囚われの御姫様―フォ〜
こうして大きな夜空を眺める事が出来て、おもいきり外で風に吹かれながら走る事が出来て、皆と楽しく会話して、笑っていられる。
皆は当たり前とか大袈裟だって言われるけれど、私には人一倍幸せに感じていられるのなら、あの場所で暮らしてきたことの全てが無駄じゃ無かった気がします。
いつかは皆で貴方も一緒に・・・・・・・。
〜〜騎士様といろんな動きと思惑〜〜
「こんばんは、ご機嫌いかがですか?王家の囚われの御人形さん。」
彼は目の前に佇む少女を下から上まで見つめた。
少女の顔つきは可愛らしい顔の割に14,5の年齢にしてはしっかりとしたものにみえるのは憂えを含んだ目ときりっと結ばれた口元の性だろうか。服装も城にあった着るのに時間のかかりそうなしっかりとした物であったがこれは特別な日だからなのか、又普段からこうなのかは分かりきらないが、着こなしは上々である。部屋の周りの家具も高級感こそあるが別段使われている様子もないことからアンティーク扱いなのであろう。
飾りはしっかりとしているがここは中身のないものが多いな。そんなことだから数人の侵入者としっかりした内通者一人だけに踊らされるんだよ。
彼は大丈夫であるが、少女の方はこの沈黙がお気に召さない様子でそわそわしだした。
だが、このような事態にあったことがないこともそうだが、自己表現をしたことがあまりない彼女は何を言ったらいいのか良くも悪くも分からないお手上げ状態のようだった。
彼はそんな彼女の様子は気に入ったのだが生憎と時間が余りないのだ。
「私達は先ほどから場内を騒がせていたのですがそれは知っていましたよね?」
彼女は頷く。
「実はあれは貴方のためなのですよ。アウロラ王女、貴方は今決断の時に至っているのです。今ここでこの王家の古くからの習慣による柵の鎖を断ち我々と供に貴方の抱いていた自由を辛くなるか楽しくなるかはこれからだが現実をそれらを得るため、掴むために自分の足で動くか、それともこのままここに残って普段の貴方の中に型付くられた日常をただただ平和に生きるのか、シンプルな答えが欲しいですね。第三の選択肢というのもありですよ、どうしますか?」
普通の人間か彼女は怪しいが家柄を除くと普通の思想の者がいきなりこのような選択を迫られて対応しきれるだろうか否、出来はしまい。日常の中に異常とは得てして突然現れるものであるが備えの無い者の前に現れてしまうと何のアクションをおこすことも叶わなくなってしまうのだろう。
彼女は悩みを頭に送り続けた影響で困惑を起こし始めたのだが、彼は人を洗脳とは人聞こえが悪いが良く聞こえる様に例えるなら導くことには昔からかなりの時間と経験を積んでいるのである。
「申し訳ないのですが、私達には貴方に十分な考える時間を与えていられる程の余裕を持ち合わせていないのです。ですので決断はぎりぎりまで待つことにしましょう。取り合えずは私と行動を共にしてみませんか?貴方はこの城の中でさえ自由に歩くことが出来なかった筈です。そして、それをすることで何か考えが浮かんでくることもあるかも知れませんよ。」
「でも、貴方達は………いえ、でも………。」
まだ彼女は答えあぐねる。
「私達について来て貴方が普通の暮らしをすることはかなわないでしょう。ですが約束します。必ず貴方には自分の意思による行動が出来るようにはします。まぁ、それはここを無事に出れたらの話しであり途中で失敗することもあるかも知れません。そして、それにより貴方がここの者による罰則を受ける事はないようにもします。貴方は、無理やり連れられたとして我々は動機を話すこともありません。……さぁ、王女信用して下さいませんか?」
彼は彼女の方にすっと手を伸ばす。
彼女の手が焦れったく徐徐に徐徐に伸びていき、彼の指に触れた所で又少し引いてしまった。その時に彼が微笑み彼女は相手との迫った距離に気付き妙に恥ずかしくなったのか、頬を赤く染めて顔を斜め下に向けて手を掴んだ。
「では、行きましょう。」
彼女は一度も後ろを見ようともせず手を引かれていった。
自由は与えてやるがそれを生かすのも殺すのもお前次第だけどな。世間知らずの御姫様がこの悪意と私欲の世界でどこまで出来るのか見ものだな。
「お前の幸せが誰かの不幸にもなるんだぞ。」
