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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第四章 成長編
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第六十二話 人喰鬼(オーガ)

 冒険者ギルドを出る際にマリナさんに呼び止められた。何かと思ったらお婆ちゃんからの指名依頼の報酬をまだ受け取っていなかったのだ、すっかり忘れていた。


 「成功報酬分のお一人2,000エル(約20万円)です、お受け取りください」


 既に前金で1,000エルを受け取っていたので成功報酬分だけを受け取る。相場よりは安いと言われていたが、何だかんだで俺は義手の改造と魔道鎧を手にいれたし姉もアリスも魔法の技術が上がっているので金額はどうでもよかった。まあ、生活があるから金は必要だけどね・・・。


 「ああ、ついでに何か依頼見ていくか。アリスや姉貴の強化された魔法とかも見たいしな」


 俺はそう言い、二人を連れて依頼書の張り出されている掲示板へと向かった。次のBランクに上がるまで50回は依頼受けないといけないんだよな・・・、学院へ入る前までに10回はやっているがそれでも後40回か、かなり掛かりそうだけど一個ずつ地道に行くしかないよな。


 「一ヶ月も掲示板見てないと依頼内容がガラっと変わってるな」


 「そうですね、全体的な傾向を見てから何を受けるか決めましょうか」


 俺が掲示板を前に呟くと隣に来たアリスが言葉を受けて返事をくれた。何気に腕を絡ませて俺に寄り添っているアリスに俺が嬉く思っていると反対側から姉の肘打ちを食らった。


 「何デレっとしてるのよ。ちゃんと依頼書見なさい」


 何だよ、姉だってちょくちょく学院から抜け出してバトラさんに会いに行ってたくせにとは思うが口には出さない。周囲に人がいるからあまり個人情報に繋がる事は言えないのだ。俺は気を取り直し掲示板を見ていく、以前より全体的に魔物の討伐が多い気がするな。依頼書のほとんどはEランクやDランクの魔物が殆どだが、中にはCやBランクの魔物も見受けられる。


 「久しぶりだしこのCランク辺りの討伐依頼受けてみるか・・・」


 俺はそう言うと二人も頷いた。俺は緊急性の高い依頼書が無いか注意して見る、Cランク辺りから危険性が跳ね上がるので魔物によっては緊急性が高くても冒険者が敬遠する場合がある。そうすると被害が拡大して犠牲者が増えたりするのだ。


 「この王都から三日ほどの場所にある村に出るっていう人喰鬼オーガってのが気になるな、ギルドで受理してからもう一週間経ってる、これってかなりヤバイんじゃないか?」


 俺の言葉に二人が同じ依頼書に目を通す、人喰鬼オーガは名の通り人を襲って喰らう巨人タイプの魔物だ。武器は棍棒などだがその怪力で恐るべき殺傷力を持つ。あと痛みに強くて多少斬っても平気で動ける。


 「人喰鬼オーガですか、村の近くに出ての一週間も経っていると村そのものが滅んでる可能性もあるわね・・・」


 姉が依頼書を読んでから唸る。それ程危険な魔物なのに誰も受けなかったのだろうか?俺は気になって依頼書について窓口にいるマリナさんに尋ねることにした。


 「ねぇ、マリナさん。この依頼書なんだけど誰も受けてないの?何か情報あったら頂戴」


 俺が尋ねるとマリナさんは依頼書を受け取ると苦い顔をした。


 「これは既に数チームが向かって失敗している依頼なのよ。Cランクのチームが3つ向かって全て敗走、今は村に立てこもって防衛に専念しているわ。お陰で村の被害は食い止められてるけど何時までも立てこもっていれないから応援を回す予定になっていたの」


 「Cランカーが3つ行ってるなら一つのチームが防衛して残り二つのチームで討伐できないのか?」


 俺の疑問にマリナさんは一層苦い顔をして答えてくれた。


 「人喰鬼オーガを纏めている固体が居るようなのよ。闇雲に襲ってくるんじゃなく連携を取るものだから厳しいみたい、あと最初に敗走した時に受けた怪我で全員が動ける状態じゃ無いみたい」


