」
「……?」
何のこと? とでも言いたげな表情で首を傾げるメイ。
「何? お前なんでそんな疑問符を浮かべてんの? 何? 何なの? 本気でわかんねぇの?」
「ん」
頷 き や が っ た
「そうだな。お前、俺が気絶する前に、俺にしたことをいってみろ」
「何もしてない」
即答ですよ。ノータイムですよ。しれっと言うなよ。
こいつ認めないつもりか。……こっちは死ぬかと思ったのに……っ!
… … … … …
「ぬぐぅっ……」
「ふーれーふーれー、はーるーやー」
やる気にならないどころか、やる気が格段に暴落する声援を受けながら、飛行訓練を継続している俺とメイ。
正確に言えばメイは講師なんだが、ぶっちゃけ見ているだけ、どころか効率を落とす要因だったりしている。
というか、その踊りは何なの? チアリーディングのつもりなの? 呪いの踊りにしかみえねーよ! なんか色々なステータスがもりもり現象してる気さえする。
なんでこいつ教えるのが致命的に下手なの?
「うっおー! くっあー! っざっけんなぁーっ!」
「ハルヤ、ハルヤ。叫んでも速度に影響はないよ」
「やっかましい! ちなみに今の速度はどんくらいだ!?」
「ナメクジと勝負して、写真で確認してギリギリ勝てるくらい?」
「聞くなっ!」
くそっ。進歩などなかった……。
「あ」
ぽむっ、と手を叩くメイ。頭の上には、何故か電球が……?
「え、何その電球?」
「魔法で出した」
何で無駄なところに全力投球してんの? お前そんなキャラだったの?
「何かを思いついたらこうしろって、エリィが……」
「あの人が犯人か!」
くそ、あのマッドめ……。よくやった! 素晴らしい!
「まぁ、それはそれとして。何を思いついたんだ?」
「ハルヤは必死になる必用がない」
「会話のキャッチボールをしてくれ。そして、俺は今かなり必死だと思うんだがどうだろう」
「ん。じゃあもっと必死になれるようにする」
宣言と共に、パチン、と指をならす。
その動作によって、俺の置かれる状況は、ふわふわという‘浮遊’から――――
「んなっ……」
――――重力によって、地面へと引き寄せられる‘落下’へとシフトした。
「う、あ――――ぁぁぁあああああああああっ!?」
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。俺にできたことは、唯々叫び声を上げることだけだった。
徐々に速度を上げて迫りくる地面を見つめ、
「あああああああああああぁぁぁぁ……」
体中の空気を声へと変換したところで、俺の意識は深い闇へと落ちていった……。
… … … … …
以上、回想終わり。
……あれ? これショック死しててもおかしくなくね?
「嘘付けっ! 何もしてなくないよ!」
「嘘じゃない。強いて言うなら、ハルヤにしていたことをやめた」
「要するに?」
「魔法の効力を打ち切った」
「何かしてるよ! それ何かしてるよ!?」
「ん。正確に言えば、何もしなくなったが正しい」
「そんな言葉遊びはいいんだよっ! 死んだらどうする! むしろなんで生きてんだ俺っ!?」
真っ赤なトマトになってないことに驚きを隠せない。うん、生きてるって素晴らしい。何故生きているかは全然わからないけど。
「……ギリギリだった」
「ぎ、ギリギリ魔法を掛けなおしたのか……。助かったぜ……」
元々の原因はお前だけどな!
「ううん。こう、ぐにゃーっていうか、ぐちゃーっていうか……」
……え?
「ぇえ……? うぇぇぇえええええっ!? ちょ、おま、それマジなの!? ねぇ、マジなのっ!?」
待て待て待て待て! それ死んでたんじゃないの!?
「マジ。多分私がいなかったら……じょ、冗談だよ?」
俺の泣きそうな顔を見てから冗談だと訂正するメイ。
何でマジって言ったときは、俺の目を見て言った癖に、冗談って言うときは目線逸らすの? フォローとか誤魔化しとか言ったものがあもりにも下手過ぎるでしょう?
「そ、そうか。冗談か……。あまり心臓に悪い冗談はやめてくれないか? ホントお願いします」
「うん。ごめんなさい」
だがとても心優しい俺は騙されてあげましょう。……下手に追求すると俺の心がバッキバキどころかサラッサラにされそうだしね!
「それで、メイ先生」
「はい、何でしょうハルヤ君」
こいつもなんやかんやでノリがいい……のか?