誰に言うでもなく小さな声で呟いた。
キィン、ガッ、ガガガッ、
決して広くない廊下で老人と青年が一進一退の激闘を繰り広げている。
「本当に強くなったのう。ついこの間までもっと簡単に捻られて可愛かったというのに。それに、わし等の為に教えた剣術をわし等に返されるとはそれもお主がとはいやはや青年の心とは分からぬものよのう。」
クロロが距離を取ったのを見て言った。
「ははっ、何を仰しゃいますか。私が真に仕える主は昔から王女様でありそれは昔にあの人の母君にお願いされてから少しも変わりありません・・・よ。」
彼の確固たる決心は迷いのない剣跡から伺える。それは師である老人には始まりから分かっていた。では自分は彼に本気で対応出来ているのか?いや、そうではない。まだ本気で向かい合うことは出来ていないのだ。今までしてきたように遊びの軽い気持ちでしか彼に向き合えていなく、それが真剣な相手にどんなに失礼か自覚していてもやはり愛弟子である彼には出来ないでいた。今対峙している相手が違う相手であったなら、そのような考えが実力で上回っていても彼を捉えきれない要因になっていて、全盛期を過ぎた体に加えて無意識に鈍らした動きは必要以上の体力の低下を招いていて避け続けていた攻撃を今では全て剣で受けているのが現状である。
「何を考えてるんですか?」
ガキィィ、ドゴォ
老人は隙を突かれたことで剣を上に弾かれ腹に蹴りを貰ってしまった。
「ぐぅぅ、老人は労わるものだと教わったことがなかったかの?」
「戦場で情けを掛けてはいけないとも貴方に教わりましたよ。」
老人ははっとなったようにして表情を渋らせる。
「そうか情けか。…どうしても……どうしてもわしを越えていくつもりか?」
歴戦により身につけた気をぶつけながら言い、それを真っ向から受けて答える。
「はい、貴方が王女の鎖の一部になるのなら。」
「……一目見て感じた。あの男は信用ならんぞ。お前が利用している気になっていてもあやつはその気さえも飲み込んでいるような恍惚な奴じゃ。」
「それを見抜く眼力は持ち合わせております。」
「全て承知の上でということか?」
「…はい。」
「この老いぼれがこの歳になって又趣味以外で戦うことになるとはの。言葉はもういらぬ。行くぞ。」
「はい。」
そして、老人とクロロとの戦いは第二ラウンドに突入した。
「エディ!!」
一階のフロア周辺に威厳のあるしっかりとした声が響いた。
エディは帽子を被った男の後方に勢いよく飛ばされていったが、直ぐに立ち上がって相手を睨んだ。
「まさか僕の方に飛んでくるとは考えなかったよ。咄嗟にしてはいい反応だね。普段の振舞いは兎に角として動きはしっかりしてる。」
歳の程は見た目では背が170cmあるかないか程度の小柄な所と今聞いた声で判断すると、20回りに思える。
「避けれるさ。俺達はここの奴らみたいなやわな訓練受けていないからさ。」
少し切られた腹をさすりながら言った。
「ははっ、言っておくけど僕等も君たちと同じ不法侵入者だよ。ここの人間とは一度も面識なんてないからね。」
二人は訝しげな表情を見せた。
「じゃあ、……何なんだ?お前達ってことは何処かの国の者なのか?」
「特にこれと言った名前はないんだけどね。強いて言えば……神の使徒かな〜。」
相手は随分と自信を持って堂々と宣言したが、これで納得する者も居る筈がないだろう。
「ふざけてるのか?」
「別にお前等に理解してもらうつもりはないさ。ん〜で、そろそろ話しも止めにしないかい。そろそろ殺りたいんだけど。」
隊長が前に行こうとしたが、その前にエディが出た。
「隊長ここは大丈夫ですよ。隊長は隊長でJから言われてやることがあるんじゃないんですか?……本当に大丈夫ですって。いざとなったら逃げますから。それにこれは俺が受けた戦いですよ。」
隊長は何も言わずにその場を後にした。
「じゃあ始めようよ。」
相手はうすら笑いを浮かべてエディに襲いかかってきた。
誰だ。彼は思った。
彼と御姫様が廊下を歩いていると右の角から一人の男が姿を見せた。
「こんな所で何をなさっているんですか?」
彼は御姫様から手を放して言った。
「貴方をお待ちしていたんです。」
男は答える。
「私を、それは何用ですかね。」
「神の命を受け貴方を殺すために来たんですよ。」
何だと!!
