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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第三章 修行編
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第四十七話 屋敷での一日

昨日はお休みして申しわけありませんでした。

一騒動はあったけど屋敷での生活は順調だった、当然あの扉は二度と開いてはいない。あの時の事はラッキーだったとは思うがアリスには嫌われたくないからな。

 一週間程暮らして大分この家にも馴染んできた、セバスさんとメイド姉妹の居る生活にも慣れたとは思う。セバスさんは流石一流の執事だけあって、全ての事にそつがない。俺達の世話から始まり、改装や手を加えるときの業者の手配からメイド達のフォローまで完璧にこなす。


 「セバスさん、流石長年執事をされているだけあって完璧ですね」


 「トーヤ殿、その敬語はそろそろ止めませぬか?家長が目下の者に敬語というのは示しが付きませんぞ」


 俺とセバスさんとの会話はいつも敬語だ、やはり年上の人に命令口調というのは無理がある。


 「勘弁してください、所詮平民の俺に貫禄なんて求められてないですよ。それよりも、風呂の改装の件ですが、どうなりました?」


 「トーヤ殿のご提案通り業者には発注致しましたぞ、しかし不思議な装置ですな?頭より高い場所へ小さな湯船を作って管でお湯を出すと・・・。先端のこの部分も謎ですな、小さな穴が沢山開いておりますが何なのですかな?これは」


 セバスさんに頼んで業者に注文したのは俺達の世界でいうシャワーを浴びる為の装置だ。こっちの世界は湯船に魔法で水を汲み、加熱する魔道具でお湯にはできるので風呂だけなら問題無い。しばらく我慢はしていたのだが、姉から朝風呂用にシャワーが欲しいと言われたので考案してみたのだった。装置自体は簡単な物で、頭上にそこそこの大きさの水タンクを用意し加熱用の魔道具で湯船同様お湯を沸かす、それを金属の管と特注のシャワーノズルから放出するというだけの装置だ。手元にバルブがあってお湯の量も調整は出来るので即席にしては上出来だろう。


 「・・・という装置なんですがね、こちらではそんな習慣ないでしょうけれど汗を流したい時だけとか夏場の水浴びとか?あとは頭を洗うときに便利ですよ」


 俺の説明にセバスさんは成る程と頷き、感心していた。


 「それもあちらの世界にある文化の一つなのですな?色々と興味がありますので他に何か有用そうな物がありましたら教えて欲しいですな」


 セバスさんはそう言うが、こちらは魔法が発達している為文化レベルは決して低くはない。逆に俺達の世界みたいに科学が発達したせいで公害が発生しないだけこの世界のほうがいいのではないだろうか?下手に電気だとか重工業系の文化なんて持ち込んだら自然が失われてしまいそうだ。


 セバスさんとの話が終わり、俺は一階で清掃をしているメイドのララを見つけたので話しかける。


 「ララ、ここでの生活には慣れたかい?何か必要なものがあれば遠慮なく言うんだよ?」


 「あ、トーヤ様。いいえ、ここの生活は快適ですし食事も豪華で・・・、逆に食べ過ぎて太っちゃうんじゃないかって心配してるくらいなんですよ」


 ララが笑いながら言った、ここに来てから大分俺達にも慣れたようで随分笑顔が増えた気がする。

この家ではセバスさんもメイド姉妹も一緒の食卓でご飯を食べ、交代ではあるがお風呂も毎日入れるようにしている。主従というよりは家族で居たいという俺と姉の我が侭からだが、アリスも問題ないと言ってくれた。セバスさんや姉妹はひどく恐縮していたけれどね。


