第四十一話 合宿開始
第三章の開始です
※本日は二話投稿しています、前の話からお読みください。
俺は今泥に塗れていた、服もズタボロあちこちに傷や打撲が出来ている。くそ、さっきの一撃のせいで膝が笑ってやがる。満身創痍の俺に全く配慮せず次の一撃が放たれる、数メートル程吹き飛ばされ意識を刈り取られた・・・。
事の発端はギルド主催の合宿に参加した事だった、現役Aランクから指導を受けられるとあって俺達のチーム以外にも五チームも参加するとの事だ。同時に六チームとか指導できるのかと疑問に思っていたらAランクチームのリーダーである男から衝撃の内容が伝えられた。
「俺がお前達の指導をする予定の『片翼』のリーダーをやっているバトラだ!見ての通りの魔人族だ!お前達六チームを全て指導なんて無理だからこれからお前達の実力を見る、俺が認めたチームだけが合宿に参加できるからそのつもりで!」
そう宣言した男は背中に片方だけの翼が付いていた、これがチーム名の由来だろうか?というか実力を見るって何か試験でも受けさせるのか?
「まずは各チームから一名選べ、そいつと俺が戦ってみて実力があると判断した奴のチームが今回の合宿の参加対象になる。まあ、選ばれなかった奴らについてもBランクの知り合いに頼んでいるからそっちの指導は受けれるがな!」
どうやらバトラという魔人族と戦う事になった、それぞれのチームは誰が戦うかの相談に入ったようだ。俺はどうする?と二人を見たのだが・・・。
「当然、十夜が行くのよね?うちのリーダーだもの!」
姉に即答された・・・、まあ姉はともかくアリスには危ない目に合って欲しくはないからいいんだけど・・・。なんだか釈然としない気持ちのまま俺が手をあげて代表として戦うことになった。
そして冒頭に戻るのだが、俺は頑張ったほうだと思う。他のチームの奴らが一人、また一人と叩きのめされる中、攻撃を防ぎつつ俺からも何度か殴り掛かったのだが・・・。
「くそ!一撃も当てれねぇ・・・。全力の身体強化に『知覚上昇』まで使って反射速度上げてるってのに!」
どうやっても相手のほうが早いのだ!俺が全力を出してもバトラは余裕を持って避けている。
開始から二十分程で残ったのが俺ともう一人だけになった、当然相手の攻撃も俺達二人に集中してくる、幾度となく喰らい、その度に地面へ叩きつけられ吹き飛ばされる。そろそろ体力も限界に近づいてきたので最後の力で一撃を狙うことにした。
もう一人のチームの代表へとバトラの攻撃が向いた瞬間に、全ての魔力を足へと集中させる。これでさっきまでの俺の速度より三割ほど加速する!
背後からの攻撃になるが構いはしないだろう、俺の渾身の拳がバトラの後頭部へと吸い込まれ・・・るかと思った瞬間、バトラの姿が目前から消えた!
「ッガッ?!」
次の瞬間には俺が吹き飛ばされていた、何が起こったか全く理解できない・・・。俺は地面へと倒れこむと同時に別のチームの代表が同様に地面へと叩きつけられていた。
そして俺の意識は暗闇へと沈んだ。
「よし、ではチーム『侍』と『十字架』は残れ!あとはギルドの職員に案内して貰ってBランクの奴に指導して貰え、Bランクだと言っても俺が直々に推薦した奴だからな?変な態度取りやがったら二度と冒険者として日の目見れねぇようにすっからな!」
ひどい脅し文句が聞こえて俺は意識を取り戻した。姉とアリスに介抱されながら結果を聞くと、どうやら俺とさっき残ってたもう一方のチームが合宿への参加権が取れたようだ。
しかし、容赦なく殴られた・・・。というよりも手も足もでなかった、これでも空手の全国大会に出れるくらいの実力はあったし、魔法で限界まで強化したのに。悔しいがこれが現実なんだろう、Aランクとの実力の隔たりを感じて俺は放心していた。
「さて、『侍』のほうの代表はトーヤと言ったか?最後の奇襲はなかなかだったぞ。だが殺気が洩れすぎだ、いくら速度があっても殺気のほうが先に俺に届く、だから避ける事が出来たんだ。そこらへん上手くなれば一撃くらい貰ってたかもしれんぞ!」
バトラはガハハハと笑って俺の肩を叩いた、俺は呆気に取られていたがいい線まで行ったのだと思うと少しは立ち直ることができた。
「もう一方の『十字架』んトコのはライアンだっけか?お前の防御力は大したもんだ。俺の攻撃を尽く防いでたな、だが攻撃力がまだまだだ。守っているだけでは勝てん!合宿ではそこを重点的にいくぞ」
どうやらお互いに一長一短があったようだ、俺とライアンは顔を見合わせ互いに苦笑した。これから一緒に合宿を受けるのだが何となく仲良くやっていけそうな奴だと思った。
傷を癒してお互いのチームとAランクの『片翼』との顔合わせとなった。『片翼』はリーダーのバトラ、同じく魔人族のリッヒ(男)とベルチェ(女)の三人構成だ。リッヒとベルチェも翼が片方しか無く、片翼同士が集まって結成されたのだと語った。
ちなみに魔人族で片翼とは半端物として扱われる、基本的に魔人族は空を飛ぶことができるが片翼では飛べないからだ。差別までは受けないが、地位の高い役へは就けないのだ。
バトラは筋肉質の巨漢だ、殴り合いが好きだと聞かなくても分かるような体型と豪快な性格だ、リッヒは逆に線が細い、バトラに比べるからそう思うのかもしれないが・・・。弓と魔法を使う中距離的な役割らしい。ベルチェは真っ赤な髪をした綺麗な女性だ、完全な後衛型のようで魔法が得意だそうだ。
俺達と一緒に受ける『十字架』のチームは四人構成だった、さっき俺と一緒にボロボロになったリーダーがライアンといい完全鎧で身を固めた盾型の前衛職だ。もう一人はトルチェという両手剣を背負った皮鎧の男、トルチェもライアンと同様身長は俺よりも高そうだ。あとはリリルというエルフ、背中に弓を背負っているから弓使いなのだろうか。最後にポポという獣人族の少女だ、どうやら猫系のようで頭に猫耳がついている。彼女は手甲を付けているから前衛職なんだろうか?
最後に俺達三人が自己紹介をした。 こうしてお互い紹介を終え、俺達の合宿は波乱の幕開けとなった。
いつも読んでくださりありがとうございます。