「俺の飛行が一向に上達しない原因とかわかったりしますでしょうか……」
「うん。なんとなく」
「何!? 何が原因なの!? 教えてプリーズッ!!」
「ハルヤは、‘空を飛ぶ’っていうイメージがちゃんと出来ていないんだと思う」
「……そりゃ、今まで自分で空飛ぶ事なんてなかったからなぁ……」
正確には飛ばして貰ってるんだけど。ただ、自分の意思で移動する事は変わりない。
「どんなイメージで飛べばいいんだ?」
「んー……」
頬に指をあてて、小首を傾げながら数秒程唸る。
全然関係ないけど、その仕草が超可愛かった。
「飛んで。話はそれから」
酷 い 暴 論 を 見 た !
「いや。いやいやいやいやいや。待て待て待て待て。その理屈はおかしい。何がおかしいって何もかもがおかしい」
「なんで?」
「何でじゃないだろう。そもそも飛べないからコツを教えてくれって言ってんのに、飛ぶのがコツだって言われたもんだぞ?」
「んぅー……。でもそんな感じだから」
「そんなこと言われてもなぁ……」
「あっ」
ぽんっ、と手を叩くメイ。勿論、ピコン! という豆電球付き。
「なんだ、わかったのか?」
「うん。いい例えを思い付いた」
「ほう経験が生きたな」
「……ん?」
小首を傾げつつも胸を張るメイ。やばい超可愛い。
「で、例えって?」
「ハルヤは、自転車に乗るコツを教えてって言われて答えられる?」
「……いや、なんかあれは感覚的な感じがあるし、言葉には出来ないな。強いて言うなら乗れればわかるって感じか」
「でしょう? 飛ぶのもそんな感じだから」
「つまり、お前も最初は俺みたいに悪戦苦闘してたのか……」
「ん? ううん。わたしの場合は、歩く、走る、というのに飛ぶって感じだったから」
「………………えぇぇぇ」
流石異世界人、とでも言うべきか。俺とは全然感覚が違いすぎるぜ……。
「うん。歩くコツ、とか走るコツとか言われるよりは自転車のコツって言われるほうが感覚的にまだわかる気がする。偉いな、メイ」
「ん!」
表情は殆ど変わってないけどそこはかとなく赤みが増してる気がする。恥ずかしいのか、嬉しいのかはよくわからんけど。声が弾んでるからなんとなーく後者なんじゃないかなー、とは思うけど。
「………………」
「…………………………」
沈黙。
「………………………………」
「…………………………………………」
続く沈黙。
「…………………………………………なあ」
「……ん?」
堪えかねて声を掛ける。
「それ、何?」
何か変な姿勢をとってるメイ。具体的に言うと、微妙に前傾姿勢になって、頭頂部をこちらに向けている感じ。
「撫でて」
「え?」
「撫でて」
「……え?」
「……撫でて」
「…………え? ちょ、待て待て待て待て! ストップ落ち着け! 手を下ろせ!」
右手を銃の形にしてこちらへ向けるメイに慌てて待ったを掛ける。
誰だって自分の意思とは無関係に空を飛びたくはない。空を飛ぶ、というよりは宙に舞う、って言う方が正確な気がする。
「撫でて」
そして再び先ほどの撫でてポーズ。但し、両手の形は銃のそれ。しかも両手。いいか、両手だ。いつの間にか左手の方も準備万全になってやがる……。
「その、理由を聞いていいか?」
「ハルヤの為になることをした」
「だから、撫でて、と?」
「ん」
若干俯いた状態で、頷くメイ。
なでり、なでり。
恥ずかしさを覚えながらもメイの頭を撫でる。
いや、だって仕方ないって。これでスルーして飛ばされたくねーもん!
「――――――――っ!」
無表情なのにやたら嬉しそう、という器用な真似をしてのけるメイ。
「……なあ」
「ん?」
「これ、いつまでやればいいの?」
「も、もう少し……っ」
「はいはい」
慣れって怖いね! 何かもう普通に作業感覚で撫でれるようになりましたー!
なんかこう、子供を愛でてるような気分だっていうのもあるけど。
ちなみに、このもう少しは10分程続きました。
… … … … …
「そういえば全然関係ないけどさ」
「ん?」
「ここ、自転車ってあったんだな」
ちょっとした驚きの事実である。
「ん。必ずしも空を飛んだ方が効率がいいとは限らないから」
「例えばどんな時?」
「……すぐには思い付かない」
「そういうもんか」
「ん。そういうもん」
まぁ、どうしても知っときたい訳でもないので軽く流す。
「んじゃあ、気を取り直して練習といきますかっ!」
「ん。頑張って」
そして再び飛行訓練をする俺達なのであった。
……すいませんすいません。
忙しくて、小説を少しでも書くという習慣が徐々に徐々に薄れてしまって……。
で、出来るだけ早く更新するよう心掛けたいと思います。
話も全然進んでなくてすいません……。なんとかネタを捻り出していきます。
誤字脱字がありましたらご一報頂けたら幸いです。




