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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第四章 成長編
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第六十四話 人喰鬼退治2

 俺達が人喰鬼オーガをあっという間に三匹倒した事で防衛していた冒険者達の表情に明るさが戻った。俺達みたいな若い奴らですら倒せるのだという事実が冒険者としての琴線に触れたのかもしれないが、何にせよ絶望感に囚われてるよりはいいと思う。


 「後ろから魔法で援護します!冒険者の皆さんは三人一組で一体を相手にしてください!」


 村の方角から姉の声が聞こえる。俺が前線にいる内は姉が全体に指示を出している。 冒険者達が絶望感に囚われている間は防衛に専念させてはいたが、やる気が戻ったなら討って出るべきという判断だろう。正直俺一人で前線は支えれない、今はこちらの手の内が晒されていない状態での攻撃だったから三体を倒せたがここからは俺の攻撃を警戒しつつ包囲してくるだろう。そうすれば俺なんか一瞬で殺されるだろう、実際冒険者達が動けなさそうだったら一度村に退くつもりだった。だが、状況は良い方に傾いた。


 「俺を警戒して皆への警戒が疎かになる筈だ!今を逃せば倒す機会は無いぞ!」


 俺はそう叫んで村の方角から横にずれる、俺に合わせて人喰鬼オーガ共の意識が村から逸れた。俺が孤立するが回避に専念すれば少しの間は耐えれるだろうし、俺が射線上から移動した事で魔法や弓を撃つのに障害が無くなる。


 当然、姉とアリスから再度範囲魔法が人喰鬼オーガに向けて飛んだ。他の冒険者も各々魔法や矢を一斉に放っている。致命傷は与えれて無いようだが動きが鈍くなった人喰鬼オーガに向けて冒険者が六人襲いかかっていく。


 俺に意識が向いていた所為だろう、魔法の直撃と冒険者の攻撃によって更に二体が沈んだ。これで残り五体!しかもリーダーらしき一体意外はかなり魔法によるダメージが蓄積されているようだった。


 「俺が奥の一体を受け持つ!みんなは残った四体なんとか仕留めてくれ!」


 俺は皆に対して叫び身体強化へと魔力を注ぎ込む。全力で人喰鬼オーガのリーダーらしき固体に向けて駆けだした。魔道砲を牽制で放ち回避行動を取った隙に剣を叩き込むが棍棒で受けられる、どうやら石のような硬い素材で出来ているようだ。あれで殴られたら即死だろうな、そんな考えが頭に過ぎる。攻撃を受けないように回避に意識を集中する、剣で受けても一撃で折られてしまうだろうし、義手で受けても体にダメージが届きそうだ。


 俺は人喰鬼の攻撃を避けては距離を取って魔道砲を放つが人喰鬼オーガはそのことごとくを避ける。なんて回避能力だ、他の固体よりも能力が高いのだろうか?

 お互い一進一退を繰り返しながら決定打が撃てないでいた。何か一瞬でいいから奴の気を引く事が起きればいいんだが、そんな事を考えながら剣を叩きつける。そろそろ魔力が厳しくなって魔道砲は撃てなくなるだろう、身体強化のみで戦うには分が悪すぎる。


 その時、村の方角から氷の槍が人喰鬼オーガに飛んできて突き刺さった。村の方を見ると四体の人喰鬼を倒しきったらしく、アリスと姉が俺の援護に魔法を放ったらしかった。

 魔法によってダメージを受けたのだろう、人喰鬼オーガの動きが少しだが鈍くなった。俺はここぞとばかりに連撃を放ち攻撃を当てていく。徐々に奴の体に傷が増えていくが倒すまでは至らなかったが直後、人喰鬼オーガの背後から近づいた冒険者三人が奴の背中に深い傷を負わせた。かなりの深手なのだろう、奴の意識が一瞬飛んだように感じた。俺は最後のチャンスとばかりに魔道砲の照準を人喰鬼オーガーの顔面に合わせて放った。この一撃が止めとなり、巨体が音を立てて地面へと倒れた。


 「はぁ、はぁ・・・やったか?」


 俺は身体強化の魔法を解いて地面に膝を着いた。最後の魔道砲で魔力がほぼ空になってしまったので息切れと眩暈が襲ってきている。


 「どうやら殺ったらしい、完全に死んでる」


 先程背後から攻撃を与えてくれた冒険者の一人が人喰鬼オーガの首に念のため剣を突き刺してみたがピクリともしない、やっと終わってくれたらしい。


 「ふう、魔力切れ起しそうだ・・・。皆もお疲れ様、最後の攻撃助かったよ」


 俺は冒険者達に礼を言ってその場に座り込んだ。人喰鬼オーガの血が飛び散っているがこの際贅沢は言うまい。冒険者達も満身創痍だったようで俺の近くに座り込んだ。俺はアイテムボックスから水筒を取り出すと冒険者達に配り、自分も咽を潤した。


 「トーヤ、お疲れ様です」


 顔を上げるとアリスが近づいてくるのが見えた。姉は村の近くの冒険者達に水を配ったりしているようだ。皆疲れ切ってはいるようだが表情は笑顔だった、やっと脅威が去り王都へと帰れるのだ。

 村の方からは人喰鬼オーガが倒された知らせが行ったのだろう、村人の歓声が聞こえ始めている。俺はアリスに手を貸して立ち上がり村へと戻るために歩き始めた。


 「じゃあ、俺達も王都に帰ります。皆さんも道中気をつけて!」


 俺達三人は他の冒険者に別れを告げ王都へと戻る所だ。既に帰路についている人もいるし、残っている冒険者も順次王都へと向かうはずだ。

 村へ来るときに連れていた馬に跨り、王都へと帰る。今回の人喰鬼からは角くらいしか素材として価値のある物は無い、他の冒険者に七体分の素材は譲り俺達はリーダー格の奴の角だけを頂いた。どうせギルドに戻れば依頼報酬が他の冒険者より貰えるのだ、特に執着はしていない。


 村からまた三日かけ俺達は王都へと戻った。帰り道は不思議と一匹の魔物にも遭わなかった、どうやら人喰鬼オーガの角を持っている事で弱い魔物は俺達を避けているようだ。


 「魔物避けにはいいけど、討伐依頼の時は逆に迷惑だな。魔物に遭えないし」


 俺はそんな冗談を言いながら門を潜り王都へと入る。一週間ぶりなのでさっさと家に帰って風呂に入りたいがギルドでは報告を待ち侘びているだろうし先に冒険者ギルドへと足を運んだ。


 「トーヤさん、皆さん。お疲れ様でした、こちら報酬の10,000エル(約100万円)です。あと成功のカウントを約束通り三ポイントつけました。また何かあった時はお願いしますね」


 ギルドでは受付のマリナさんが労いの言葉と共に報酬を払ってくれた。疲れているだろうからと詳しい報告は翌日で良いといってくれた。俺達は礼を言い、家へと帰る事にした。

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