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薄幸の手紙  作者: zail
5/6

第五話 残酷で非常な現実

前回までのあらすじ。

I can fly!!

です。嘘です。飛べません。飛ばしてもらってます。

いや、でも移動自体は自分の意思の様な何かでできるそうなので、あながち嘘ではないかもしれません。

でも浮かしてもらってます。

あと、何か聞こえちゃいけない笑い声とか聞こえた気がするけど、別にそんなことはなかったぜ!


「どうよ!?」

「うん、動いてるけど……」

 飛行訓練を始めて30分程。

 ついに自分の意思で飛べるようになった。

 ふ、自分の才能ってやつが恐ろしいぜ……。

「ハルヤ。……すごく遅い」

 言うな! お願いします!

「……それじゃゴキブリにも勝てない」

 いや、それすばしっこい奴の代表格だろ!

 ……だってのに何だろうか、この切なさは……っ!

「……ナメクジには?」

「ギリギリ」

「そっか。ギリギリか……」

 ま、まぁいい。いや、全然よくないんだけど、とりあえず人間の尊厳は守られた。

「ん。勝てない。負けるよ」

 人間の尊厳を守れてなかった。

「俺はナメクジ未満の駄目人間だ……っ! 駄目……! 全く……っ! ナメクジにすら……! 勝てない……! 俺は……っ! くずっ! どうしようもない……、くず、くずっ、くずっ……!

「ハルヤ、大丈夫」

「ぐすっ……。何がだよ……?」

「貴方はわたしが護るから」

 ……あれ? これって俺がヒロインだったの? 性別的にコイツじゃないの?

 いやいやいや! それ以前に護るって何ですか!? 俺そんな危険な目に遭うのが前提な訳!?

「なぁ」

「ん?」

「ここって、よく危険な目にあったりする?」

「……余計なところに行かなければ大丈夫」

「……土地勘がない人間は?」

「よく死地へふらふら行く」

「……俺、危なくね?」

「うん」

「帰っていい?」

「わたしが護るから大丈夫」

 いや、だから俺はヒロインなんですか、と。

「いやいやいやいや、命の危険を言われるとですね、不安になるもんなんですよ?」

「わたしと一緒ならまず襲われないと思う?」

「聞くなよ。答えられないから。……根拠は?」

「わたし、強い」

 そう言って、ムン、とガッツポーズをする。

 ……やべっ、可愛い。

「お前が強いのはわかったけどさ。俺は弱いんだぞ?」

 えへへへ、何でこんな情けないことをカミングアウトしないといけないの? 何この罰ゲーム。俺なんか悪いことしましたか?

「大丈夫」

「いやいや。だからもっとちゃんとした根拠をだな」

「……わたしを襲おうとする存在が稀だから」

「お前が強いから?」

「ん。殺されるために襲ったりはしない筈?」

「だから聞くなよ」

 あとさらっと殺すとか言うな。怖いから。

「でもさ、お前がすんげー強いっていうのを、相手が知らないことだってあるかもしれないだろ? いや、無い筈がない」

「……そんなの、それこそ相手にならない」

 だから大丈夫、と続けるメイ。

「いやでも、もしもってことも――」

「ない」

 俺の言動を遮るように言うメイ。

 ……なんていうか、意外だ。あって長い時間が経ってる訳じゃないけど、こいつがそんな事をするような奴じゃないと思ってた。

「わたしの強さを感じることもできない存在に、わたしが後れを取るなんて――――有り得ない」

 すごい自信だな、おい。なんか気合い入ってる感じ。こいつでもそんなことするのか。

「ハルヤ」

「ん?」

「わたしのことをよく知らないから仕方ないかもしれないけれど――」

 そこで一旦言葉を切る。まるで、言葉に力を籠めるかのように。



「――――あまりわたしを莫迦にしないで」



「――――――――っ!」

 その言葉と共に、空気が凍りつく。

 同時に、俺の呼吸も止まった。いや、呼吸をしたくてもできない。そして酷く喉が渇く。

 自分の心臓を鷲掴みにされたような感覚。小説等でみて、何を大袈裟な、と思っていた自分を殴りたい。

 今この瞬間、俺の命は間違いなく、この天然の可愛らしい、しかし絶大な力をもった少女に握られている。

 この少女の存在が、冷たい視線が何よりも恐ろしい。

「わたしだって、怒る」

 や、ばい。やばいやばいやばいやばい死ぬ死ぬ死ぬしぬしぬシぬシヌしヌ――――――――っ!?

