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17.別れを告げる時は笑顔

 警告灯が全モニターを埋めている。ラミアは乗り出していた自分に気づいて肩を落とした。赤い光が点滅する中で、目の前のモニターは白々とホワイトアウトしていた。

 ライカが呼びかけた。

 「ラミア、NO.9927を今から生成するのですね?」

 ラミアは考えながらうなずいた。

 「では、急いでください。生成にかかる時間を見積もりましたところ、特急で162分かかると思われます。電気系統の故障が30%を切らない前提ですが」

 「……ちょっと待って、ライカ。9926のレシピは?」

 「755を触媒にして、雷流圏モデルから換算した高電圧を9910に148分照射しました。ラミア、急いでください」

 「ちょっと待ってってば。同じような実験がオルカ博士のデータにあったよね?」

 「いえ、ありません」

 ライカは言下げんかに否定する。

 ラミアは首を振った。

 「今なすべきことをなせ。昔、大工の息子がそう言ってましたね? ――ラミア、急ぎましょう」

 このAIはホントに、こんな時まで軽口かるくちを叩くようにできてるのだろうか?

 「違う、ライカ……逆の形式だよ」

 「逆……! 平準化モデリングの逆唱実験ですか!」

 「確か、オルカ博士の補助実験でそんなデータがあったはず……」

 「ありました! 触媒との相関実験です。距離を離す以外に平準化が難しくなる要素の測定です!」

 すぐさまライカが応えた。

 「一から作るより、そちらの方が早い。電源系統は必ず落ちるから」

 「はい。18分ほど短縮できるでしょう」

 ラミアは科学者の顔に戻ってライカのメインモニターを振り仰いだ。

 「ライカ! チェンバー解放して! サンプルを3つ、プラントに移行。予備実験をすぐに始めて」

 「承知しました。ラミアは?」

 「最適値を探すわ。決して失敗できない実験だから」

 ラミアは、コンソールの前に座って大きく深呼吸、それから嬉しそうに笑った。



     ☆



 アルクは迷路のようなイソラ中枢から走り出て、敷地の中を北東方向に見えるシャトル発着場へ走っていた。

 後ろから軍用車の音がする。肩越しに振り返ると助手席でロブクラフが手を振っていた。

 「ロブクラフさん! クリードさん!」

 「早く乗れ! 坊主!」

 アルクは後部座席のシートを右手でつかんで飛び乗った。加速する。

 「はあ……最悪と最高って重なるのね……」

 ロブクラフはため息をついて、助手席から後部座席に乗り出した。

 「いい、アルク。絶対にラミアを助けるのよ」

 「わかってるよ」

 言われずともアルクはそのつもりだ。

 ラミアを助けること、データを持ち帰ることがこの国を救う方法だ。アルクがそれを言うと、ロブクラフは怪訝そうに言った。

 「最悪、データは持ち帰らなくてもいいわよ。分子化学者は組成なんてすぐに暗記できるから。データを送るのももうできないだろうし」

 ロブクラフは何かに気づいたように笑った。

 「アルク、データなんて気にしなくていいの。大丈夫、ラミアがいればすぐに同じものは作れるから。人はデータより大事。ね? だから、アルク、絶対にラミアを助けるのよ」

 ロブクラフは眼を三日月にして笑って、こんな時だというのに、甘やかすようにアルクを抱きしめた。



     ☆



 イソラでは再び、慌ただしくユティエスの状況報告を告げる声が飛び交っていた。

 「ユティエス、外部制御信号応答なし!」

 「識別信号微弱です! このままでは軌道をトレースできません!」

 「通信回線復旧できません! 爆発時の影響と思われます!」

 次々に悲観的な報告が飛び込んでくる。

 「……万事休す、か」

 カリフは頭を抱えた。

 せっかく解決策が見つかったのに、指の間からこぼれ落ちてしまった。

 取り戻すことはできそうにない。自分の人生のキーワードはいつでも「手遅れ」だ。

 スタッフはカリフの指示を待っているが、カリフには何の指示も口から出てこなかった。ささやかなプライドだけが、カリフをしてその視線から逃げ出さないようにしているだけだ。

