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薄幸の手紙  作者: zail
1/6

第一話 “現界”と“幻界”

「んぅ…………」

 意識が急浮上する。

 ……眠りから覚めるときはそんなもんなんだが。

 しかし、嫌な夢を見た。ああいうのを悪夢と言うんだろう。むしろ、言え。

 言わないなんてことは俺が認めん。

 はっきりとこれ以上無いくらい鮮明に覚えてる分だけ性質が悪い。

 どうせなら良い夢を見たときに覚えててくれ。そんなときに限って忘れてる気しかしない。

 朝っぱらから胸糞悪い気分になるもんだ……。

 とりあえず、起床の意思に逆らわず目を開ける。

「――知らない天井だ」

 ……いやいやいやいやいや。やってる場合じゃない。何処だここは。

 驚いて体を起こす。

 俺の部屋はそもそもこんなに広くない。ワンルーム舐めんな。

 何だってこんな広いのか。とはいっても、豪邸などではなく一般家庭よりやや大きいくらいだ。

 ……でも何故か今俺が寝ているベッドは無駄にでかい。ダブルか? 寝心地が良いから俺としては構わん。むしろ大歓迎だ。

「と。これらを統合するに……これも夢か。よし、寝よう。こんな良いベッドで寝れる機会なんてきっともう無いだろうしな……。おやすみー」

 さぁ、現実の世界へレッツゴー。すぐに目を覚ますとも限らんが。

 ばふっ、と再びベッドに倒れこみ目を閉じる。

「起きた?」

 その瞬間、がちゃりと音を立てて誰かが入ってきた――ような気がする。声をかけられた気もするが気のせいだ。

 ……認めん! 俺は認めんぞ!! 何か微妙――どころかバリバリ心当たりがある声だがきっと気のせいだ、幻聴だ、幻覚だ!! 目は開けてないからわからない。怖くて開けられない。

 よし、満場一致で我が脳内裁判は気のせいという判決を出した。

 今すべきことは、一刻も早く寝るこ――。

「起きる」

ドシィッ!

「づあぁっ!!?」

 額に衝撃。質が良いベッドだからか、頭がバウンドする。

 流石に寝ていることもできず目を開ける。

「起きた」

 目の前にはしかしというべきか、やはりというべきか自称魔王の姪が居た。

「……やっぱ夢か」

 今度こそ寝――――

「起きてない。……ん、もっと強く」

「待て待て待て待て!! 起きた! 起きたから待ってください、お願いします!!」

「……ん」

 どうやら、夢ではないらしい……。

 畜生。何かもう畜生。兎に角もう畜生。

 ああ、つまり何が言いたいかっていうと――

「――――神は死んだ……」

「神族?」

 何だ、そのファンタジー丸出しな種族。

「そんなもんがいるのか。差しずめ、お前魔族ってところか?」

「ん。よくわかった」

「おい、その伸ばした手は何だ?」

「撫で撫で」

「いらん」

「撫で撫で」

「いらん」

「撫で撫――」

「いらねぇっつってんだろ!!」

「――む」

「落ち着け。まず落ち着け。何だその手は」

「デコピン」

 簡潔な答えありがとう。ちっとも嬉しくないが。

「わかった。先に説明を頼む。そしたら撫で撫でさせてやることを考えんでもない」

「駄目」

「……何でだ?」

「考えるじゃ駄目。ちゃんと撫で撫で」

 ……畜生、天然っぽいからこれで何とかなると思ったのに……。

「……わかった。ちゃんと撫で撫でさせてやるから説明してくれ」

「ん。…………でも何を?」

「――そうだな。質問していくからそれに答えてくれ」

「ん」

「まず一つ目。ここは何処だ?」

「わたしの家」

 こいつやっぱ天然か。

「そんなんでわかるか。ここはやっぱり異世界なのか、と聞きたいんだ」

「うん。あなたの居た世界とは違う」

 うわぁーい、いきなり嫌な現実ありがとう。

「この世界の名前は?」

「名前?」

 それから、うーんうーん言って、手を顎にやったり頭にやったり。

 おい、まさかわかんないってか?

「わからない」

 マジでか。マジでわからないのか。

「いや、それはおかしいだろ。何で自分の世界の名前がわからないんだよ」

「おかしくない」

「いや、でも」

「――そういう貴方はわかるの?」 

「――――――――――」

 言われてみれば、わからない。

「確かにわからない。考えたことも無かった」

「それはわたしたちも同じ」

「世界を移動できる世界だからてっきり名前があるもんだと思ったけどな」

「そんなことはない。けど――」

「けど?」

「区別をつけるための言葉はある」

「それは何だよ?」

うつつと書いて“現界”」

「それはどっちだ?」

「そっち。こっちは幻と書いて“幻界”」

「……何で、こっちの世界が幻の方なんだ? 普通こっちの人間ならこっちが現実で、向こうが幻想と思うのが自然じゃないのか?」 

「そっちから見ればこの世界は幻想だらけ」

「ああ、その程度の認識なのか」

「ん。わかり易さは大事」

「つまり、こっちを現の方にすると、確かにこっちからすれば現実だけど、向こうにあるものも殆ど現実にあって、しかも向こうの世界を認識してる。それが常識だから、向こうが幻想とか言っちまうと現実だとわかってるのに幻想と言わんとならんからややこしい、と。――自分で言っててなんか訳わかんねぇ……」