 「リンはどうしてる?相変わらずかい?」


 俺は近くに妹のリンが見えないので尋ねると、ララは困った顔で謝ってきた。


 「すみません!妹はまだ落ち着きが無くて・・・すぐどこか居なくなっちゃうんです。その分私が働きますから、追い出さないでください!」


 ララが頭を下げる、俺は気にしてないと伝えて頭を上げさせる。


 「ララだってまだ12歳だろ?リンに至ってはまだ9歳じゃないか、そんな幼い子に仕事をしろと言うつもりはないよ。それに俺達は所詮平民だ、貴族と違って自分のことは自分でやる習慣がある。そこまで二人に何から何までやってもらわないと生活できない訳じゃない。形式上雇っている事にはなるけど、家族のような兄弟みたいなもんだと俺は思って二人に接しているつもりだ。だからララもそこまで畏まる必要は無いよ」


 俺の言葉にララが安堵する。そういえばこの屋敷に来るまでメイド教育をしてて、来てからも一週間働き詰めだったな。毎週休みを与えて一緒にどこか遊びに行くのもいいかもしれないなぁ。

 俺は思い付きを相談する為に姉とアリスを集めてテラスへと移動した。


 「・・・と、言うわけで一週間に一度休みを設定したいと思う、具体的には日曜日に当たる日、俺達もその日は依頼は受けずに休息日にしてメイド姉妹とセバスさんにも休みを与える。一緒に出かけるのもいいし、家で休みでもいいと思うんだがどうだろう?」


 俺の提案に姉は直ぐ賛成してくれた、アリスは使用人の休みが週一だと多いとは思ったようだが日本での文化を知っている為か特に反対はしなかった。


 「でも、お二人が支払っている賃金結構いいほうなんですよね。なのに週一休みとか他の奉公している人とか聞いたら驚きますよ?」


 アリスが笑いながら言った、どうやら休みなんて半年に一度あるか無いかなのが普通らしい。まあ他所は他所、家は家だ。


 「それと、ララとリンの歳でこの屋敷全てというのは無理だ。特にリンはまだ若干9歳で仕事を完璧にはできない、かといって大人のメイドを雇うと二人の立場が無いしどうしたもんか?」


 「別に自分の事くらい自分でやるわよ?アリスちゃんだって貴族といっても冒険者として身の回りは自分でやってたのだし自分達以外の部屋の管理さえしてもらえばいいんじゃない?」


 俺の悩みに姉が即答してくれた、やはり幼い二人に家事を全て任せるのは無理だという認識は姉もあったようだ、アリスも自分の部屋くらいは自分で掃除するというのでその方針で行く事にした。


 晩飯を食べながらセバスさんとメイド姉妹に俺達が相談して決定した内容を伝えた。セバスさんはひどく驚き反論してきた。


 「トーヤ殿!それでは我々使用人としての立場がありませぬ。お屋敷勤めとしてそれなりの給金を頂いておるのに、週に一度休みなどと!第一私どもが休みを頂いた時の食事はどうなさるおつもりか?」


 「セバスさん、休みは俺達の世界では等しく与えられてたものなんだ。本当は週二でもいいくらいなんだけどね、流石に週二の休みだとこっちでは異質すぎるから週一で妥協したんだ。休みの日はここの食材で各自作ってもいいし、なんだったら俺達が作ってもいい。姉もアリスも料理は得意だしな?それかみんなで外食でもいいな、料理の勉強って理由でもいいよ?」


 俺が何か問題が?という風で喋るとセバスさんも強く言えないのか黙ってしまった。その晩全員でしっかりと話し合い、週一の休みを与えることと、他所の料理を学ぶという名目で休みの日の晩は外食することに決めた。


 「ララ、リン。休みの日は一緒に遊びに連れていくぞ?だから他の日は仕事を頑張ろうな!」


 俺が言うと、メイド姉妹も気合が入ったようで特に妹のリンも休みが貰えると聞いて仕事を頑張ろうという意識が芽生えてきたようだ。やはり休みがあれば仕事が頑張れるという所もあるよな。


 ちなみに、この話を学院のお婆ちゃんにしたら酷く驚いていた。やはり使用人に頻繁に休みを与えるのは例が無いようだ。

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