 報告が間遠まどおになる。

 ユティエスは翼をもがれたように墜落を待つばかり、ということが皆にもわかったのだ。

 麻痺したような頭でカリフは考えた。

 教授だったら――ワグナム教授だったら、こんな時どうしたろう。

 むろん、ワグナム教授だったら懸命に考えるだろう。諦めないだろう。

 ワグナム教授だったら、皆を落ち着かせて力強く皆を鼓舞こぶするだろう。

 ワグナム教授だったら。

 でも、自分はワグナム教授にはなれなかった。

 救えなかったどころか、「紅雷」さえも撃てなかった。

 自分たちは空回りしていただけ。国を救うのだと背負ったつもりになっていただけだ。

 カリフはほとんどもう諦めていた。


 「……しっかり、しなさいよ……」

 ひりついた沈黙が立ち込める管制室に、シエラの呟きが静かに響いた。

 イソラ中枢の誰もがシエラを見た。

 彼女は右肩を押さえ、神経が切れたのだろう、腕を垂らしたまま立ち上がっていた。血が床にしたたっている。

 ふらつく足を踏みしめながら、彼女は言った。

 「あんたたち、頭いいんでしょ? ……どうすればいいか、考えなさいよ。国を救うんじゃなかったの? バカはバカなりに身体張って、頭いいヤツはちゃんと頭使って、最後まであがくのよ」

 シエラが自分の血で滑って、近くのコンソールに捕まった。周りにいたスタッフが思わず手を貸そうとする。

 「自分にできることやらないうちに、諦めてどうすんのよ……!」

 シエラは押し殺したように叫んだ。痛みに息をつく。


 ――カリフはその姿に見とれていた。

 胸の中を、澄んだ音韻おんいんを響かせて何かが通り過ぎていった。

 ああ、そうか。

 そうだな。

 カリフは立ち上がり、執務席をゆっくりと降りて行った。シエラの脇に立つ。

 荒い息をついているシエラを、カリフは間近で見た。

 瀕死の重傷をおして、こんなに幼い娘が。

 君の言うことは正しい、カリフは口の中で呟いた。

 聞き返すように見返したシエラには応えず、カリフは白衣を脱いだ。彼女の腕の傷を止血するために、その袖糸そでいとを歯で噛み切り、白衣を裂いてシエラの腕を縛る。手早く三角帯も作った。

 「何を……」

 「不格好ですまんな」

 「……」

 「早く止血をせんといかんぞ」

 「あなたは……」

 カリフは首を振って、照れたように眼をそらした。


 一体、私は何を恐れていたのだろう。

 天才である必要など、一度たりともなかったではないか。

 ただ、前を見て歩き出しさえすればよかった。

 傷ついた少女の腕を支えてやるだけでよかったのだ。

 我々ができることなんて、こんなにもたくさん、たくさんあるじゃないか。


 カリフはうつむいたまま言う。

 「……ナヴァク首相、私はあの小僧に手を貸したいと思います」

 ゆっくりと管制室にどよめきが広がった。

 「……好きにしたまえ。もう私は首相ではない。ただの反逆者だよ」

 疲れた声でナヴァクが応えた。

 カリフは哀しみの残る眼差しで振り返り、ナヴァクに深々と一礼した。

 「ありがとうございます……私にとって、首相は首相のままです。この一連の出来事が済んだら戻って参ります。首相が反逆者であると言うのなら私も連座しましょう」

 頭を上げたカリフは明るく笑ってみせた。

 「それに、まだ約束を果たしていません。お誘いした店に一度はお連れせねばなりません」


 深呼吸。

 カリフはスタッフを振り返った。大きく両手を振り回す。

 「通信士はここで待機。復旧と他の通信手段を全て試せ。同時にユティエスの全チャンネルをシャトルに同期しろ。システム班は中央管制室と発射場制御室をつないで、中断していたシャトル打ち上げのシステムをリブート。制御班は私と共に発射場へ向かう。いいか?」

