気がついたらセカンドライフ
そんなわけでトラック二台によるツープラトン攻撃によりあっけなく死んでしまった俺こと城ヶ崎美鶴である。死んでしまったのだから仕方ないポジティブに行こう。そうだなあ、次は何に生まれ変わるか考えよう。というか生まれ変われるのだろうか。
《生体認証確認》
生まれ変わるならやっぱり人間がいいよねー、いや待てよ地球上には数十億の生物がいるわけでその中の一種類の人間に生まれ変わるのって無理ゲーじゃないか。うわー早くも詰んだ。てかよく前は引き当てれたなそっちのほうに驚きだわ。
《固体名城ヶ先美鶴、本人と断定。これより肉体の再構築に移ります》
そうだなあ、せめて肉食系アニマルがいいなぁ、でも動物園なんかで一生飼い殺しってパターンもあるし魚だって食べられたり釣られたり食べられたり、虫はうーんすぐ死にそうだなー
どれも一長一短メリットの反面デメリットがでかすぎるよな。やっぱり人間がいいよなー
まあ、普通は皆人間に生まれ変わりたいよな。倍率が高くなるわけだよ、うん。
《肉体損傷率67%・・・失敗。精神負荷率24%と断定。これより35条第3項により城ヶ先美鶴の肉体を現時点を持って破棄。魂のみの再結合を最優先事項と認識。召還 申請受理にあたって本人の声帯認証の必要性あり。》
うーん、おっいいこと考えたぞ。何も地球に固執することないじゃないか。宇宙は広いんだからもしかしたら住みやすい星みたいなのがあるかもしれんぞ!オラわくわくしてきたああ。例えば図書館で借りた王道ファンタジー物の世界とかいいじゃん。ていうか中学の時あんなにいじめられたにも関わらず、まだファンタジー好きってどうなんだろ、マゾ?いやいや良い作品とは常にジャンル問わずいいものなのだ。
そうに違いない。うん、きっとそうだ。よし話を戻して王道物だとまず勇者と呼ばれる人間になれるパターンだな。突然の勇者覚醒、数々の強敵、そしてヒロイン助けてムハムハハーレム人生。憧れるなあ、でもこういっちゃなんだが俺、勇者向きじゃないしなー。たぶん注目とか浴びたら恥ずかしすぎて失神する自信あるわ。ないな、勇者はない。
市民に生まれ変わってもどうせいまと変わらないような暮らしのような気がする。いやもしや悪化する可能性を捨てきれない、かといって兵士は無理、肉体労働向いてないし死にたくない。最近読んだ魔物としての人生を歩むパターンもあるな。いやいや一番ないな、だって都会っ子だもん、無理無理ミネラルじゃない水飲めない。焼けたおいしいお肉以外胃が受け付けないわ。自然界まじやばそーだし十秒で淘汰される自信ある。となれば答えは一つそれは、王子だ。一国の主の子供とかに生まれ変わることが出来れば自堕落の生活を謳歌できるんじゃね?先代が作った国を適当に他のやつに任せて自分は隠居生活、たまに国民にチラ見せしとけばいい仕事だろ?めっちゃいいじゃん職業王子。ん、職業に王子なんて書くやついるのか?そもそ人間のさらに頂点にいるような人間に生まれ変わるなんて絶望的な確立のような・・・・・
だめだ、考えすぎて自分の思考がよくわからん。末期だな。もう死んでいるんですけどね。
まあ、もうなんでもいいや、どうせいまの意識は消えるんだし生まれ変わったらそれとなくうまく生活できるだろう。任せたぞ未来の俺!過去の俺からのアドバイスだ、第一印象大事だ、これさえうまくいけばなんとかなるぞー、願わくばぐだぐだしながら生活できるような職業にしてください。れっつ王様、ビバ王子。
《確認。対象、王族、検索開始。検索結果0件規約により魂の滅却を・・・・・・・・・ザザッ不正アクセス確認。結果算出適合一件あり。承認認可承認了承否認可決受諾。これより魂の再結合を行います。》
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ふと目が覚めた。正直驚きは隠せない。もう二度と目が覚めることはないと感じていたからだ。俺はあの日世にも珍しい出来事に遭遇した。トラック二台による左右同時攻撃だ。それのせいで上半身と下半身が離婚した。てか普通に死んだ。しかしいま普通に目が覚めたのだ。考えられる事案は一つ先ほどまでの出来事は全て夢だったのだ。よくある話だ。
夢とは本来寝ている間に起きる現実とは乖離した一連の観念や心像のことつまりは幻覚である。確かに夢ならばつじつまが合う。朝なのに人はおろか車すら通らない道やいきなり現れたトラック二台も夢すべては俺自身が作り出した空想だったのである。安心した、心底ほっとした。まさか自分が死ぬ夢を見るとはどんだけ嫌な思い出しかないんだよ高校生活。まあいい全ては夢だ。いまの時間は分からないがまだ間に合うだろう。とりあえず外の空気でも吸うか。
妙に馬鹿でかいベッドからのらりくらりと這いながら部屋の右側に設置されたバルコニーへと向かう。このどんよりとした、ボーとした頭も外の空気を吸えばシャキとするだろう。だって今日が終われば大学生なのだから!
