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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第四章 成長編
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第八十話 事後処理

 その後は村娘達の怪我を治したり食事を作ったり、可能な限り一人で悩ませないようにアリスと姉には話し相手になってもらったりしていた。俺は殺したゴブリン達を一箇所に集めて燃やしに外へと出ていた。他にもゴブリンが居て戻ってくるかもしれないし、他の魔獣が血の臭いに誘われて近寄るかもしれないから見張りも兼ねている。俺は集落を見回りながらゴブリンの足を掴んで引きずりながら集落の外れへと死体を集めて燃やした。


 娘達が落ち着いたら今度は亡くなった遺体を埋葬する準備と、この集落の今後について娘達と相談しなければならない。遺体の埋葬はいいとして、娘達が今後どうするのか・・・。ここに住み続けるのは男手が無い限り無理だし、魔獣から襲われる心配もある。といって、近隣の村だと魔獣に襲われたと村の生き残りという周囲の視線が気になるかもしれない、少し離れた場所まで移り住んだほうがいいのでは無いかと俺は考えているが無理強いもできないしなぁ、俺はそんな事を考えながら各家を回って遺体を男女別に二軒の家へと運んだ。


 遺体の状態は酷く、食い荒らされていたりした部位もあって顔の判別が付かない人も居た。時間が経つと腐敗も進むので一度アリスに水系魔法で凍らせて貰った。

 俺は翌朝、村娘さんたちが皆起きて朝食を取った後に今後について話をした。


 「皆さん、少しは気持ちが落ち着いたでしょうか?性急だと思うけど亡くなった方の埋葬を行いたいと思います。正直、遺体の状態が酷くて見るのはお勧めしませんが・・・、どうしてもお別れをしたい方だけ俺に着いて来てください」


 俺がそう言うと、八人の内三人はどうしてもと頼まれたので遺体を安置している家へと連れていく。氷の魔法で低温にしていたのと、顔だけは見て分かるように血を拭っておいたので身元は分かるはずだ。

 三人の娘達は各々自分の家族、恋人と思しき遺体へと縋り付くと大声で泣いていた。俺は家族を失った経験が無いから皆の気持ちは正確には理解できない、だがアリスをもし失ったらと考えれば少しは悲しみを理解できたような気がした。


 暫くしてお別れが済んだのだろう、三人は俺に礼を言うと他の皆が居る家へと戻って行った。俺も一度みなの所へ戻ると今後について話し合うことにした。


 話し合いはその日の深夜まで続いた、他の村に身寄りが居てそこへ戻る人はまだいいのだが、身寄りが居らず途方に暮れる人も居た。集落にある遺品などを集めて八人に持たせる事にしてもそんなに長くは生活できない程度の財産しか無い。

 身寄りが居る人についても近隣に村がある人は途中寄って行くにしても離れた村からここへ来ていた人は一旦王都まで着いて来てもらうことにした。事情を説明すれば神殿などで寝泊りはさせてくれるだろう。八人の内、一番困ったのが両親共に殺されて一人だけ残された十歳の少女だった。

 若すぎて逆に乱暴されなかったようだが、両親が死んでしまって身寄りが無く出身の村がどこかすら分からない。王都へ連れていっても神殿から孤児院へと送られてしまうだろうとアリスが言っていた。


 その晩、皆が寝静まってから俺は一人眠れずに家の外へと座っていた。一人残された少女の事が気になって仕方が無かった。一介の冒険者に過ぎない俺には何もして上げれることなんて無い、それは理解しているのだけど感情が十歳の少女を見話す事を拒否していた。


 「トーヤ、眠れないんです?」


 唐突に背後から声をかけられた、考え込んで居たとはいえ声を掛けられるまで気付かなかった。俺は驚きを隠しつつ声をかけてきたアリスへと振り向く。


 「ああ、一人だけ残った少女・・・ティアだっけか。彼女の事が心配でね」


 アリスは俺の隣へ腰を下ろすと肩を寄せて来た、俺は彼女の肩へと手を回すと寒くないように毛布を俺達の肩へとかけた。


 「彼女だけ行き場が決まりませんでしたもんね・・・、十歳では職に就く事も出来ませんし」


 アリスがそう言って俺の肩に頭を載せた。そうなのだ、十歳では王都へ連れて行っても職に就く事は出来ない、そうすると必然的に孤児院に預けられることになる。

 両親を失ったばかりの子供が孤児院に預けられると考えると、少女の精神状態が心配なのだ。両親を失った悲しみ、それを理解できない周囲や慣れない環境、それらが積み重なって少女にどれだけの精神的な負担を負わせるかを考えると・・・。


 「ねぇ、トーヤ?職には就けないですけど、メイド見習いという事は出来ますよ?十歳ならリンちゃんと歳が近いからお友達になれるかもしれないですしね」


 アリスからの信じられない台詞に俺はアリスの方を見て驚愕の顔をした。それは俺も考えなかったわけじゃない、だけど見ず知らずの人が困っていたからと自分で背負い込むのはどうなのかと思ったからだ。確かに彼女一人だけなら助けられる、他の八人が全員身寄りが無かったら俺にはどうする事もできなかっただろう。精々王都へ戻ってギルドに報告して国に任せるか、途中の村の村長あたりに相談する程度だった筈だ。


 「トーヤが悩んで居る事は分かりますよ。でも可哀相だと思っているんでしょ?年頃の女性を困っているからと娶るなんて言われたら反対はしますけど・・・、年端もいかない少女の一人くらいなら私達でも面倒見れると思いませんか?次あったときはその時に悩んで最適な結果を出せばいいんです。今は最適とはいかないけれど、この方法が一番実現可能だと思っただけです」


 アリスは自分で言ってることに照れているのかそっぽを向いてそう捲くし立てた。そうだな、俺は十歳の少女を見放して孤児院へ預けるという選択肢では納得できない。アリスの言うように心のケアや今後を考えると、まだ俺達の家へ預かったほうが彼女にとっていい事では無いかと思っていた。


 「まあ、ティアちゃんの気持ちを聞いてからですけどね?知らない人に預けられたり孤児院に行くよりは村を救った人と一緒に居る事のほうがちょっとはマシじゃないですか?」


 俺はアリスの頭を抱き寄せると耳元で礼を言った。


 翌日、姉に昨晩俺とアリスが話した事を説明して理解を求めた。姉は心情的にはわからなくも無いんだけどと暫く考えていたが、最終的にはメイド修行という意味でならと了承してくれた。

 俺は少女ティアを呼ぶと、俺達の考えを少女に伝えた。少女は最初は意味がわからなかったようだが、最終的に神殿や孤児院へ行くよりはと納得してくれた。俺は嫌になったり自分でやりたい事が見つかったならその時に相談に乗ると伝えた。別に未来を俺達が決めるわけではない、ただ今このときの環境を提供してあげたいだけなのだ。


活動報告にも書きましたが、一話からの見直し作業を行います。

詳しくは活動報告をご覧ください。

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