瞬間彼の気配が豹変した。
普段纏っている人を斜めから見ている様子であるが、彼の言葉を聞いた途端に相手を目を見開き真っ向から対峙した。
今…こいつは何と言った。神、神だと言ったのか?宗教者か?いや、殺しにきたんだぞこいつは。
俺を、神の命を受けて。そう言ったんだ。そういう意味だこれは、
「どうしたのですか?」
男の顔には少しの笑みがうかがえる。
黙れ!聞くことを訊いたら貴様は直ぐにでも殺してやる。それよりもあいつだ。いまさらになってこんなことを、殺すなら5年前のあの時に殺せば良かったものを・・・。
ん、ふっ。
ふっ、ふふっははははっ、貴様がそうしたいのなら思い通りにさせるか。
「お前殺しに来た・・・と言ったがその真意は何だ。ただ単に俺を殺せと言われただけか。」
彼は姫を下がらせてジョーカーを止め、彼個人として相手と対峙した。
「さあ、私は神がおっしゃったというのできたものですからね。唯最近貴方の元に勢力が傾き始めたと聞いた事はありますけどね。」
待て、今の言い方。こいつは本当に神を知っているのか?それにこいつは馬鹿なのか、こんなに簡単にべらべらと内情を喋り出すとは。
「お前、自分達の事を簡単に話してもいいのか?」
「大丈夫です。殺す前に貴方に質問を受けたら話してもいいと思ったことは喋ってあげなさいということなので。」
そうか、あいつは何処までも俺を舐めているようだな。その方がやりやすくていいが不愉快だ。
「済みませんが次で最後の質問にして下さい。次の仕事がありますから。」
くそっ、あと一つか。それに答えられないものもありそうだな。最も俺にとっては意味のない事だがな。
彼は右の目の方に手を置いて考える様な素振りを見せた。
そして男には死角になるように笑みを作る。
…行くぞ。
「無駄だと思いますよ。貴方が神から貰った『物』の事は聞いていますから。」
まぁあいつは神だからな。この力のことを把握していてもおかしくはないか。
これを使うと疲れるからな。止めた方が良さそうだな。
「では、最後にして聞こう。……俺は誰だ。」
「クライシスのトップのジョーカー。」
世間一般に通ずる率直な答えだ。
「そうだ、その通りだ。この不安定な世界を揺るがさんとす危機であり、名前を捨てて世界の脅威となった仮面の道化だ。神だろうと俺は止められない、……その部下如きが俺を止めれると思うなよ。」
「そうですか。」
ドドゥゥン
神の刺客は懐から銃を取り出し彼の顔に二発放ち、それを受けて彼はうつ伏せで床に倒れた。
前話で次終わると言っていたのにも関わらず終わらせられませんでした。
何かこのままだと軽く一万字超えそうなんでまた分けることにしました。時間も掛かりそうですし。
次の更新は遅くても一週間以内にはします。
更新遅くて済みません。