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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第三章 修行編
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第五十六話 初めての・・・

 地上へと戻って空を見ると夕方だった。往復で四時間ちょっとくらいか、前よりかなりハイペースで進んでいたんだな。まだお婆ちゃんが学院長室にいるかと思って俺達は真っ直ぐ学院長室へと向かう。

 俺達が学院長室を訪ねるとお婆ちゃんは驚いて尋ねてきた。


 「もう行ってきたの?出発したの午後よね。途中で戻ってきたとか?」

 「いや、もう五層をクリアしてきたよ。これ戦利品」


 俺はアイテムボックスから水晶を取り出してお婆ちゃんに見せた。特に変哲も無い水晶にお婆ちゃんの表情が曇る。


 「何というか、普通の水晶ね?それが最下層の宝箱に?」


 俺はやっぱりお婆ちゃんでもそう思うよなと思いながらも説明をした、十年ぶりのアイテムなので一応調べて欲しいとお願いをする。


 「わかったは、研究室で調べて貰います。何か特殊な条件で発動する魔法具の可能性もあるかもしれないし・・・、数日預かるわね」


 俺達は水晶をお婆ちゃんに預けてお茶を頂いてから部屋を出た。もう日も暮れてきたし家に帰ってご飯にしよう、戦闘の連続で疲れているしゆっくりお風呂でも入りたい気分だ。


 その後俺達は屋敷に戻り皆で晩御飯を食べた。そして風呂に入り疲れを取るとちょっと早いがそれぞれ部屋に戻り休むことにした。


 コンコン。部屋で休んでいるとノックの音が聞こえた。だが廊下に繋がっている方では無くアリスとの部屋に続いている扉だった。俺は「どうぞ」と言ってアリスを迎えると椅子に座ってもらいアイテムボックスから軽い飲み物とお菓子を取り出してアリスに勧めた。


 「どうしたの?そっちの扉から来るなんて初めてじゃないか?」


 俺の言葉にアリスは頷いてから話を始めた。


 「アキさんがバトラさんとお付き合いを始めたと聞いて、ちょっと私も触発されたというか・・・」


 どうやら人恋しくなったらしい、まあ付き合っているのだしたまにはこうして二人で語り合うのもいいか。俺は頷きアリスの近くに座った。


 「俺も最近アリスと二人って無かったからな、もうちょっと二人の時間を取れるようにしないとな」


 俺はそう言い、アリスと二人色々な事を語り合った。その内ジュースからお酒に変わり、ほろ酔いになりながら更に色んな事を話題にした。


 「そういえばトーヤはご両親が見つかったらあちらの世界に帰るんですか?」


 アリスは大分酔いが回ってきたのか少しジト目で俺を見つめた。


 「いや、俺もだけど恐らく地球には帰らないと思う。親父達が戻ってこなかった理由次第もあるけれど、俺はずっとこっちの世界・・・アリスの居る所に居たいと思ってる」


 俺の返事にアリスは嬉しそうに微笑みながら近づいて肩に頭を乗せた。俺はアリスの肩へと腕を回しながらそっと寄り添った。


 「今はご両親の行方を捜す目的もありますけれど、今後見つかったらトーヤはどうするんです?」


 「さっきも言ったけど、アリスの傍に居るんだと思う。ずっと、一生ね・・・強くはなりたいから冒険者は続けていくかもしれないけど、全部片付いたらこのままアリスと二人でどこかゆっくり暮らすのもいいかもしれないな。姉貴はバトラさんと上手くやるだろうし?」


 俺はまだそんな先の事は深く考えれない、だけどアリスの傍に居たいという事だけは確実に言えた。アリスの目はだんだんと潤んで行き、俺の手を握ってきた。


 「ずっと、という事はその・・・そういう意味だと捉えていいんですか?」


 ああ、これはあれだな。プロポーズになるのだろうか?だとするともっと雰囲気のある場所とかのほうがよかったのだろうか。俺はそんな事を考えながらアリスに気持ちを伝えた。


 「そうだな、俺の世界では指輪か何か用意してするのが一般的なんだが。アリス、俺はずっとアリスと共に居たい。アリスがよければ俺とずっと一緒に居てくれ」


 俺はアリスを見つめた。アリスも俺を潤んだ目で見つめ返していていたが、「はい」としっかり頷いてくれた。俺はアリスに顔を近づけてその唇にキスをした。


 プロポーズをし気分が高ぶった俺達、その後アリスとベットへと移動して俺達は結ばれた・・・。俺は勿論、アリスも初めてだったからとてもぎこちない行為だったと思う。だけど経験が無くても相手への思いやりと優しさを持ってゆっくりと、だがしっかりと俺はアリスと繋がった。


 目を覚ますと朝になっていた、隣をみると裸のアリスが俺の腕枕で寝ていた。昨晩の事を思い出すとまた反応してしまう。俺は上手くやれたのだろうか?下手だと思われていたらどうしようとは思ったが、初めてだったのだし気持ちが大事だよな!と自分を慰めながらアリスの寝顔を見ていた。


 暫くしてアリスが目を覚ますと見つめていた俺と視線が合う。アリスは顔を真っ赤にして布団で顔を隠した。


 「トーヤ、あまり見ないでくださいー。はずかしいです・・・」


 アリスの甘えたような声に俺は我慢の限界を超えて、朝からまた求めてしまった・・・。


 かなり朝食の時間から経って俺達は階下へと降りていった。誰も起しに来なかったのは疑問だったが食堂へと行くとメイドのララが顔を真っ赤にしているのを見つけた。近くでは食後のお茶を飲んでいた姉がニヤニヤという顔で俺達を見ていた。


 「おや、トーヤ殿アリス嬢。遅かったですな、お食事が冷めてしまいましたが新しく作った新作があるのでこちらを召し上がっていただけますかな?」


 執事のセバスさんが俺達を食卓へと促す、ララと姉の態度を見るにララが俺達を起しに来て扉越しにアリスの声を聞いたというところだろうか・・・、姉はそれを聞いてニヤついていると。


 気まずい雰囲気で俺とアリスは席へと座る。そこに用意されていたのは朝食とは思えないほど立派な献立だった。


 「セバスさん?朝にしては豪勢過ぎない?尾頭付の魚とかこれはケーキ?こんな高級品なんで・・・」


 そこまで言ってから俺は理由に気付いた。まさかと思ってセバスさんを見るといい笑顔で頷いた。


 「こちらではお祝いと言えばケーキなのですがね、チアキ嬢から伺いましたら祖国では尾頭付のお魚と言うではありませんか。市場に急遽行って買ってきました」


 「セバスさん!それはセクハラという!!姉貴余計な入れ知恵すんな!」


 食堂にセバスさんと姉の笑い声がする中、俺の怒鳴り声が木霊する。ララは顔を真っ赤にして給仕を続けているし、隣のアリスは顔が真っ赤で湯気が出ている気がする。


 せめてもの救いは妹メイドのリンが何も分からない顔で首を傾げていた事だろうか・・・。リン、君は純真でいてくれ・・・。俺はそう願い混沌とした現状の打開に意識を巡らせた。

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