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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第四章 成長編
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第六十七話 ワイバーン

「そ、それでソフィさんは親父とはどういう関係だったんですか?四十年も前という話だったけど」


 俺の言葉にソフィさんは「昔話は長くなるわよ?」と前置きしてから話をしてくれた。


 「もう魔法具の製作自体は二百年以上やっているんだけど素材集めも自分でしていたのよ。それで五十年くらい前に彼・・・あなたのお父様から製作の依頼を受けたの」


 ソフィさんの話を纏めると当時十代だった親父から魔法具の製作を依頼され、当時まだ王では無かった親父も素材集めを共に行い、一週間程度だが冒険した仲間であったらしい。


 「そして、その杖を贈ったのよ。王位に着く直前だったから即位のお祝いってところかしら」


 その後ソフィさんは魔族の国を出たのだが、風の噂で親父が退位して表舞台から消えたという話を聞いたそうだ。


 「それが四十年も経った今その子供らに会うなんてね、長生きはするものだわ」


 エルフなので長寿なだけだろうと突っ込みたかったが黙っていた。親父が退位した理由が駆け落ちって聞いたらどんな反応するんだろうな・・・。

 その後暫く昔話をされたが、親父の今を知っているか聞いたところ知らないと呆気なく返された。そう簡単に行方が分かるわけ無いかと沈んでいると。


 「事情は分からないけど、彼を探しているなら彼に頼まれて作った魔法具があれば分かるのに」


 ソフィさんが親父に作った魔法具は対になっていて相手のいる方向が分かるようになっているものらしい。ダンジョンや狩場などで逸れた時に使うものであまり長距離だと意味が無い物らしい。


 「こう、このくらいのメダリオンでね?絵柄が六芒星ろくぼうせいに龍・・・」


 「え?!」


 ソフィさんの言葉を俺の声が遮った。


 「どうしたの?」


 姉が俺の声に驚いて聞いてくる。日本で居た時の倉庫で俺はそれを自分のアイテムボックスに入れた記憶があると皆に話す。


 「ニホン?何処か知らないけれどもし持ってるなら見せてくれないか?」


 ソフィさんに促され、俺は自分のアイテムボックスからメダリオンを取り出した。それを手に取ったソフィさんは嬉しそうにメダリオンを見つめていた。


 「懐かしいなぁ、私が作ったメダリオンだよこれは。一枚しか無いってことはもう一枚が君達のお父様が持っている可能性が高いだろうな」


 思わぬ所から親父達の消息に関する進展があった事に俺達は喜んだ。既に武器を作りに来ていた事はすっかり頭から抜けてしまっていた。


 「これはね、こうして魔力を指先にこめながら六芒星ろくぼうせいをなぞって・・・」


 ソフィさんが説明をしながら魔法具を起動させると、メダリオンに光が灯る、暫くするとメダリオンの外周の一点だけに光が集まってくる。それはメダリオンの向きを変えても一定の方角に光を移動していた、これが対になるメダリオンの位置なのだろうか?


 「こうして使うと相手の場所が分かるものなんだけどね?残念ながら方角だけ。距離なんて分からないから離れすぎてると漠然とし過ぎてわからないのよね」


 「いいえ、これだけでも十分手がかりになります。地図と合わせてどの方角か分かれば親父達を探す方向が絞れますから・・・」


 俺はソフィさんにお礼を言うとメダリオンを返して貰った。俺の手の中で暫く光っていたメダリオンは一分もすると光が消えてしまった。教えて貰ったとおりに魔力を流すと、同じ様に光が先程と同じ方向を指した。

 俺は姉と顔を見合わせてどちらからと無く微笑んだ。姉の目には少し涙が浮かんでいるように見えるが気のせいでは無いだろう。


 俺はソフィさんに礼を言ってそろそろ帰ると伝える。外から射し込んでいた光は大分傾いていて夕暮れが近づいていた。するとソフィさんが呆れたように俺達に話しかけた。


 「本来の目的だった魔法具製作は後日改めて聞こう、その時にまた色々話が出来ると私も嬉しいな」


 「「「あっ!」」」


 俺達三人はその時やっと本来の目的を思い出して揃って声を上げた。そんな俺達を見てソフィさんの笑い声が部屋にいつまでも響いていた。


 後日、改めてソフィさんの家を訪れた俺達は姉用に杖を作って貰うよう頼んだ。そして学院へお婆ちゃんを尋ねるとソフィさんとの出会いやメダリオンの事を説明した。


 「成る程、持っているのが本人かは判らないけれど手がかりにはなるわね」


 お婆ちゃんは俺の説明を聞いて呟いた、確かに親父が持っているとは確定していない。だが誰かの手に渡っていたとしてもその人から情報を得ることは出来るだろう。


 「このメダリオンは預かって捜索に出ている者へ指示をだすわ。トーヤとチアキは情報が纏まるまでは今まで通り冒険者を続けなさい。体には気をつけてね?」


 俺達がメダリオンを持っていても現状では探しにいくのは無謀過ぎるのでお婆ちゃんに預ける事にした。隣国なのか、それとも大陸の果てなのか・・・それすら判って居ないのだから。

 学院を後にした俺達は家へと戻りながら光の示した方角を見ていた。


 「アリス、あっちの方角には何があるのかな?」


 俺の突然の問いかけにもアリスはしっかりと答えてくれる。


 「あちらは人族の国がいくつかあったあと、深遠の森という深い森が続いていますね。その更に奥は魔族の国です」


 アリスの言葉に俺は頭の中で考える。人族の国は既にお婆ちゃんの手で情報を集めていただろう、それで今まで何も集まらなかったと考えると深遠の森か魔族の国に居る可能性が高い。

 深遠の森はBランクやAランクの魔物が闊歩している悪夢のような森だと聞いたことがある。そこを越えるにはもっと冒険者としての実力をつけないといけないな。俺はそう考えをまとめると二人と家へと帰っていった。


 翌朝からは冒険者ギルドへ行き、依頼を受けるべく掲示板を見て回る。先日の人喰鬼オーガなどのように緊急性が高い依頼が無いかどうか見ながら自分の経験になりそうな依頼を探していく。


 この日俺達が受けたのは王都から片道五時間程離れた郊外に現れるワイバーンの討伐依頼だった。ワイバーンは本来群れで動くらしいのだが、そこに現れるのは一匹だけなのだそうだ。どうやら群れからはぐれた個体らしく遠距離攻撃が得意な冒険者を希望しているらしい。


 準備をして馬を借りて三時間程進む、人喰鬼オーガ退治の時も馬には乗っていたが毎回レンタルよりは自分用を買ったほうがいいのだろうか?そんな事を考えながら何事も無く依頼のあった村へと着いた。


 「おお、ワイバーンを討伐しに来て下さった冒険者の方ですね?」


 村に着くと村長が俺達を出迎えてくれ、状況を教えてくれた。今の所人的被害は無いが家畜が数頭やられたらしく、小さな村としては看過できない損害なのだそうだ。俺達は今まで現れた時間や方角などを聞き、村の外れにある小屋の中から狙撃する事にした。

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