第四十六話 新たな屋敷
更新遅くなり申し訳ありません。
前話での誤記が多かったので修正しております。
三人と面接してから一週間が経った、俺達は相変わらず二日に一回依頼を受けて順調に冒険を繰り返していた。メイド見習いの二人はお婆ちゃんの私邸でセバスさんに色々教えて貰っているようだ、時折お婆ちゃんから状況を教えて貰う。
そして俺達用の屋敷が今日やっと出来上がったようだ、案内に従い学院から新しい屋敷へと歩く。
以前見せてもらった図面では大きいのは理解していたつもりだったが、それでも日本で暮らしていた俺達にはこの世界の家の大きさは驚愕するには十分だった。
俺達が屋敷に到着すると、セバスさんとララ・リンの姉妹が出迎えた。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」」」
三人が声を揃えて唱和した、ご主人様って何?メイド喫茶とかこんな感じだと聞いたことがある。
「ちょ、俺は主人ってガラじゃないよ?!普通に名前で呼んでよ!」
俺は焦って叫んだ、姉はご機嫌で「お譲様・・・」とか頬を染めて喜んでいたがスルーだ。
どうやら対外的にはそう呼ぶ事がルールらしく、俺達だけしか居ないときはちゃんと名前で呼んでくれるそうだ。よかった・・・家の中でも何時もご主人様呼ばわりだと落ち着ける自信が無い・・・。
三人の案内に沿って家へと迎えられる。執事のセバスさんが玄関の扉を開けてエントランスへと移動した。
「・・・これが、俺達の家?家ってサイズじゃねぇ!」
俺の叫びが屋敷に響き渡った、姉も同様に驚いているが流石にアリスは落ち着いてものだ。
「トーヤ、叫ぶと煩いです。平民が住むには大きいですけど、私の実家もこのくらいはありますよ?王都では商人の長などはここより大きい屋敷に住むのでそんなに可笑しく無いです」
「アリス、俺達が日本で住んでた家知ってるだろ?このエントランスより狭いんだぞ?!」
そう、この屋敷のエントランスだけでも幅10mはある、奥行きは15mくらいだろうか?普通の2DKくらいのアパートなんかより広い。屋敷の外には門と柵がありどこか外国で見たハリウッドスターの豪邸を思い出した。これで部屋が一階に八つ、二階に六つあるのだ・・・、どれだけ掃除とか大変なんだろう・・・。
「確かに日本の家は軒並み小さかったですね、でも平民ならこちらでも普通はあのサイズだと思います。」
やっぱりアリスもこっちの世界の貴族様か、感性が俺と違う・・・。
この後セバスさんに案内され、一通り中を見て回った。その後テラス!でお茶を飲みながら部屋割りを決める事になった。
「私共使用人は部屋がもう決まっております、メイドのララとリンは一階のこの部屋ですな、同じ部屋を所望したのでその通りにしております。私は二階のここですので二部屋は除外してください」
そう言ってセバスさんが指差したのは一階の入り口に近い小さな部屋と、二階への階段を上ってすぐにある部屋だった。
「え?そんな小さな部屋でいいのか?もっといい部屋とかあるだろうに」
俺がそう言うと首を横に振り、使用人としてこの部屋で十分だと言われた。後でちょっとセバスさんの部屋を見せてもらったがその小さいと思った部屋ですら十二畳くらいはあった、確かに一人なら十分な広さだろう。
「それと、今後使用人が増えるかもしれませんし、お客様などを御呼びした際は全て一階に寝泊りして頂きます。トーヤ殿達は基本的に二階に寝室を持って頂くのがこの世界での常識となりますので悪しからず」
なるほど、一階に寝泊りして客や使用人と同列ってのは問題があるわけだ。俺達が二階に寝泊りするのを考慮して呼ばれても直ぐ対応できるようセバスさんは二階に部屋を取っていたのだろう。
俺達は部屋を決めてそれぞれアイテムボックスから自分の荷物を取り出す作業へと移った。
「えっと、この本を棚へと入れて貰っていいですか?」
俺にはセバスさん、姉とアリスにはそれぞれララとリンが付き添い部屋のレイアウト変更や荷物の整理を手伝って貰っていた。俺が頼んだ本のタイトルなどを見ながら文字が読み取れないようで首を捻っていたが、それでも流石というべきかコミックの種類別に並べてくれていた。・・・流石に巻数はばらばらだったけど。
ある程度部屋のレイアウトが決まった時には夕方に差し掛かっていたので、セバスさんと姉妹は夕御飯の支度があると断って階下に降りていった。
俺はひと段落したのでベットに横になって部屋を改めて見渡した。この部屋だけで二十畳程はある、それとは別に服などを掛けるクローゼット用の小部屋が付いている。広すぎだろう・・・小さな部屋に慣れていた俺にはこの広さは落ち着かない。ふと、入り口とは違うドアが目に入った、どの部屋の扉とも違う小さな扉だ。俺はどこに繋がっているのだろうと思って扉を開けてみた。
「え?」
扉を開けるとそこは・・・隣のアリスの部屋だった!え?何でと思っていると扉を開けた時の音に反応してアリスが俺を見た。アリスは着替えの最中だったのか、服を脱いだ状態で俺に背を向けていた、下着姿のアリスを見ての俺の感想は綺麗だなと思った事と、
「ああ、これがラッキースケベってやつか・・・」
次の瞬間、アリスの悲鳴が屋敷に響き渡った。
今現在、俺は正座させられていた。目の前には姉が仁王立ちで俺を睨んでいる・・・。アリスはもう気にしてませんからと言っているが姉の説教が延々と続いていた。
「そういえばそんな扉ありましたな・・・、屋敷の主人が妻の部屋へ夜に移動する為の扉でしたがトーヤ殿は知らなかったでしょうな、失念しておりました」
何でそんな扉必要なんだよと問うと、セバスさんが姉妹に聞こえないよう俺達三人だけに教えてくれた。
「夜、妻と情事に及ぶ際に使用人及び他の部屋の家族にバレないようにですよ」
聞いた俺達は顔を真っ赤にした、つまりはそういう事か・・・。という事は俺はアリスの部屋に何時でも入り込める状況にあるというわけだ。
「しかし、困りましたなあ。部屋を変えるわけにもいかないですし・・・どうしてもアリス殿が困るというのであれば部屋を移動するなり扉を塞ぐ事も検討致しますが、いかがいたします?」
アリスは顔を真っ赤にしていたが、しばらく考えさせてと言うと食事の席に戻っていった。直ぐ断ればいいだけだろうに、何を考えるんだ?俺は疑問に感じていると、姉とセバスさんが俺を見てニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「なんだよ・・・」
「鈍いわね、アリスが直ぐ断らないなんてそういう関係になるのを嫌ってないって事なんじゃない」
俺が姉を睨んで呟くと、姉からの最大級のカウンターが来た。俺はアリスをチラっと見てまさかと思った、アリスもこちらを伺っていたようで目が合い、お互い顔を真っ赤にして目を逸らした。
「ほっほっほ、いやぁ若いというのは良いですなぁ」
セバスさんの一言を最後に俺達は食卓に着き、夕飯を食べた。だが俺もアリスも飯の味なんてろくに分からず、また直ぐ部屋へと戻って行った。
あの扉はアリスから同意が無い内は開けないようにしよう・・・。
明日は私用にて更新が出来ない可能性がありますのでご了承ください。