「…………うん、大体そんな感じ」

 こいつもよくわかってないな……。いや、あんなので少でもしわかった時点で十分凄いが。

「こういうのだと、科学が全然発達してないのがセオリーっぽいんだけどその辺どうなんだ?」

「そんなことはない。ちゃんと科学もある」

「俺たちの世界並みにか?」

「ううん。そこまでは発達してないと思う」

「……思う?」

「ん」

「いや、まぁ確かに自分の世界の最新技術がどの程度のものかわかんないけどさ。こういう時は断言してくれよ。なんというか、説明する側の義務だろ」

 いや、そもそも説明役として絶望的なまでに適してないんだけど。言葉が圧倒的に少ないし。

「気にしない」

「んじゃ、あの高層ビルが乱立してるところとかもあるのか?」

「ない」

「……明らかに技術力が劣ってるじゃねぇか」

「……問題ない」

「問題しかないっ!!」

 何て、疲れるヤツだ……。恐るべきは天然か……!

「お前、説明役向いてないわ……」

「わたし、頑張る」

 大いに頑張ってくれ。俺の為に。

「とりあえずガス、水道、電気は通ってることでいいのか?」

「ん、いい」

 普通に生活していくことは可能である、と。……ファンタジーなのかいまいちわからんな。

「次だ。――なぜ俺を連れてきた?」

「……一緒に居たかった」

「あの時に言っていた一目惚れってやつか?」

「うん」

 いや、真顔で言うことか?

「そこは少し照れたりするところじゃないか?」

「……うん」

 顔を微妙にそらして上目遣いで言うな。無表情なのは変わってないからむしろ不気味だ。

「俺の向こうでの生活を考えてのことだろうな?」

「……え?」

 きょとんとするな、きょとんと。

「向こうには、家族も居れば友達も居る。学校だってあった。それなのに突然俺が消えたらどうなる? 何より俺達の関係を自分の我侭で引き裂いたことを、きちんと考えていたのか?」

 恋人? いねぇよ、悪いか。

 おい、何だその冷や汗は。もしかすると、もしかしちまうのか?

「…………考えてなかった」

 うぉい! もしかしたよコンチクショウ!

 ――いや、ふざけてる場合じゃない。

「ふざけるな! そんな考えも無しに俺をこっちに連れてきたってのか!!? なんだよ、それ……! ああ、もうふざけるなしか浮かんでこない!! くそ、もう俺はあいつらに会えないのかよ!! ホント、ふざけんな…………っ! どうなんだよ、おいっ!!」

「何言ってるの?」

 こんな時にもきょとんか……。――何処までもふざけやがって……!!

「こ、のぉ――――!」

 ……駄目だ、これ以上続けていたら抑えていられる自身が無い。

「――――っ! もう、いい。最後だ。俺は、向こうに帰れるのか?」

「うん」

 ――は、そうだよな。帰れるわけが無い。聞く俺が馬鹿だっ――

「――うん? わんもあぷりーず」

「うん」

「――は? それは、帰れるってことなのか?」

「……それ以外に何かあるの?」

 つーことは、アレか。俺は凄い恥ずかしいことをしていたんじゃなかろーか。

「うわっ、恥ずっ! 俺恥ずっ!? すげーみっともねぇ!!」

「……うん、見ていて凄く恥ずかしかった」

「ぐぁっ! 頼む、それは言わないでくれ!!」

「こっちに来る時のこと、忘れたの?」

 ……そういえばかなりあっさり移動してた気がする。

「というか、わたしそっちにいった」

 ……それ以前の問題だった。確かに俺を連れてくる為に、こっちの方に来ていた。何故それがもう出来ない事などと思い込んでしまったのか。

 ……うん、だって世界移動なんてもんが、ホイホイ出来るなんて思わないだろ? 普通。

「それって、誰でもホイホイ世界を移動することが出来るのか?」

「ううん。極一部だけ。世界規模だけど」

 世界人口で見た中の極一部か。……世界人口がわからんもんだから判断し辛いが、相当少なくはあるんだろう。

「強いヤツってことか?」

「うん。わたし、実は凄く強い」

 えっへん、と胸を張る。――目のやり場に困るのでやめてください、ホント。

「というか、最強クラス」

「マジか!!?」

「うん、マジ。他に、固有能力でできるのもいる」

 能力……。何てファンタジー。

「それにしても……ぷ」

「おい、何で笑った? 何で今笑った!?」

「さっきの思い出して。……ぷふっ」

「うがぁぁぁああああっ!!!」

 何か言い返したい! こんな原稿用紙一行分も碌に喋らんヤツに言い負かされるなんて!! 例え、自爆だとしても認め難いっ!! が、言い返したところで負けるのは目に見えている。

 そこで俺の取った行動は――

「ま、まぁそれは置いといて。自体が飲み込めたところで、これからのことを決めようぜ」

 逃げだった。悪いか。三十六計逃げるに如かず、だ。

連載にしてみました。掲載は不定期なものになるかと思われます。ネタが浮かび次第執筆、掲載という形をとっていこうかと。

HPの方で別の長編を置いています。よろしければそちらもどうぞ。

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