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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第五章 探索編
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第八十六話 謁見

 屋敷に入りロビーへと辿り着くと、そこには感じた事の無い威圧が満ちていた。その気配を目の当たりにした俺達は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。ロビーの中央には只事では無い威圧を放つ老人が立っていた。


 「儂がファレーム二代目国王、ハルディオス・アクア・ファレームである!」


 屋敷に入った俺達を出迎えたのは先王自らであった。広いロビーの中央に軍服をきっちりと来て腰にも帯剣した状態で仁王立ちしていた。俺は威圧に圧倒されながらもふと疑問が頭を過ぎる、あれ?先王って療養中じゃなかったけ・・・。


 「あなた!療養と皆に言ってあるのになんでここで待っているんですか?」


 先王の姿を見るや否やお婆ちゃんが怒気を含んだ声を上げる。その声に先程まで放たれていた威圧が嘘のように掻き消えた。


 「いや、だがなお前。孫が尋ねてきてくれると言うのにベッドで会う訳にもいかんじゃろう」


しどろもどろに答えるその姿には先程のような王としての威厳は皆無だった。しばらくお婆ちゃんに説教を受けた先王は侍女とお婆ちゃんに連れられ奥の部屋へと姿を消した。


 「皆様がた、旦那様が大変失礼を致しました」


 そんな俺達に一人の男性が声を掛けてきた、四十くらいだろうか、執事服をきっちりと着こなして俺達に一礼をした。頭を上げた男性の顔は見知った人の面影があった。


 「あれ?もしかしてセバスさんの・・・」


 「はい、私ハルディオス様とレイネシア様の屋敷の執事を務めています、スチュワード・ホーネットと申します。父がいつもお世話になっております」


 「あ、ご丁寧にどうも。俺はトーヤ、こちらが姉のチアキと同じチームのアリスです。何時もセバスさんにはお世話になってます」


 どうやらセバスさんの息子さんのようだ。俺は挨拶をしながらスチュワードさんの名前って「家令」とか「執事」って意味だったよなぁと思いながら考えていた。


 「旦那様は奥様が暫くお相手しているでしょうから、皆様はこちらへどうぞ」


 そう言うとスチュワードさんが俺達を客間へと案内した。どうやら先王がお婆ちゃんに連れられていった事には慣れているようだ。しかし、さっきの先王は嫌に元気だったな。俺はスチュワードさんに先王の容態を聞いてみることにした。


 「あの、スチュワードさん。さっきの先王は療養中という風に見えなかったのですが・・・」


 先程放たれた威圧にしてもAランクのバトラさん達と比べるまでも無くとても強い力を感じた。七十歳に届きそうな人が出すような気配じゃないよな。


 「旦那様は三年前にお体を悪くされたのは事実でございます。その際に気が弱くなられ王位をお譲りになられ隠居なさいました。しかし、昨年持ち前の体力で回復なされ今では暇をもてあましておりまして・・・」


 どうやら今現在は元気らしい。通りであの威圧が出せるわけだ、パッと見だけど体も未だに鍛えているのではないだろうか?そんな話をしていると、扉をノックする音が聞こえて侍女の一人がスチュワードさんに何か耳打ちをした。


 「お待たせ致しました。どうやら旦那様と奥様の御支度が終わったようです。もうすぐこちらへお越しになられます」


 スチュワードさんが俺達に告げると程なくして先王とお婆ちゃんが連れ立って部屋へと入ってきたので俺達は慌てて立ち上がる。


 「トーヤ、チアキ。先程は大変失礼致しました。改めて、主人を紹介致します。この人がファレーム国先王、ハルディオス・アクア・ファレーム。貴方達のお爺様になります」


 「うむ、堅苦しいのは好きではない、楽にするといい。儂がハルディオスだ」


 俺達が礼をするのを見て先王が口を開いた。先王はソファーに座ると俺達にも座るよう勧めた。先程ロビーで見たような軍服姿ではなく、上質な生地ではあるが少しラフな格好だった。


 「初めまして、トーヤ・イガラシと言います」

 「姉のチアキ・イガラシです。母、リティアラの娘です」

 「私はフレイア領主の娘、アリスティアと申します」


 俺達が順に挨拶をすると、先王はアリスの方を向いて口を開いた。


 「おお、フレイアと言えばロサワルド殿のご息女か。魔法学院の卒業式で代表を務めていた姿を覚えておるぞ。ロサワルド殿はご健勝か?」


 先王の言葉にアリスが驚きつつも返事を返した。


 「まさか私のような者を覚えていらっしゃるとは光栄ですわ。父は変わらず統治に励んでおります」


 どうやらアリスが学院を卒業する際に卒業生代表をした時の事を言っているようだ。一年以上前の事だろうによく覚えていたものだと感心した。


 「さて、トーヤとチアキと言ったな。レイネシアによればリティの子供であることは証明済みだとか。そうすると、儂の孫という事でもある。色々と話を聞かせて欲しいのだがな」


 先王に聞かれるままに俺と姉は地球での出来事や覚えている限りの母さんの事を話して聞かせた。所々分からない単語について説明を求められたがそれ以外は黙って聞いていてくれた。


 「なるほどのう、魔法が存在せずカガクとやらで栄えた異世界での暮らしか。何より聞いた限り幸せな家庭を築いていたようで安心したわ」


 先王は俺達の話を最後まで聞き終わると顎鬚あごひげを撫でながら頷いた。


 「だが、最後に行方が分からなくなったのが謎じゃな。よかろう、儂の権限で都市間の転移魔方陣の使用許可を発行しようではないか」


 先王の言葉に俺は喜んだ、あっさり発行して貰えたのも嬉しいが変に継承権などの問題が起きなかったのは嬉しかった。そんな俺を見て先王は「だが」と言葉を続けた。


 「だが、儂の権限で発行できるのは一回が限度じゃろう、それ以降は息子にも話を通さんと厳しいのだ。すまぬが一度である程度目星がつかん場合は息子にも話をする事になるだろう」


 たった一回か、だが国の重要施設である転移魔方陣を使うのだから一度でも助かるのも事実だ。俺は先王に礼を言うと頭を下げた。


 「ありがとうございます、先王のお力を借りることができて助かります」


 頭を下げた俺を見て先王が顔を顰めた。敬語が可笑しかっただろうか?慣れない言葉使いだから変な言い方になって機嫌を損ねたかと俺は焦った。


 「堅苦しい言い方じゃなくのう・・・。レイネシアにはお婆ちゃんと呼んでおるそうじゃないか?儂の事もお爺ちゃんと呼んでくれていいんじゃよ?」


 そっちか!俺は心の中で突っ込みを入れながらも機嫌を損ねたのでは無いことに安堵した。姉と顔を見合わせると二人でアイコンタクトを取り同時に言った。


 「「はじめまして!お爺ちゃん」」


 俺達の言葉に先王、いやお爺ちゃんは破顔して好々爺のような笑みを浮かべて喜んでくれた。

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