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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第八十八話 Sランク式鍛錬法

 その晩はお婆ちゃんの屋敷に泊まることになり、いつもより早い時間に就寝する事になった。俺は楽しい時間と晩酌に少しお酒を飲んだ事により気持ちよく眠りについた・・・のだが。


 「朝だぞ、トーヤよ!さあ、朝の訓練の開始である!」


 バーン!という大きな音と共に俺の部屋の扉が開け放たれた、俺はびっくりして布団から飛び起きるとそこには胸鎧を着けた先王ことお爺ちゃんが立っていた。


 「うぇ?!お爺ちゃん何事?」


 「何事も何も、もう起床の時間は過ぎておる!訓練を開始するからこの鎧を着けて中庭へ来るのだ」


 お爺ちゃんはそう言い放つと何やら鉄の塊にしか見えない何かを置いて部屋を出て行った。時間を見るとまだ朝の4時だった。俺寝たの0時だったよな・・・。

 俺は眠い眼をこすりながらもお爺ちゃんの置いていった塊を見る、それは胸鎧と手足につける篭手と具足だった。一つ手に取って見るとズシリと重い、どうやらひとつあたり10kgはありそうだ。


 「これつけてこんな早朝から訓練かよ・・・」


 俺はゲンナリしながらも逆らうわけにもいかず胸鎧とおもりを着けて中庭へと向かう。総重量50kgはある為、身体強化をしなければまともに歩くのも辛い。

 俺が中庭へ出るとお爺ちゃんが柔軟体操をしていた。俺は少し離れた所で同様に柔軟体操をしていると少し遅れて姉とアリスも中庭へとやってきた。


 「トーヤ・・・、この鎧重過ぎるんだけど」


 姉の呟きが聞こえたのかお爺ちゃんが体操を中断して俺達の近くへとやってきた。


 「安心せい、トーヤには50kgだがお主達には半分の25kgのを用意しておる。トーヤは身体強化が得意と聞いておるのでな。今日はそれを着けての訓練を行う、様子を見ておもりは増やすから覚悟しておくのだな!」


 俺達はお爺ちゃんの言葉に愕然とした、今でも十分重いのに更におもりを増やすだと?俺は何とか回避する方法が無いかと思いながら尋ねた。


 「お爺ちゃんも鎧つけてるけど、それも徐々に重くするの?」


 「いや、これは既に150kgは越えておる。普段の儂の身体能力に合わせておるからな、お主達は初めてだからこれから徐々に丁度良い重さを見極めんといかん」


 150kg!既にお爺ちゃんの二倍を越えるおもりを着けていると言われ、俺は反す言葉が無かった。もしかしてこのまま行けば俺も100kgとか付けられるのだろうか。姉とアリスは下手な事を言うと薮蛇になると思ったのか黙って身体強化で重さに耐えながら柔軟体操を始めた。


 因みに、なぜおもりを着けるのか尋ねたのだが、返ってきた回答は驚くべきものだった。


 「戦や冒険中は全身鎧を着けた仲間を担いで逃げる場合もある、そんな時に重いからといって見捨てるようでは冒険者としては二流だ。どんな状況でも最大限力を発揮できるよう考案された鍛錬法なのだよ」


 全身鎧の負傷者を担いで逃げる状況ってどんな時にあるんだよ!そんな心の叫びは口から出ることは無かった。冗談かと思っていたがお爺ちゃんの表情は真剣そのものだ。長い人生の中で冗談みたいな状況が幾度と無くあったのだろうか。


 結局俺達はしぶしぶ訓練を開始することにした。実際この鍛錬法でお爺ちゃんはSランクに相応しい体力や魔力を得たらしいので一日くらいは付き合ってみようと思ったからだ。

 まずは中庭をランニングするのだが、鎧の重さに加えて砂をいれた袋を担いで走らせられた。重さは30kg程だろうか?身体強化が得意な俺はまだ余裕があるが、既にアリスや姉はかなり辛そうだ。限界まで走らせられ、疲れたら数分休憩し重さを変えて更に走るを繰り返す。どことなく学生の頃の部活を思い出しながら俺達は体力向上の鍛錬を三時間程行った。


 「これを毎日行うと基礎体力と同時に身体強化の魔法が強化されるので明日以降も続けるように」


 お爺ちゃんは俺達にそう告げると次々と新しい鍛錬法を俺達に教えていく。殆どは限界まで肉体に負荷をかけての鍛錬法だったので午前中くらいで俺を含め三人とも地面へと倒れていた。


 「ふむ、この程度で八時間かかるか。慣れてきたら今日行った鍛錬を二時間で終えるように意識してやるとSランクに成れるぞ!」


 化け物か・・・、俺はゼェゼェと息を切らせながらお爺ちゃんを睨む。これを二時間とか人間じゃないだろう、そう重いながら疲労からか意識が遠のくのを感じた。


 どこか遠くで女性の声が聞こえる・・・。女性の声を聞きながら俺の意識が泥沼から浮上する。意識がはっきりすると声の主がお婆ちゃんだということに気付いた。周囲を見るとソファーに横にされた状態でアリスと姉が横になっていたのが見えた。どうやら気を失った後屋敷の人かお爺ちゃんに運ばれたのだろう、俺は疲れきった体を身体強化で無理やり動かすと上体を起した。


 「全く!あれ程やり過ぎないように言ったじゃありませんか?あなたの鍛錬法に合わせて今まで何人の騎士達が逃げたと思っているんです?!」


 どうやら俺達が倒れこんでいるのを見てお婆ちゃんがお爺ちゃんを叱っているようだ。というか、昔からこんな鍛錬法を皆にやっていたのか、逃げるのも頷ける。


 「そうは言うが、この鍛錬法を続けた者達はドラゴン相手でも他国相手でも負けなしではないか。孫達がこの鍛錬法を続ければいずれ儂に続くSランクに・・・」


 「だからと言って気を失うまで酷使させる事は無いでしょう?そもそもレオハルトもハルティオも、城の孫達でさえ忙しさを理由に近づかなくなったのは貴方の所為では無くて?!」


 どうやら現王や他の王族もこの試練を通ったようだ、続ける事は出来ずに仕事などを理由に鍛錬に付き合う事から逃げたようだが。

 気持ちはよく分かる。こんな方法を毎日やってるお爺ちゃんが異常なだけで普通なら耐えれるものでは無い。そんな気持ちを抱きながら俺はソファーへ再び横になり体の疲れを少しでも取るために身体に魔力を流して回復に努めた。

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