 俺はマリナさんの言葉を受けて唸る。普通のCランカーでは無理か、合宿と学院での成果を試すには丁度いいか?俺は再度マリナさんに聞く。


 「俺達が受けてもいいかと思っているんだが、難易度が高いなら追加で何か報酬でないか?」


 俺の言葉にマリナさんがしばらく考えてから頷いた。


 「トーヤ君達はアイテムボックスの魔法習得してたわよね?村への支援物資と怪我人への治療薬の搬入を追加で依頼するわ、そして人喰鬼オーガの討伐が完了した時は依頼達成の成功数を三つにしてあげる、これでどう?」


 村への物資搬入は同時進行で行けるから問題は無いし、依頼達成の数が増えるのは願ったりだ、俺は頷いて隣に居たアリスと姉を見る。二人とも頷いてくれたので請ける事に決めた。

 報酬についての細かいやり取りをアリスに頼み、アリスとマリナさんは詳細を打ち合わせていた。


 結局、依頼は人喰鬼オーガ討伐と村への物資搬入とで全員で10,000エル(約100万)となった。あとは成功すると依頼達成の数がプラス1されて3つ貰える。そうと決まれば急いで村へと向かう準備をする、ギルド側も送る物資を調達する為に動くそうなので出発は翌朝と決めた。


 翌朝、俺達はギルドへと向かい用意された物資を受け取るとアイテムボックスに詰めた。村の人口は五十人程と割りと多い村だったのでかなりの量だ。全て収納すると俺達は馬を借りて走ることにした、片道三日もかかるので馬車や徒歩では時間がかかり過ぎるからだ。ちなみに馬のレンタル代はギルドの支払いとアリスが交渉してくれた、アリスは頼りになるなぁ・・・。


 馬を時折休憩させながら俺達は可能な限り急いだ、尻や太ももが痛いが身体強化や治癒魔法を使って出来るだけ急ぐ。村まであと半日という所で俺達は一旦立ち止まり地図を広げると三人で作戦会議を始めた。


 「まずは村全体が見えるような丘があるからそこで様子を見ましょう、現在も包囲されているようなら対策を考えないとね。周囲に人喰鬼オーガが見えなかったら先に村に入って物資を降ろしてからの討伐開始ね。他の冒険者の傷が癒えれば力になってくれるだろうし」


 姉は地図を広げて作戦を俺達に伝えた。今現在の村の状況が分かっていないだけに姉の言う事はもっともだろう。俺達は村の近くにある丘に向かって馬を進めた。

 暫く進むと丘が見えたが周囲に人喰鬼オーガの姿は見えないようだ、俺達は馬から降りて木に身を隠しながら村の方へと移動する。丘の上から見ると村の様子が一望できた、外周の建物が倒壊しているのは人喰鬼オーガに壊されたのだろうか?村の中心部に近い所に人影が見える、途中にバリケードらしきものが見えるのであそこが防衛線だろうか?

 どうやら村は全滅だけはしていないようだ。俺達はそっと後ろに下がり馬に乗って村へと駆け出す。俺達が村へと近づくとバリケードの近くにいた人が慌ててバリケードを一部開けてくれた。中へ入ると直ぐにバリケードを直しに数人が取り掛かる、冒険者風の男が一人俺達に近づくと話しかけてきた。


 「君達は冒険者ギルドからの増援かい?他にメンバーは?」


 俺は馬から降りると事情を説明した、冒険者風の男は安堵の溜息を付くとお礼を言って来た。


 「支援物資と薬は本当に助かるよ、村の食料もかなり少なくなっていたんだ。それにけが人もかなり重傷の奴が居てね・・・、俺達の中には治癒魔法は使えても軽傷くらいしか対処できなかったんだ」


 男の言葉にアリスと姉を怪我人の居る所へと向かわせる。俺は被害状況や人喰鬼オーガの数や状況を尋ねる、作戦にも情報は必要だしギルドへと報告する為にも必要なのだ。最悪はアリスに王都まで転移で飛んでもらい増援を呼ぶ事も出来るし、ここで治療できない人を王都に飛ばすことも出来るだろう。

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