第三十六話 彼女と爬虫類討伐1
こんな時間ですが本日一話目投稿です。
今日は複数話あげるつもりです。
この世界の文字を習ってからの一週間程、俺は嫌いな勉強を魔法『知覚上昇』の助けを得ながらも頑張った、おかげで生活で必要な文字くらいは読めるようになったのだが・・・。
どうせなら『知識複写』を改良すれば良かったんじゃないかと気付いたのは今日になってからだった・・・。成功するかはわからないけど身体強化を改造できたんだから出来ない事は無いと思う、今度時間を見て挑戦してみよう。
この一週間文字だけを覚えていた訳ではない、文化などもそれなりに教えてもらった。色々と違いはあるが生活水準だけは魔法のお陰かそんなに低くないようだった。
水道は無いが魔道具で水は出せる、コンロは無いが火の魔道具で調理も出来る。風呂は一般家庭には流石に無いようだが貴族達は各自風呂を屋敷に持っているそうだ。
問題なのはトイレだ、流石に水洗は無かった。しかし、事前に想定していたのでアイテムボックスに簡易水洗のトイレを1セット向こうの世界で購入して入れてある!俺に隙は無かった。屋敷を手に入れてからトイレだけはこれを使って改造しようと思っている。ちなみに下水はこれまた魔道具で汚物は分解されるようで衛生面や臭いは大丈夫なようだ、これだけは向こうの世界より上だな。
前回の依頼で結構稼いで居たので依頼は受けていなかったが、文字をある程度覚えたので練習かてら冒険者ギルドへ行くことになった。今度は三人でそれぞれで依頼書を読み、持ち寄るという方法にした。
依頼書は読めない部分もあったが、大まかに分かるようになっていた。やっぱり文字読めるって嬉しいな、何が書いてあるかわからない文字ばかりあるっていうのは精神的に辛かったからな。
「俺はこの岩トカゲ退治の依頼がいいな、こっから2日くらい南の荒野に居るってさ。報酬が1,000エル(10万円)だって」
「トーヤ、それは岩トカゲではなくトカゲ男と読みますよ、全身を鱗で覆われた人型タイプの魔物でBランクモンスターです、あと報酬は一匹あたり1,000エルで対称は3匹ですから合計3,000エルですね」
どうやら固有名詞を読み違えたらしい、しかしリザードマンかファンタジー物では定番だな、一度見てみたい。
「じゃあ、私はこれかなぁ?十夜のリザードマンと近い場所らしいけど蛇女討伐みたいね、報酬は一匹あたり1,000エルで確認されたのは二匹らしいわね」
「アキさんは特に間違えてる所は無いですね、トーヤもう少しお勉強しましょうね?」
「う、ある程度読めてるんだから大きな進歩じゃないか。たった一週間でこれだけ読めるなんて十分だろ?!」
俺はこれ以上勉強をしていくのが嫌だったので苦し紛れで言った、それに長く冒険していないと身体が訛りそうなのだ。
「魔法でドーピングしてるのですからもう少しやれば全部覚えれるんじゃないですか?アキさん魔法なしでここまで覚えてますし・・・」
その可愛そうな人を見る目は止めろ!姉は学年十位以内、俺は英語とか5段階の2だぞ?魔法くらい使ってドーピングしないと覚えれないのだ。
結局この二つの依頼を同時に受ける事にし、帰ってきたらまた勉強をする羽目になった。
「はい、チーム『侍』さんですね。依頼書の内容は・・・、?!Bランクの魔物の討伐を同時に2つですか?かなり危険が伴いますがよろしいのですか?」
受付のお姉さん(今日はマリナさんではないらしい)が俺達に確認を取ってきた。アリスが大丈夫と言うから受けたが、本当に大丈夫なんだろうか?
「基本的に各個撃破の予定ですし、よほどが無い限り同時に5匹は無いと思います、もし一緒にいたら手は出さずに一旦引きますから行けるかと思いますよ」
アリスの言葉に受付譲は了承してくれた。どちらにしろ自己責任が伴うので冒険者側が受けると言えば強く反対は出来ないのだが。
しかし、人型の魔物が5匹ともなると俺達では厳しい状態になるのは俺も理解できている。最悪は逃げる事になるだろうな。
一週間後には屋敷で雇うメイドの面接があるので、今日の内に出発する事にした。片道二日なので少しは余裕があるだろうが早めに出発するに越したことは無い。
今回は安い馬車をレンタルすることにした、前回往復で一日くらいの距離で結構疲れたのを思い出したからだ、幌の無い荷馬車を借りて御者を一人雇った。俺達は荷台で周辺を見張りながらの行程となる。
早速馬車を借り、出発した。荷台は結構衝撃でお尻が痛くなるというので、アイテムボックスからクッションを出して敷いた。この日は日が暮れるまで特に問題無く進み、夜になる前にちょうどいい場所を探して野営する事にした。馬車の荷台に併せてテントを張り、見張り以外はこの中で寝るという方法を取った、これで少しは快適に寝れると思う。
見張りの順番だが、寝る場所が一つという事で悪いが御者は俺と、アリスは姉との見張りという事にした。アイテムボックスから料理を出し、早めに飯を食べてアリスと姉は先にテントで休む。
御者と俺は少し離れた所で焚き火を炊いて周囲の見張りをする。といっても気配探知の魔法で半径1kmくらいは余裕で感知できるので、寝ないように雑談するだけだが。
数時間もすると、夜も更けて辺りが真っ暗になる。周辺には明かりの魔法で光を灯しているので特に不都合は無いが、周囲が暗いというのは探知の魔法があっても不安になるものだ。
夜中に差し掛かろうという時刻に探知魔法に数匹の反応があった、恐らく狼だろうと思い、御者に留守を頼み様子を見に行ってみた。真っ暗なのだがこの一週間使い続けた『知覚上昇』で視覚が上がっていて簡単な暗視能力のような物が発生していたので問題なく見える。
俺は全力の身体強化を纏って反応がある方向へとダッシュする、当然気配は消してだ。一分もすると反応があったあたりに魔物の狼が三匹見える、彼我の戦力差に問題は無いと判断して、そのまま襲い掛かることにした。
全力で跳躍し空中で剣を抜き放つ、狼の一匹を上から突き刺しながら着地した。狼はやっと俺に気付いたようで威嚇をするがこの距離に入り込めた時点で俺の勝ちは決まったような物だ。残り二匹が状況を理解できる前に片方の首を切り落とし、返す刀でもう一匹の前足に切りつけた。
キャンキャンと煩いが最初の一匹目と最後の奴にきっちりと止めを刺してアイテムボックスに収納する。
「さて、野営を離れてからここまでで二分か、直ぐもどらなっきゃな」
俺はまた全力で馬車のところまで戻った、この世界に来てから俺の身体能力はどんどん上がって来ていた。なんだろう、水が馴染むというかこの世界の空気や水がとても体に力をくれる気がする。やっぱり俺もこっちの世界の人間なのかもな、と最近は思っている。
一分後馬車に戻ると、御者は不安そうな顔をしながらも俺の帰還を喜んでくれた。状況を聞かれたので狼三匹を倒してきたと言うと「この短時間で?!」と驚かれた。