 管制室に安堵と同時に新たな士気が訪れた。

 「諸君、状況は絶望的だ」

 カリフはスタッフを見渡した。こちらを見る顔、そして顔。

 誰も彼も、多くのイレギュラーを含む「740計画」を精密に仕上げてきたスタッフたち。

 不敵な顔でカリフは笑った。

 「だが、そんな時こそイソラの力の見せ所だ! 我々は実現不可能な夢を見る者だ! 不可能を可能にする者だ! 違うか!」

 カリフが嬉しそうに叫ぶと、スタッフたちは叫び声と共に、一斉に手を挙げて応えた。


 「……誰もが最善を尽くす。それが未来を創る。ナヴァク、まだ、できることはあるはずだろう。お前にも、私にも」

 カリフ長官が足早に中央管制室を出て行くのを見ながら、ノエルタが呟いた。

 ナヴァクは跪いたまま、身体を硬くして聞いている。


 ――ユティエス墜落まで、あと175分。



     ☆



 大きく回り道をした結果、アルクたちがシャトル発着場に着くには思っていたより時間がかかった。

 発射場手前でジープを乗り捨てて、アルクとクリードは壁を乗り越えた。飛び降りるなり、クリードがロブクラフに訊く。ロブクラフはまだ壁の上でよじ登っている。

 「制御システムのフォーマットは? 整備はどの程度だ?」

 「待って待って待って! ちょっと助けてよ!」

 建物の陰に一部見えるシャトルに向かってアルクは走り出す。クリードがその後に続く。が、そこにカリフが現れた。

 「……ついてこい。こっちだ」

 「……どういうつもりだ?」

 アルクは警戒に眼を細めて問いただす。

 それには応えずにカリフが歩き出した。正面に見える発着場とは違う方向だ。

 「あんた、そっちは……」

 「システム構成上の問題で、中央管制室と発着制御室は近づけてある。だから、シャトル近くにはコントロールできる装置は何もないのだ」

 カリフは歩みを止めることなく振り返って言った。

 アルクは躊躇ちゅうちょした後、無言で歩き始めた。クリードとようやく追いついたロブクラフが続く。カリフは目の隅でそれを確認すると足を速めた。

 「……シエラはどうした?」

 「あの娘か。救護班を呼んだから、今頃治療を受けている頃だろう」

 何でもないようにカリフは応え、角を右に曲がった。

 「懸念けねんするべきは、この急激なデータの増大を制御室が処理できるかどうかだな」

 「……」

 「……もはや弁解はすまい……私はワグナム教授に教えを乞い、たもとを分かった。『紅雷』はどうしても必要だと思ったからだ」

 カリフは歩きながら述懐じゅつかいした。

 「……『紅雷』しか解決の手段になれるものはないと思っていた。電離物性変化が当時のまま研究されていれば、もう少し成功率もあがったろうが」

 「……『紅雷』がもたらすものはかりそめだ」

 「そうだな。結局――そうなのだ。イブナー博士の理想は尊重されるべきだが、同じ手段を用いたところで同じ結果になるだけだ」

 「……あんた」

 カリフは立ち止って振り返った。そして同様に立ち止ったアルクに、顔をぐっと近づけて覗き込んだ。

 「少年、取り返しのつかないものはないのだ――誰もが、そう願っている」

 カリフは真顔で言い、そして破顔した。

 「だから私はここにいるのだ。お前ができるかどうか私にはわからん。だがせめて、私のあらん限りの力を以てそれを助けよう――取り返しのつかないものなど何もないと、私に証明してくれないか」


 もう一度角を曲がると、シャトル発着の制御室だった。

 中はイソラの管制室よりふた回りほど狭い。メインモニターだけは管制室と同程度の大きさで、今そこにはライトアップされたシャトルと打ち上げ台が大写しになっていた。

 壁際では、スタッフが何人か壁からケーブルを引っ張りだして、どうやらシステムの接合をしているらしい。制御スタッフが汗だくで駆けつける。

 「長官、ユティエスの墜落軌道予測、出ました!」

 カリフは軽く手を振って、メインモニター上に軌道予測を表示した。球面に対して、急角度の弧を描いた点線が表示される。

「大気圏突入角度、20.65度か。望むべくもないな――しかも、ユティエスの状況が変わった。爆発の影響で思ったより加速がついている。黄道面に垂直なのが災いした。あと、154分でユティエスは確実に燃え尽きる……!」

 スタッフたちは一様に顔を引き締めた。

 「どうすりゃいいんだ?」

 アルクはカリフの余裕に少し苛立って口を開いた。

 「幸いにもシャトルの打ち上げ予定があったおかげで、燃料重量計算、重力影響は勘案できている……が、雷流圏活性の観測もできていないずさんな飛行計画で飛ぼうというのだから、正気の沙汰ではない」

 カリフは近くにあったホワイトボードを引き寄せて、モニターと同様の曲線を描いた。

 「雷流圏を突破するには秒速11kmが必要で……そうなると」

 言いながらカリフは、地表からのシャトル軌道を描いた。750km上空でシャトルは頂点を迎えて落下加速、雷流圏直上でシャトルの落下軌道とユティエスの落下軌道は短い間ランデブーする。

 「こんな軌道を取るしかない」

 クリードが難しい顔でうなずいた。

 「……なるほど。長く見積もって……350秒、てところか。厳しいな」

 カリフが意外な顔してクリードを見やった。

 「……その通りだが、シャトルの加速は増大こそすれ、減少はしない。相対速度を考えると実際の猶予はもっと少なくなるだろう。恐らく……約300秒」

 クリードが肩をすくめた。

 「チキンレースをクリアした上に、5分でラミアとデータを取り返して帰るってわけか」

 「うむ。できなければ生還は不可能だ。ユティエスと共に燃え尽きる」

 カリフはアルクに向き直った。

 「アルクと呼んでいいかね……アルク、我々はシャトル制御と接触ポイントを必ず計算し尽くす。必ず、取り返してくれ」


 「んーむ、ならオレが操縦してやるよ」

 いきなり後ろから声がした。リオがアルクの隣に立つ。

 「リオ?」

 「王軍にも反乱軍にも戦闘中止命令が出たんだよ。全員シャトル発射の手伝いしろって。管制室に行ったらシエラが治療受けててアルクがこっちにいるって言われて……なに、オレ仲間外れ?」

