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通知表だけを信用してはいけない

 吉報がありました。小学生くらいのお子さんがいる方は実験してみてね。

 日本を消した白地図を子どもに渡して、日本列島と赤道を書き足してもらいます。とっても愉快な世界地図が完成します。


 まず簡単そうな赤道から。フィリピン貫通コースが人気です。そこを通せば良い感じで北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を区切れるんです。

 現実の赤道が通るのはどこもかしこも中途半端なところだもんねえ……。


 そして肝心の日本。太平洋上にあるだけマシです。

 海の真ん中を攻めすぎてハワイが日帰り旅行先になるのはお約束。


 日本を大陸レベルに拡大してくれる子もいます。

 ベーリング海に北海道が出現し、本州が北太平洋を埋め尽くします。赤道直下フィリピンは九州の一部になりました。30億人は暮らせそうなジャイアント・ジャポンの誕生です。


 そんな彼らも、日本が太平洋に浮かんでいることを理解しているわけではないようです。

 我々がよく目にする地図は日付変更線が中央あるタイプですが、ヨーロッパで使われる本初子午線を中央にしたものにすると日本が自由徘徊し始めます。


 大西洋に進出は鉄板です。朝に見た天気予報が副作用を起こし、フロリダ半島が朝鮮半島になりました。インドを樺太にするケースも見られます。

 それでも海に浮かんでいればまだよくて、ユーラシア大陸に鎮座していることもある。

 とにかく子どもたちは地図の中央付近に居座りたい。日本が「極東」と呼ばれる所以を真っ向から否定しまくります。


 極めつけは、南半球が上にくる地図です。オーストラリアが中央にくるような、普段見慣れた世界地図を上下ひっくり返したタイプ。

 こちらになると日本が融合国家に変貌します。


 マダガスカルに北海道・四国・九州らしきものを書き加える子が登場します。

 ニュージーランドに北海道・四国らしきものを書き加える派との対立が起こります。

 とにかく日本が画面の上半分に位置していないと気が済まないらしい。

 辛うじて北半球にたどり着いても、今度はアメリカ西海岸に攻め込みました。


 正しい位置に書かれたら逆につまらないほどですが、そこは発想力豊かな子どもたち。場所は合っていても大人の期待を裏切りません。

 世界はひっくり返ってるのに、北海道が常夏でもなんくるないさー。

 地図の上が北ではないのです。北極のある方向が北なのです。


 自分の住む国ですらこの有り様です。外国の位置となると大混乱。

 さすがにすぐ隣の中国は分かるようですが、同じくらい大勢住んでるインドは難易度が高いみたい。バスコ・ダ・ガマはいずこへ……。


 これはとある学習塾の、地元の小学校から中学校へ進学予定、ごく平均的な新中学一年生の授業風景であります。ほとんど毎年こんな調子でした。

 さてさて、彼らの小学校の成績はどのくらいだったでしょう。シンキングスタート!



 答えは30人学級なら10〜20番目の子どもたちです。テストの点数も通知表も一見ヤバくない子どもたちです。

 10番以内ですと小学生の内から公文やら塾やら行っていますというパターンだったりしますので、実質、学校だけで勉強をまかなっていた子どもたちの上位半分ということになりますね。


 うちの子、塾も通信教育もやってないけど授業はついていってるからイケてるわーと安心している方がいたら、そんな場合じゃないかもしれません。イケてるどころか終了のゴングが鳴り始めていたりして。


 日本の場所すら知らないなんて、よっぽど頭悪いのではと疑った人は子どもたちに謝ろう。

 入学式前の春休みを使って世界地図を叩き込むとあら不思議。ほとんどの子が100ヶ国近くの国名と場所を正確に暗記します。数え歌的なものを使って覚えます。

 どうにも苦手な子ですら、50ヶ国は余裕です。それだけ知っていればかなりのアドバンテージを持って新学期を迎えられます。


 名前の響きが面白いのか、モーリタニアとホンジュラスが人気です。お父さん、お母さん、モーリタニアとホンジュラスの場所、聞かれたら答えられますか?


 最後の授業で白紙を渡し、白地図そのものを書かせます。五大陸+日本列島のザックリした輪郭線であれば、良い感じの配置とサイズですごくそれっぽい世界地図を書いてくれます。

 赤道も正しく走ってる!

 ジャイアント・ジャポンなんてどこにもないよ!

 子どもたちはユーモアと引き換えに一般常識を獲得しました!


 ま、最終的にはこの白地図さえ書ければ新中学一年生としては合格点なんですけどね。

 輪郭線が頭に入っていれば、例えば理科でウェゲナーやプレートテクトニクスのことを習った時、わざわざ世界地図を開かなくても頭の中にポワンと浮かべるだけで済むのです。

 細かな国名や場所まで教えるのは、国境線を意識するため、とでもしておきましょうか。国境線が山や川で区切られているのと、経緯線で区切られているのとでは、その国の成り立ちや背景がまるで異なりますので、歴史を理解する助けになるわけです。これは島国育ちだとなかなか得られない感覚です。


 教科の中では地味度の高い地理だけど結構役に立つのです。

 東京五輪が控えていますが、たまたま出くわした観光客がモーリタニア人かもしれないよ!

 間違いなくその人は「どうせ日本人は俺たちの国の場所すら知らないんだろうな……」と思っているだろうが「モーリタニアはここにあるんだろ?」とドヤれるよ!


 しかし現実は、日本列島の場所すらあやふやな子が多すぎるわけでして……。


 小学校は担任一人で全科目教えますから、たまたま社会科が不得手な先生に当たっただけかもしれない。

 しかし春休みだけでここまで化ける子どもたちに、六年かけても列島の正しい位置すら教えられない先生って一体何してきたんだろう。

 教えたけど覚えなかったのではなく、そもそも教えていないか教え方がヤバいとしか考えられません。この様子だと、47都道府県の場所はおろか、県名も適切に教えているか怪しいよねー。


 ちょっとうちの子ヤバいかも、と思った方は今すぐ通知表を確認しましょう。真の学力が正しく反映されているとは限りません。



※ジャイアント・ジャポンを生み出した男の子から久々に連絡を貰いました。

 今春、東大に現役合格したそうです。おめでとう! 子どもの可能性が一番ジャイアントだね!

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