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なんということでしょうー

 扉の先には木製の質素な机と椅子があり、その上にはいくつかの書類がきれいに整頓され机の右上に何枚か重ねて置かれていた。机の背後には簡素ながら窓ガラスがありそして本棚が壁にそっていくつか配置されており、部屋の中心には来客用なのか楕円形のガラス製のテーブルにその左右に二つずつ置かれていた。そのテーブルの向こう側にさらに木製の扉が一つ、おそらくあそこから出ることが出来るのだろう。うん、執務室だね。いままでのが強烈すぎて反応に困るけど、これは普通の執務室だ。拍子抜けしたが大きな前進だ。えらいぞ、俺。ゆっくりと机へと向かい再度外の様子を恐る恐る確認してみる。

 やはり先ほどと同じくここからの景色も緑ばかりだ。あと木の幹とか、ってんん!?

外の様子を確認しながらある事に気がついた。自分の容姿だ。ガラスに反射した自分の姿に違和感を覚える。まず頭、今朝、家を出たときよりも数㎝ほど髪が伸びている詳しく言えば額が見えていたくらいに切っていた髪がいまは目元を少し隠すぐらいまで伸び、髪の色が少し変化していた。黒髪なのだがなんだか黒に磨きが掛かっているというか、黒色が深みを増しているというかまあそんな感じである。

顔については変化無し。目を疑うのは首から下、服装である。俺は高校指定の制服を着ていたはずである。なのにいまは首元からボタンの一番下、さらにすそにまでフリルのレースが付いた白いブラウスに丈が長い黒のスラックスを着用していた。むしろなぜいままで着ている物に気がつかなかったのか。驚きすぎて手元が見えていなかった、そういうことにしておこう。



 ここまで調べてようやく頭が冷静に物事を考え出したようだ。要点を整理してみよう。

一つ 今朝俺は事故で死んだ

一つ 気がついたらまったくわからない未開の地にいた

一つ 俺の記憶する容姿が異なっている


これらをふまえて考えるにこの現象は

「異世界転生したのか、俺?」

この世界にきて初めての台詞である。

そういえば、以前異世界転生ものの小説も読んだっけな、あれによく似てるな色々と

突然の死、まったく異なる世界、容姿はたまに変化する、主に性別が。


そうか転生したのか、そうか転生か。

ようやく結論に達し気分を落ち着けるために深呼吸する、一度二度そして三度そして

「俺の時代キタコレーーーーーーーーーーーーーー!!」

絶叫にも近い大声を腹の底からひねり出す。

やったぜ、ついにきたぜ。リアルファンタジー!

思えば苦節18年いいことはなかった。友達ができず、両親は蒸発、そしてパシリとしての人生・・・・・うん忘れよう金輪際必要ないわ。汚物は滅却処分だー!あっちの生活は不向きだった、だからこっちで思う存分力を発揮しろと、謳歌しろと。ふっふっふ、勿論ですとも神様!!今日から神を崇めます、むしろ嘗め回します。そういえば、次の人生考えてるときなんかぼそぼそ言ってたな、日本語以外聞き取れないから無視してたけどもしかしてあれが神様だったりするのか、ちっくしょー、一目だけでも見てれば色々融通してもらえたかもしれないというのに残念。異世界転生ものは大抵が神様からチート的な能力をもらっているのを俺は知っている。よって俺も何かもらえているはず!もらった記憶はないのも神様からの試練なのかもしれん。自分で見つけてその努力を怠るなという思し召しか?やってやろうじゃねえか、全てを思い通りにできるほどの魔力か、それとも見るだけで相手を破滅させる魔眼的な?いやいや世界最強の剣術が使えるようになるとかかもしれん。くぅー妄想が加速するぜぇー


『・・・・・・・・ぃ』


普通なら赤ちゃんからの転生だったり、実年齢でそのへんの道路に出現するパターンもあるなか、俺はちゃんとした家柄の出に転生できたようだな。このアドバンテージを生かせればだいぶ有利になるな。まずは地名国名人物名流通通貨の確認それから近くの街に行ってギルドで冒険者登録そこで偉業を打ちたて一目置かれる存在そして数々の強敵相手に無双していくチート能力の俺。完璧だ、完璧すぎて震えてきちまう、今回は武者震いだからな?あぁーでも気になるな、今のパラメータ的なものはどうなっているんだろ、あそうだこういうときはあれだな。こっ恥ずかしいが仕方ない。だが恥ずかしいがる場面ではない、なぜならここは日本ではないから馬鹿にするやつはいない。むしろ堂々としていればいいだって異世界だもん。日常茶飯事だろ、おっしゃいくぜ。


「ステータスオープン!!」


これまた絶叫に近い大声で叫んだ。だって定番でしょ。自分で確認できるの

俺は片手を胸の前に突き出すポーズを維持しながらステータスをドヤ顔で待つ、が何も起きない。

無音の空間が俺の顔面を赤く変化させていく。な、なぜだなぜ何も起こらない。もしかして言い方か

咳払いをし

「ステータスっ!オプン!!」

変化無し

「ステータスオープンっっっ!!」

変化無し

「ステータス出ろ!!」

変化無し

「ステーーーーーータス!かもん!」

「かもん、ステータス!」

「出てお願い!」


三十分後

はぁ、はぁ

さすがにレパートリー尽きた。

一向に出る気配がないぞ、どうなってんだよ。もしや備わっていないのか?まじかみつるショック。

まあステータスが全てではない。成長具合は自らで体感して味わうものだ。数値にして見るもんじゃない。


『おーい、そろそろ聞こえないかなー?』


俺が息を整えているとどこからか声が聞こえてきた。

うるさいな、いま秘められた力調べてるんだから黙っとけ。


『いやぁ、そろそろこちらにも説明してほしいんだけどな』

ああん?説明だぁー?そんなもんこっちがしてほしいぐらいだわ。

・・・・・・・・ってかいま俺誰と喋ってんの?

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