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神と彼の奇妙な物語

昔、彼が神と言われる者に出会ったのはまだ9歳になって間もない頃の事だった。


彼はその日にいろんな事を体験しすぎたのだ。


幼きころからの良き友の裏切り、周りの大人の金と生への執着、親との隔絶、そしてそれらの後に彼が慕っていた者の生を目の前で止められたのだ。


神と名乗る者に。


これ等の自称は彼に絶大な影響を与えた。今まで繋ぎ止めていたものがたった数時間足らずでなくなってしまう物だったのだ。その程度の物でしか無かったのだ。人と人との関係なんて。一日過ぎたら忘れる事もあれば何年経っても恨みを抱えていたりすることもある。そんなものだったのかこの世の中なんてと・・・・。


神は肉塊から剣を抜き、血を払い、少年を見据えて言った。


「死ぬ前に一言下さい。」

彼に剣を振り上げながら声を掛けた。その質問に少年は鼻で笑って答えた。


「はっ、お前が神なら俺は魔神だ。」

「君みたいな子供がかい?」

神はこの言葉を聞いて少し興味が出て来たので二言目を促した。


「はん、魔神にも、幼少期ってのはあるんだよ。今の俺がそれだ。だがな、後数年してみろ。どのゲームの最後を飾るボスなんてめじゃねぇよ。此処で殺すのはちと時期早々だ。」

神は剣を鞘に収めた。


「ふふっ、そんな時が来るなら確かにおしいねえ。うん、そうだね止めておこう。君がこの先どうなるのか『この先も』見てみたくなった。」


「何?何を言ってる。殺すんじゃないのか?」


「それこそ何を言ってるんだだよ。僕は暇なんだよ。暇だから人に知恵を与えて暇だから欲を与えて暇だから力を与えたんだよ。そのなれの果てが仮りそめの平和になったんだよ。でも、そんなの面白くもないんだよ。動かないものを見ても詰まらないだけさ。だから自分が動いてみたんだけど、人を殺すのも詰まらなかったよ。僕にはいろんな物が一度に見えるんだけど。今日の君はここ一年間で一番面白かった。それに君ってこの子死んでも泣かないんだね?悲しくないの?」

後ろの死体を指差して聞いた。


「……悲しいよ。お前を今直ぐにでも殺してやりたい位には。涙なんて……俺は義務以外では泣けないんだよ。その前に俺に涙腺があるのかももう怪しい位だ。」

もう9歳の発言とは考えにくいが彼はそう言った。


「ふ〜ん、そんなもんか。まあいいや。じゃあ僕はもう帰るけど君にこの仮面を渡しておくよ。」

神は何処からか黒くて黄色の模様が施された仮面を少年の手に持たせた。


「それは君が後数年になったら付けて、それが君の為になり。僕のためにもなるものなんだ。君が嫌がってももう遅いからね。……いつか僕を殺せるといいね。」

いきなり現れた神はまた突然いなくなった。


辺りにあるのは死体とひそひそと話すゴミだけだった。







何なんだこの仕打ちは。

結局は生かされたのか?あいつの暇を潰すおもちゃになったのか?

全てを無くして最後に残ったのはアイツの物だと。


ふざけるなよ!!何だあいつは!!何だこの世は。

何で俺がこんなことをされなくてはならない。


何でこんなにもこの世は不条理で不公平なんだ。


弱者は平然と切り捨て強者はのし上がる。

何でこの世はこんなに醜い。


何故人は人のことを他人だとする。



人なんているのかよ。



要らない。


こんなやつらなら俺は要らない。この世に要らない。



…無に帰してやる。


だが、ただ無に帰しては駄目だ。

それじゃあ面白くない。



下剋上、上下の変化、上の者を下にして下を上げる。

それで拮抗、だがそこに僅かなずれ、ずれからまた格差は生まれる。それはまた明確になる。これじゃあ駄目だ。




そうだ、全員上は無理だ。………下を見せてやる。





そして、……神を殺す。




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