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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第八十九話 魔力循環

 結局俺が身体を動かせるようになったのは二時間が過ぎてからだった。余りにも酷使しすぎたせいか普通の生活を送るにも軽い身体強化を施さなければいけないほどだ、どれだけあの鍛錬法が凶悪なのかが分かる。

 ちなみに、姉とアリスは未だに横になったままメイドさん達にお世話されている。この差は以前バトラさんが言っていたように魔族の血が濃く引き継がれていることが影響しているのだろうか?


 「ほう、トーヤはもう身体を動かせるのか。あの鍛錬を初めて受けてここまで短時間で回復した者はおらんかったが。お主には期待しておるぞ」


 お爺ちゃんが俺を見て声を掛けた。いやお爺ちゃん、隣で説教しているお婆ちゃん無視してそんな事言ってると・・・、そう思った瞬間お婆ちゃんが激怒してお爺ちゃんへの説教レベルが1ランク上がった。

 巻き込まれるのは勘弁とばかりに俺は二人から離れることにした。横になっているアリスの近くへ向かうと介抱していたメイドさんが気を利かせてどこかへ離れていった。


 「アリス、大丈夫か?」


 「うぅ・・・、先王様が怖い・・・。というかトーヤなんで動けるんですか?!」


 アリスの体調を尋ねると恨みがましい目で睨まれる。何でと言われるが身体強化を常にかけていないと普通の生活も送れないんだが。


 「これでも身体強化かけてやっと動ける程度に回復したんだけどな。アリスとも魔力循環すれば少しは楽になるかな?」


 物は試しとアリスの手を取り、日本にいたころにやったお互いの魔力を循環させる方法を取ってみる。これは日本で最初に俺や姉が魔力を感じる時にやった手を繋いで相手に魔力を流す奴だ。

 これは若干だが相手の魔力が自分の身体に流れ込む事で魔力の回復などにも効果がある。俺の血というか魔力が魔族寄りだから回復が早いとすればその魔力をアリスに流し込むことで少しは楽になるかもしれない。


 「あぅ~、久々にトーヤの魔力を感じます。この感覚も久しぶりですね」


 気の抜けたような声を出しながらアリスが目を閉じる、さっきより表情が楽になっているような気がするがどうなんだろうか。


 「どうだ?少しは楽になるとか変化あった?」


 俺が問いかけるとアリスは目を閉じたまま頷いた。おまじない程度のつもりでやったけど、予想外に効果があったようだ。俺はついでにと姉をアリスの横へと連れて行き、日本以来になる三人での魔力循環をやってみた。


 どうやら効果が多少はあったらしく、一時間もすると二人共自力で身体を起せる程度に回復できた。これは俺の魔力に要因があるのか、もしくは魔力循環が良かったのかどちらだろう?


 二人が起きれるようになった頃にはお婆ちゃんの説教は終わっていたようで、渋面のお爺ちゃんと怖い顔のお婆ちゃんがお茶を飲んでいた。アリスたち二人が動けるようになったのを見てお爺ちゃんがまた何か言いそうになったが隣からの一睨みで口を閉じた。


 「チアキ、アリスティア。何とか動けるようになったようね。ごめんなさいね、この人のせいで朝から大変な目に遭わせたわね」


 お婆ちゃんが謝罪と共に頭を下げた。姉は苦笑しつつ答えた。


 「大丈夫、さっきトーヤに魔力循環して貰ったら少し楽になったから。でも確かに厳しい鍛錬だったわ。二十年生きてて意識を失うまで特訓したのって始めてかも」


 「あら、魔力循環で楽になるなんて初めて聞いたわ。トーヤの魔力が関係しているのかしらね?」


 姉の言葉にお婆ちゃんが首を傾げていた。やはり学院長をやっているお婆ちゃんでも魔力循環で劇的に回復するなど聞いた事が無いようだ。だとすると俺の魔力に原因があるか。

 

 「おまじないみたいな物ですよ。試しにやってみたら楽というから一時間くらいやってみたんだ」


 俺の言葉にお婆ちゃんも興味をもったようで、俺と祖父母の三人で魔力循環をしばらく行ってみた。結局俺が要因なのか方法がよかったのかは判別が付かず、今後も検証を続けるという話で終わった。


 夕暮れ時になってやっと普通に動けるようになった二人と家へ帰る事にした。一応、鍛錬に使った重りなどもアイテムボックスに入れて持って行く事にした。厳しすぎるといってもSランクへと到達できるかもしれない鍛錬法なのだから時間を見てやってみるのもいいだろう。自分達でやる分には気を失うまでやることはないだろうし。


 「それでは、都市間転移魔方陣の使用許可が取れ次第連絡するわね。恐らく一週間程度だと思うわ。それまでに準備を終わらせておいて頂戴」


 お婆ちゃんとお爺ちゃんに見送られ、俺達は馬車へと乗り込んだ。一週間か、準備もだけど暫くギルドの依頼も受けていないし何か一件くらいは受けてもいいかもしれない。

 馬車の扉を閉める時にお婆ちゃんが思い出したかのように一言付け加えた。


 「あ、そうそう。トーヤとアリスティアは何時結婚するのかしら?今度来た時は予定を教えて頂戴ね」


 「「えぇぇ?!」」


 突然の台詞に俺とアリスは揃って変な声を上げた。いきなり何言うんだお婆ちゃん!焦っている俺達を見て姉が大笑いしていたが、お婆ちゃんは姉を見て止めの一言を放った。


 「笑っていますけど、チアキも噂のバトラさんについて今度きっちり聞かせてもらいますからね?」


 お婆ちゃんの言葉に姉は焦りながら「まだそんな関係じゃ」などと意味の分からない言い訳をしていた。人事だと思っているからだ、俺は少し溜飲を下げ姉の焦る姿を見ていた。

 意表を突いた言葉を受け、馬車が出発してからも俺達は無言だった。姉はバトラさんとの交際をお試しだと言っていたが、あれからどうなったのだろうか?二十歳を過ぎているのだし本気で考えてもいいんじゃないだろうかと俺は思う。


 俺は横のアリスを見ながら自分達の事を考える、アリスと添い遂げるのは問題ない。ただ、両親の捜索が決着着いてからというのが俺の考えだ。だけど、アリスにはその思いを伝えていないのに気付く、一度ちゃんと話し合うべきだろうかと思いながら馬車の窓へと目を向け、外に流れる街並みを眺めていた。

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