 「いや、お前、今そんなじゃねえだろ?」

 「まったく、こんな時に万能ドライバーのオレを呼ばないなんてどうかしてるよホント」

 「……車の運転じゃねえぞ?」

 「そんなんわかってるよ……おっちゃん、制御は全部地上からやるんだろ?」

 カリフはうなずいた。一瞬躊躇してから、呟くように言った。

 「……完全自動制御にするしかないのだ。パイロットがいない」

 リオが軽く肩をすくめた。

 「飛行訓練は済んでる。シャトルはできてないけど、ちっとはマシだ。オレが乗ってればユティエスに近づける精度は上がるだろ?」

 カリフはまじまじとリオを見た。

 「……いいのかね。我々にとってはありがたい申し出だが……何が起こるかわからん。というより何かが起こらない可能性の方が少ないと言っていい。起これば、君も……」

 「いいよいいよ。どうせ退くわけにはいかないんだから。オレも、こいつも」

 リオは笑いながらアルクを親指で指し示した。

 「ギリギリまで同期してみせるよ――だって、一回こっきりなんだから、打てる手は全部打っておく。反乱軍のおきてだね」

 「……うむ。しかし、ドッキングなぞ考えられぬスピードだ。ユティエスは墜落しているのだから」

 アルクは腰に差した星錘を右手で叩いた。

 「飛び移るしかないだろ。そのためのシュートアーツだ」

 「いやしかし……」

 「おっちゃん、おっちゃんはオレらを脅して乗らせないようにしたいのかよ?」

 リオはおどけるように言う。

 「……ううむ」

 カリフは、その口調とは裏腹に、真剣な眼差しをしたふたりの少年を見つめた。

 頭の中では危険の可能性があふれ続けていたが、蓋をした。迷っていても始まらない。今は軌道計算をするのみだ。彼らが最も生き残れる可能性を探る。必ずだ。

 「な、オレは頼りになるな?」

 リオが言った。

 「ああ、知ってるよ」

 「帰ってきたら、その、なんだ、シエラに頼りになるということをだな……」

 「それは自分で言え」

 アルクは笑う。


 ふと、カリフは何事かを思い出して眉をひそめた。

 「いや、しまった」

 「まだなんかあるんかよ、おっちゃん」

 「ユティエスの特級コードがない。外部ハッチが開かん」

 「なんだよそれ。どこにある?」

 アルクが眉根にしわを寄せた。

 「……科学省本省の保管になるものと、あとは……」

 カリフは顔を上げた。

 ざわめきの中に、そこだけ聞き覚えのある足音が聞こえたのだ。踏みしめるような足音が。

 ゆっくりと顔がほころんだ。

 「あとはな、首相が持っているよ」

 カリフの声にナヴァクの低い声がかぶさった。

 「そうだ……これを持っていくがいい。『740計画』における最高の権限キーだ」

 全員が振り返ると、ナヴァクがノエルタと共にゆっくりと扉をくぐるところだった。

 「カリフ長官、忘れるとは君らしくもない」


 ナヴァクはゆっくりとアルクに歩み寄ってくる。

 そこには、先ほどまでの敗北にまみれた男はいなかった。

 再び首相は胸を張り、頭を上げ、真っ直ぐにアルクを見つめていた。

 アルクの前に立ち止まる。

 アルクもまた、真っ直ぐにナヴァクを見返していた。

 ふたりの眼にはもう怒りも悲しみもなかった。

 「アルク……礼を言う。今更だが『740計画』は廃棄だ。かの計画が、考え抜いた末のものだったと私は恥じていない」

 低く、囁くような声だった。


 ナヴァクはモニターを見上げた。

 モニターには、シャトルの遠景が映っている。

 しばらくの間、ナヴァクは黙って見つめていた。

 シャトルではなく、その上の暗い空を見つめていた。

 犠牲の空を。

 希望の空を。

 ユティエスの空を。


 「だが、それが間違いだと知った以上、引き返さなければならない……私もまだまだだ」

 ナヴァクは向き直って微笑んだ。

 「……どれほど耐えることになっても、考えることを諦めてはいけない。そうだな?」

 アルクはうなずいた。

 「……我々には、最後の手段などない。いつでも次にするべきことがあるだけだ。そうだな?」

 アルクはしっかりとうなずいた。

 ナヴァクもまたうなずき、短く言った。

 「成功を祈る」

 カリフは身内から湧き起こる武者震いを押さえられずにいた。キューブ型をした特級権限キーを照明に透かしてみる。


 「『世界を変えられると、本当に思ったものだけが世界を変える』」


 よくワグナム教授が言っていた言葉をカリフは噛みしめた。

 初めて、何のわだかまりもなく胸の中に落ちていった。




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