ベランダのロックを外し勢いよく開け外へ飛び出す。朝特有の冷え切った空気、くぅーしみるぜ。そして周りには数十mはある大木からの新鮮なO2、こんなにうまい空気は初めてだ。そして空を見上げれば飛来している謎の怪鳥が縄張り争いをしているのか先ほどからギャーギャーと耳底に響くような嫌な音色を醸し出している。うんうん、これこそ日本の朝の光景だな。ひとしきり朝のひと時を過ごした俺はゆっくりとバルコニーから寝室へと戻り再びキングサイズはあるであろうベッドへともぐる。よく見ると天幕もついているようだ。
よっしゃ。
ここどこだ?
一連の行動を思い返しながら身体の震えを両腕で抑えようとするが本能がそれを許さない。
え、なにここどこ。第一にこんなあほみたいにでかいベッドうちの家賃7万5千1Kのアパートに入るわけがない。まずバルコニーなんてもの初めて見た、あういうのって映画やドラマだけじゃないの?そして外の景色である。本来のうちであればすぐに車の音が聞こえるほど車道に近いのだ。なのに見渡す限り木、樹、木木、木木木、森じゃん。極めつけが上空を飛来していたあの鳥である。はたしてあれは鳥なのか?あんなジャンボジェットみたいな鳥が日本にいるわけない。状況が状況なだけに理解が追いつかない。常識で考えれば考えるほど分けが分からない。いまならびっくり人間コンテストで頭から湯気を出す自信はある。しかしいくら考えても答えはわからない。どうする、いまの俺には三つの選択肢がある。
1とりあえず、情報収集この部屋から出てみる。
いま足りないのは情報である。いまの意味不明な状況を打開するために勇気を出し、あの目の前の扉を開けるのだ。ファイト俺。
2誰かが様子を見に来るのを待つ。
こんな豪華な部屋だ。おそらく身分はそれなりい高い。起床時間に起きなければ誰かが様子を見に来るだろう。そしてきた人物に説明を求める。切り出しはこうだ。ーすいませんが、ここにいた人物と入れ替わったもしくは誘拐されてここに閉じ込められました助けてください。これで疑わない人物はまずいないだろう。
3諦める、現実は無常である。
諦めて、現実逃避。
個人的にはすごく三番を選びたい、そして即実行したい、が状況は変わることは永遠にないだろう。そして二番間違いなく疑わないだろう。俺が元々ここにいた人物に対して何かしらの行動をしでかしたということに。言い訳しようにも俺にもさっぱりだ。最悪逮捕住居侵入罪禁固刑さらには終身刑もありうる。
と、なると一番はまあ当然だろうな。誰かがここに来る前に脱出そして情報を得るために周囲の探索。これがいま俺に出来る最優の選択だろう。未だに震えの止まらない身体にムチをいれベッドから出る。未知の世界がこんなにも恐ろしいとは。ここを開けたらどうなるのだろう、分からない。が現状を打開するには仕方ない。ゆっくりドアノブに手をかける。ドアノブ特有のひんやりとした感触がいっそう体を強張らせる。ええい、ままよ南無三!心と体は反比例していた。心の掛け声とは裏腹にゆっくりとドアを開けながら周囲を確認する。