第六話 彼女と義腕創造
お読みいただきありがとうございます、まだまだツマラナイとは
思いますが、よろしければ見てください。
夜が明けた翌朝、今日は土曜なので学校も姉の会社も休みだったので三人で素材が何がいいかと意見を出し合った。
やはり肉体を再現するのだから肉だろう。ただ、アリスによれば無機物でも再現可能らしい。
金属や木材などでも魔法での成型ができるので用途や強度の有無に応じて何種類か用意するのがベストではないかという意見だ。
ひとまず、肉は安く手に入る鶏肉を業務用のスーパーから仕入れることにした。他の木材や金属はホームセンターへ行って仕入れることにしよう。
上腕の途中からの重量は大体3kg程度らしい。同じくらいの鶏の胸肉を業務用のスーパーから購入した、なぜ胸肉かって?一番安いからだよ。それと、ホームセンターから木材と金属を同等数購入した。肉は一塊になっていないとダメらしいので姉が糸で適当に縫合して40cmくらいのブロック肉にした。
魔法は俺の体の切断部にアリス特性の魔法インクを使うことになった。これは特殊な製法で作られていて水に濡れても消えないし、特殊な液でないと落ちないらしい。油性ペンだな・・・。
大まかに準備が整ったのは昼になった頃だった。一先ず三人で飯を食い、午後一に実験することとなった。
「取り敢えず肉、木材、金属の順でいいでしょうか?魔法発動は発動呪文を唱えるだけなので、トーヤさんに教えておきますね?」
これは、実際に俺が魔法を使うことになるんだよな?人生初の魔法だ・・・。
姉が「十夜、がんばって!」と力んでいる。いつも何か重要なイベントでは俺より姉のほうが力入っていて、俺のほうが落ちつくんだよな。受験の時も腕を失ったときも・・・。
姉に励まされ?アリスによる腕への魔方陣の描き込みが始まった、しかしこれは擽ったい!俺は身じろぎしてはアリスに「動かないで!」と怒られ、笑っては「集中できないから静かに!」と怒られ書き終わるまで30分ほど拷問のような時間をすごした。
「ふう、やっと描き終わりました」
アリスが額に汗を滲ませ俺の腕から手を離した。鏡で見ると複雑な魔法陣が腕の断面から肩にかけて描かれている。かなり精緻な魔方陣らしく、俺が描けと言われても絶対無理そうだった。
「アリス、お疲れ様。これであとは発動呪文を唱えるだけなんだよな?」
俺は永い擽り地獄から開放されたのでやっと落ち着くことができた。これだけの精緻な魔方陣を描いてくれたアリスへ感謝の言葉をかけた。
「そうですね、では覚悟を決めてバーンとやっちゃってください!」
失敗した場合、最悪俺の精神に異常をきたすかもしれない、だがしかし腕を取り戻せるかもという期待が俺の覚悟を決めさせた。俺は鶏肉を切断面へと押し当てて目を閉じ、魔方陣が発動する呪文を唱えた!
「『義肢創造』!」
右腕に焼けるような熱を感じ、俺は眉を顰めた。しばらくして熱が引いていき、何も感じなくなった。
俺はどうなったか怖くて目を開けれず、閉じたまま二人にどうなったか聞いた。
「お、俺の腕どうなった?成功か?」
「えっと、成功・・・なのかな?十夜、触れてみるけど感じる?」
姉がそう答えてからの数秒後、失われて一年半経った部分に何やら指で押される感覚を感じた!
「お、押されてる。触れられてる感じが分かるよ!」
俺は嬉しくなり、成功したと確信して目を開けた!
俺の目に映った久々の俺の腕は・・・・・・・
鳥の胸肉の集合体だった・・・・・
「うげ!キモい!」
皆も想像してみて欲しい!スーパーで売っている鶏の胸肉のプリっとした肉が俺の腕をそのままの見た目で形成しているんだ!指や手も再現はされているが所詮鶏肉の見た目のままである!
「これは成功ですが、見た目がちょっと・・・・」
アリスが若干引いた目でこちらを見ながら呟いた。姉も喜んでいいのか微妙な表情でこちらを見ている。
俺は二人を順に見てから言った
「チェンジで!」
二人は「ですよねー」という顔で頷いた。
「これ感覚はあるけど、見た目がアウト!あと異様に柔らかいけど骨ってどうなってるのかな?」
「ひとまず、触覚はあるようですし、色々この状態で試してみませんか?」
アリスが腕をぷにぷにしながら提案してきた、どうでもいいが実験動物を見るような科学者の眼は止めてくださいアリス、マジで。
一先ず、腕を持ち上げてみる。自分の思った通りに持上がり、肘、手首、指と間接部を動かしてみるが特に問題なく動くようだ。多少ぎこちないが慣れの問題だろう。
次いで、物を持ち上げてみたり掴んでみたりを行い、普通に動く事が確認できた。
と、そこでアリスがとんでもない疑問を抱いた。
「痛覚ってどうなっているんでしょう?」
「え?」
「ちょっとこのフォークで突いてみるので、感想オネガイしますね?」
いや、ちょっと待って欲しい!何故そのフォークは逆手に持ってる?!
「アリス、それはちょい洒落にならん!まずは軽く当ててくれ!」
アリスは何故か残念そうな顔をし!フォークを持ち直した。
軽く当てた部分には何かが当たっている感覚がしっかりとあったが、アリスは徐々に強く押し当ててくる。不思議な事にある一定以上は感覚に変化を感じないし、痛みも感じなかった。
アリスに伝えたところ
「では、もうすこし思い切りいきましょう。義肢ですから大丈夫ですよね?」
そう言うとフォークを強く押してくる!痛みは無くても見た目が痛いんだよ!見ろよ、姉ももう目を背けてるじゃないか?!
ブツッ!!
「ぎゃー!!!!」
アリスが押し込んできたフォークが鶏肉の腕に突き刺さった!
「いってぇぇぇぇ!!!!・・・・・・く無い????」
数センチも腕に突き刺さっているのに、俺の腕には痛みが感じられなかった。ジリジリとした不快感だけがあり、血もでなかった。
「アリス、まじでこの実験って必要だったの?つか、躊躇無く刺したよね!?」
アリスは当然のような顔で頷いた。ちょっとアリスが怖く感じる。
「今後義肢で生活するときに痛覚の有無は大事ですよ?最悪損傷しても痛みが無いなら義肢を犠牲にして生き残る事も可能ですから」
片腕犠牲にして生き残る状況ってどんなのだよ・・・・。そう思ったらそもそも事故の時に片腕犠牲にして生き残ったんだった。
義体を義肢と表現を変更しました