「――――はぁっ!」

 空気が弛緩する。

 そこでようやく息をすることができた。――息をするということを思い出した。

 はーっ、はーっ、と荒い呼吸を繰り返す。

 とにかく肺が酸素を欲していた。

 どうしようもなく理解した。言葉だけではわからなかったことを、この身体で理解した。

 こいつは、メイは紛れもなく、俺には理解の及ばないクラスの、正真正銘の化け物だと。

「はぁ。あー、死ぬかと……いや、死んだかと思った」

「あと10秒も続けてたらそうなったかも」

「ぅおいっ!」

 必殺斜め45度チョップ。主な用途はツッコミと壊れたテレビの修復。

「……痛い」

「そうか、よかったな。おめでとう」

 きょとん、とした顔をするメイ。

「怖く、ないの?」

「何がだよ。主語を入れなさい、主語を」

「わたし」

「何で?」

「だって、あんなことした……」

「……いやぁ、確かに正直な事を言えば殺されると思ったし、死んだと思った。怖くてたまらなかったよ」

「……うん」

 泣きそうな顔をしないでくれ、頼むから。罪悪感で死ぬ。

「でも俺の中でのお前は天然でボケボケのドジで、ついでにツンダラなかわいい女の子だ。もうそれで定着してる」

「か、か、可愛い…………」

 顔を真っ赤にして子供は何人くらい、とか言ってるけど、可愛いって言うのと好きだっていう恋愛感情は全くの別物だぞ。言わないけど。

「それに、そんなすげーやつが護ってくれるってんなら、絶対安心だろ?」

「――うんっ! 絶対護るっ!」

 ふへへへ、何で俺はこんな情けないことをカミングアウトせねばならんのだ……っ! 死にたい。あ、嘘ですごめんなさい。

 あんなのは二度と御免被る。

「任せた」

「ん、任された」

「それじゃあ練習続行と行きますか」

「うん、頑張って」

「任せろ! あと30分でもっと速く飛べるようになるぜ」

「ん」


… … …


30分後


「……ハルヤ」

「う、うるさい! 速くなっている! ほらっ!」

「さっきよりは、速いけど……」

「だろ!? そうだろっ!?」

「ナメクジに勝てないよ? 負けないけど」

「げふぅ……」

 確かに俺は飛行速度が上がっている。

 ナメクジに負けない速度から、ナメクジと同等の速度には。

 ……くそぅっ! 才能無いって言いたいなら言えばいいだろ!! ぐすん。

「ハルヤ、才能無いね」

 ……実際に言われてマジ泣きしそうになった。

 千里の道も一歩からなんだよ! 地道な一歩が長い道になるんだよ! 俺は一歩が小さいだけなんだよ!

「私も育て甲斐がある。すごく」

「……育てれんの? 俺」

「ん。とりあえず私よりは強く」

 聞きまして? 異世界最強クラスを超えなさいってよ? 正直無理ゲーにも程がある。

「……無理じゃね? 俺の親が英雄だとか、魔王だとかっていう設定すらないぜ? むしろ血筋レベルでみても設定のせの字もないぜ?」

「知ってる」

「何故だ!?」

「……恋する乙女、だから?」

「聞くなっ! 恋する乙女が何をしても許されると思うなよ!?」

「……大丈夫。貴方の前世が何であろうともわたしの気持ちは変わってない」

「俺の前世何だったの!?」

「……フジツボよりは、マシ? だと思う……?」

「言い淀んだ上疑問符が二度も着いただとっ!?」

 しかも比較対象がフジツボですよ、皆さんっ。

「一体俺の前世は何なんだっ!?」

「ハルヤ」

「ん?」

 ふぉおおおおっ、と頭を抱えている所に声がかけられた。

 ……おい、何だよその慈しみの視線は。

「知らない方がいいことも、あるよ……?」

「少なくとも碌なもんじゃ無いことだけはよくわかったよ、コンチクショウ!」

「そんな事よりも、練習しよう」

「そんな事!?」

「……?」

 メイはなんの事だかわからない、といった風に小首を傾げる。

 か、可愛い……? い、いや落ち着け。俺は今前世をそんな事扱いされたことに異議を申し立ててこんな反応をされているんだ。

 ……え? つまり素で何言ってんのこいつ状態なの?

「……変に肯定を返されるより傷付くぞ、それ」

「でも、今は今。わたし、今のハルヤが好きだから」

「ほぁああうっ!?」

 何これ、何だこれ、何なんだこれっ!? 色々とストレート過ぎる!

 ……メイ、恐ろしい子……っ!

 正直天然の破壊力が怖いです。これ俺生きて帰れるの? 悶死しそうなんだけど。

「勿論、過去のハルヤも大好き」

「う……え、あの……」

「――例え、前世がアレだったとしても、私の気持ちは変わらない……!」

「ねぇ! ホント何なの!? 俺の前世そんな酷いのっ!? ねぇ、マジで何なの!?」

「――――ハルヤ」

「……な、何だよ」

 慈しみの表情を浮かべるメイ。何ていうか、その……とても幻想的で、神々しさすら感じた。

 これで魔王の姪だっていうんだから、世の中間違っていると、どこか場違いなことすら考えてしまった程である。

「私は、ハルヤの哀しむ姿が見たくない」

 幻想的とか神々しさとか気のせいにも程があった。

 くそぅ、こんなのに持つ印象じゃねぇ。……ホントどうかしてた。

「……その科白が何よりも俺の心を抉り取っていったよ……」

 べ、別に泣いてねぇからっ。頬を伝うこれは……そう、自愛の心だから! 誤字にあらず。

「――――ハルヤ」

「何だ。もう騙されんぞ」

「ん? よくわからないけど、練習しよう?」

「へへへ、どうせ俺はナメクジとどっこいどっこいですよー……」

「ハルヤなら大丈夫。きっとすぐにゴキブリを追い抜ける」

「……何だろう。普通に嬉しくない」

 もっとこう、比較対象はどうにかならないの?

「わたし、ハルヤと一緒に飛びたい。ハルヤと空のお散歩したい」

「………………」

 だから、ストレート過ぎるって。眩し過ぎるでしょう?

 ここで頑張らなきゃ、男じゃないよな!

「まっかせとけ!」

「……っ! うんっ!」

すっっっっっごい時間がかかりました。すいません、ほんとすいません。年レベルで空いてしまいました。

忙しいから、落ち着くまでは様子見で、とか思っているうちにずるずると時間だけが過ぎていく……。

今後こうならないよう、ちょくちょく時間を見つけて少しずつでも書いていきたいと思います……。いけたらいいなぁ……。

誤字脱字などありましたらご一報お願い致します。

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