第三十一話 彼女が出来た!
じいさんの好意で貴重な金属を手に入れることが出来たが、やはり無料と言うわけにいかないと思いお金を払うと言ったが、生きてるうちに良いものが観れたと受け取らなかった。
俺たちはせめてもと、魔道具を更に何個か購入した。これからも必要な物があったら来ることを約束して魔道具屋を後にした。
これで明日に必要な物は全部揃ったはずなので俺たちは宿に戻ることにした。明日の目的の場所は徒歩で半日はかかるらしいから早目に休もうと決めて俺は部屋に戻った。
コンコン
部屋の扉を誰かがノックした、こんな時間に誰だろう?どうせ姉だろうと思い扉を開けた。
扉の前に立っていたのはアリスだった。なんの用だろう?
「どうしたの?アリス」
俺が尋ねると「少し話をしませんか?」と言ってきた。何か相談かなと思いつつ部屋へと招き入れる。ベットに腰掛けさせ一旦階下に降りて宿の人に飲み物を貰って部屋へと戻る、アリスは特に深刻な顔をしている訳でも無いようなので難しい話でもないだろう。
「それで、どうしたの?アリスが俺の部屋に来るのって珍しいじゃないか」
アリスに飲み物を手渡しながら言った、俺は何処に座ろうかと悩んだがアリスの隣に座ることにした。アリスは部屋に飾ってある絵を眺めつつ話始めた。
「最近、アキさんにトーヤとの事をよくからかわれるじゃないですか?トーヤはどう思っているのかと思っていたので思いきって聞こうと思いました」
いきなり本題らしい、俺はどう答えたものか考える。アリスと会ってからのこの半年で俺の生活は激変した、普通の高校生から今では異世界にいて冒険者だ。そして何より常にアリスと共に過ごしてきた。そして確実に言えるのは嫌いではなく好ましい女性と思っている事だろうか。
「アリスの事は好ましいと思ってる、一緒にいて楽しいし守ってあげたいとも思ってる」
アリスは俺へと視線を移し嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、何て答えがくるかと正直不安でしたが嬉しいです。私も前々から意識はしていましたが、先日の闘技場での怪我を見たときに怖くなったんです、もしこのまま闘ってトーヤになにかあったらって・・・」
アリスが不安に耐えるような表情で俺を見ている、俺はどうしようもない奴だな・・・アリスをこんなにも不安にさせてたなんて。
「ごめんなアリス、腕を失ったときは姉貴を不安にさせたのに今度はアリスを不安にさせてしまった。大切な人を守るどころか心配かけるなんて俺はバカ野郎だな」
俺は謝りながらアリスの頭にてをやり軽く撫でた、撫でてる俺の手に触れて首を横に振った。
「いいえ、トーヤにもし何かあっても私がフォローします、でもお願いですからあまり無茶はしないでくださいね?」
アリスはそう言い俺の肩に頭を預けた、しかも手はアリスに握られたままだ。
こんな状況の時男はどうしたらいいんだろうか?アリス側のて手は握られているから肩に腕を回すわけにはいかないし、反対側の手をもっていこうとすれば正面で向き合ってしまう!
身動きが出来ないまま時間だけが流れていった。全く経験がないせいで頭が働かない、ヘタレと思われたらどうしよう。十分ほどその状態でいたが心臓がバクバク鳴りっぱなしだった。
しばらくし、アリスが肩から頭を離して俺の顔を見つめた。
「トーヤ、もう心配かけさせないで下さいね?それと、これからもよろしくお願いします」
「う、うん。アリスに心配かけさせないようにする、あとこれからもアリスをずっと守れるように強くなるから!こっちこそよろしく」
半ば勢いで言ったがお互いに顔が赤くなってきた、これって告白になるのかな?いや、俺の勘違いとかじゃないよな?臆病にもそんなことを考えているとアリスが立ち上がった。
「それじゃ、私はそろそろ部屋に戻ります。私はその・・・恋人とか初めてなのでよく分かっていませんが、明日からよろしくお願いしますね?」
そう言うとアリスは座ったままの俺の顔に近づいてきて軽くキスをした。
俺が固まったままいるとアリスは顔を真っ赤にして「早く寝てくださいね」と言い残し部屋を後にした。アリスが居なくなってからやっと状況が理解できた俺は嬉しさのあまり大声で叫び、宿の人に後から注意された。
当然その日は遅くまで寝付くことなんて出来なかった・・・。
翌朝、俺は若干寝不足のまま階下に降りて行った、欠伸をしながら食堂に入ると姉とアリスが既に席に着いていた。
アリスは昨日のことを思い出して照れてるのか少し頬が赤い、俺もつられて赤くなる。
それはいい、問題はなぜ姉が満面の笑みでこっちを見ているかという事だ。
「アリス、喋った?・・・」
「はい、すみません。アキさんが昨日の事をしつこく聞いてきて・・・負けて話してしまいました」
申し訳無さそうなアリスだがどうせ姉の事だから数日中に気付いただろう、俺は諦めて席に着いた。
「十夜、初彼女おめでとう!どうする?祝杯あげる?」
・・・その満面の笑みを辞めろと言いたい、それに今日は依頼の討伐に行くのに祝杯なんて挙げてられるか。
「依頼が先だろ?それに朝っぱらから呑むつもりかよ」
俺はそう言いさっさと飯を食うことにした。姉が色々とアリスに聞いたりしているがスルーだ!俺は黙々と飯を平らげた。
朝食も食べ、俺達三人は依頼書にあった巨大蜂の討伐と蜂の巣の確保に行く為、王都の南門から壁の外へ出た。ちなみに、王都への出入りはギルドカードを見せると一発で通れる。
半日ほども森へと向かって歩く、その内馬とか買ったほうがいいのかな?徒歩はある一定以上はしんどそうだ。森へ入るまでは特に何も変わったことは無く、魔物に襲われる事は無かった。
森が目前に迫り徐々に視界が悪くなってきた、俺達は前回と同様の隊列を組み歩を進めた。