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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第九十話 旅立ち

 先王との一件から一週間、Sランク式というよりは先王式の鍛錬法はグレードを落して続けていた。姉とアリスは25kgのおもりを常に着けた状況で生活と冒険を頑張ってこなし、俺は50kgのおもりを一週間で75kgまで増やしながら生活するようにしていた。

 不思議と慣れてくると重いことが通常の状態になり、身体強化を掛け続けることも無意識で行うようになる。当然、武器での攻撃は重くなった体重分が乗るので一撃も協力になるので破壊力も上昇しつつあった。

 問題があるとすればおもりを着けているのを忘れて木製の階段を登ったときに、板を踏み抜きそうになった事だろうか、本来の体重と合わせると140kgを越えてしまうので脆い場所とかには注意が必要なようだ。


 そんな鍛錬を日常的に繰り返していると、やっと都市間の転移魔法陣の使用許可が下りたようでお婆ちゃんから呼び出しが掛かった。俺達は久しぶりに魔法学院へと足を運ぶとお婆ちゃんへ面会を頼んだ。


 「これが南の隣国、妖精国ユグドラルへの転送許可証よ。トーヤ達の存在を知られない為に私からの私的な荷物の運搬という事で転送許可を取ることにしたわ。期間は今月の定期転送から来月の定期転送までの一ヶ月間になるわ」


 どうやら妖精国への転送許可を取ることが出来たようだ。しかも、俺達の存在を公にしない為に色々と理由付けまでしてくれたようだった。各都市間の転移魔方陣は天馬ペガサスの羽根を使う為、月に一度まとめて発動するようになっている、特例で無い限り個別での利用は有り得ない。

 因みに、この一週間で受けた依頼は天馬ペガサスの羽根を採って来る依頼だった。前回の密猟者から仲間を救った事を覚えていたのか、少し多めに羽根をくれた。当然お礼の草はしっかりと渡したが。


 「出発は今月の末、一ヶ月は向こうで用を済ませれば何をしてても大丈夫よ。冒険者ギルドには指名依頼を出しておいたので忘れずに受けておいてね? それと、こちらの世界での初めての他国となるのだし、妖精国は風光明媚ふうこうめいびな所だからメダリオンの件が終わったら観光してくるといいと思うわ」


 お婆ちゃんからの依頼の内容は妖精国にある精霊魔法学院への親書とオーブを運ぶ事らしく、二度手間を省く為に現物は今預かって帰ることにした。

 それにしても妖精国か、話で聞いただけだが多種多様な種族が暮らしているそうだ。人族であるこの国では精々エルフかドワーフくらいしか見ないが、他にフェアリーという小さな姿で羽を生やした小人や、人魚などもいるらしい。


 「妖精かぁ、何かこうファンタジー的というか異世界に来たって感じのする響きだよな」


 「そうですか?確かにあちらでは伝承や伝説上の生き物でしたものね」


 俺が上機嫌で言うと、アリスが気の無い返事を返した。そりゃアリスは生まれた頃から見て来たんだもんな、俺や姉のこの期待度は理解できないか。


 「でも、妖精国ユグドラルは学院長が仰っていたように美しい国ですからね、それは私も一度は見てみたいと思っていました」


 俺とは違う意味でアリスも妖精国には期待しているようだ。この世界には写真も無いし観光ガイドとかも出されていないんだろう、美しいと言っても人伝ひとづてに聞く程度だから誇張こちょうもかなり入っているのだろうと思う。オーストラリアのエアーズロックやアメリカのグランドキャニオンのような、雄大な景色なのだろうかという思いはあるが、そこまで期待はしていない。


 家に帰った俺達はセバスさん達に旅の日程を伝えると各々旅行の支度に取り掛かった。出発まではまだ数日はあるが間近になってから慌てないように今の内に服や小物などを用意する。

 日程では一ヶ月向こうに滞在する事になる、メダリオンでの測定は一瞬で終わるのでほぼ旅行気分だ。俺はアイテムボックスにメダリオンと地図が入っているのを確認し、他に必要なものなどを仕舞った。


 

 「では、気をつけてね?依頼の方もしっかり頼みましたよ」


 お婆ちゃんの見送りで俺達は転移魔方陣のエリアへと進んだ。俺達は今王城の一角にある転移魔法を管理している建物へとやって来ている。本当は先王、お爺ちゃんも見送りに来たがっていたらしいが有名すぎるのでお婆ちゃんに見送りを断られたらしい。お婆ちゃんは依頼主という建前があるので多少有名だが俺達の身元に疑問を持たれたとしても言い訳がつく。


 「ああ、行って来るよ。お土産は買ってくるから」


 俺はと言うと完全に旅行気分である、足での旅では無いので気持ち的に空港から飛行機で旅行に行くようなものだ、気付いたら異国でしたという感じだな。俺達はお婆ちゃんに手を振ると魔方陣のある大広間へと進む、大広間には妖精国へ届けられる物資が山のように積まれていた。

 因みに、この転移魔方陣は発動するとお互いの空間を入れ替えるらしく、俺達が向こうへと飛ぶと同時に妖精国の転移魔方陣の上にあるモノがこちらに入れ替えで送られてくるらしい。


 どうやら準備が終わったらしく、大広間の扉が閉じられた。転移を狙っての他国からの進入を防ぐ為に転移が終わるまで重厚な扉によって大広間は閉鎖される。転移が無事に終了してから小さな覗き窓から内部を確認してから開放されるようだ。防衛としては当然の処置だと思う。


 ふと周囲を見ると俺達の他に何組かの冒険者や商人の姿が見えた、彼らもまたこの国へ戻ってくるのは最低でも一月後なのだろう、かなりの荷物を抱えていた。逆に俺達のようにアイテムボックスを習得しているのだろうか冒険者の中には軽装な姿の人も少しは見受けられた。


 「これより、転移装置を起動致します。絶対に陣の外へは出ないでください、では良い旅を」


 管理者だろうか、お決まりの挨拶と共に転移魔方陣を起動させる。陣の文様に光が走り、視界の全てを虹色の輝きで埋め尽くしていった。

 眩しさに目を瞑ると次の瞬間には異世界転移でも感じた浮遊感が俺を襲った。数秒で周囲を満たしていた魔力が消え去り身体に感じた浮遊感も消えた辺りで俺は目を開いた。


 そこは一見ファレーム国での転移陣の大広間と大差無いホールだった。正面には大きな扉があるが閉じており、周囲には人の姿が見受けられない。

 次第に周囲に転移してきた人達の話し声が聞こえ始める。どうやら無事にユグドラルへの転送が終了したらしく、暫くすると扉が開くだろうと仲間内で喋っているのが聞こえる。数分もすると扉が重い音を立てて開き、一人の青年が姿を現した。


 「ようこそ、妖精国のユグドラルへ。国内での注意事項がありますので旅行者は入国管理間の職員の案内に従ってください」


 どうやら入国の手続きがあるようだ、地球の空港のようだなと思いながら俺達も必要な書類をアイテムボックスから取り出して係員の案内で手続きを開始した。

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