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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第一章 地球来訪編
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第三話 彼女の事情

「十夜、大丈夫?なんともない?」


姉が心配して聞いてくる。既に電気のような刺激は消え去っていて俺が頭を軽く振ると不快感も消えていった。


「ああ、大丈夫。ちょっと手で挟まれた時にビリビリってきたけど、その後の刺激が強すぎて・・・」


姉と母さん以外の女性とここまで近いなんて事が無かったから、かなりどきどきだった。


しばらくして、アリスの息が整ってきたようで俺はアリスに質問をぶつけた。


「アリス、今のが魔法?なんか脳に電気が流れた感じだったけど」


「はい、トーヤさん。これが私の世界で言う魔法という技術です」


突然、アリスが流暢な日本語で返答を返してきた。


「アリスちゃん、日本語急に上手になったわね?!」


姉がびっくりしている!当然俺もびっくりだ!


「はい、今使ったものは『知識複写』の魔法です。厳密には言語に限定した複写魔法ですが」


 俺と姉は理解が追いつかなかった。今の5分くらいの動作で言葉完璧に理解できるの?どんなチートだよ!赤点から逃れるために必死こいて勉強やら追試してた俺の努力はどこへ?!!


「言語ってことは、他の知識も複写できるってこと?知られたく無い情報や秘密なんかも?」


おお?姉が既に適応してきてる!つか、今の魔法だとして言語以外も下手すりゃ見られてたのか?


「いえ、言語以外の情報に関しては無意識のプロテクトが働いていて勝手に複写することはまず不可能です。」


 アリスの説明で、すこし安心した。言葉がスムーズになり会話がやり易くなったアリスの説明によると、言語や文化など個人の無意識下での情報に関しては今の魔法で複写できるそうだが、魔法を使う対象が明確な拒絶を意識していると失敗するらしい。また、個人の秘密やプライバシーに関するものは相手が見せようと思わない限り必ず失敗するらしい。


 よかった、ベッドに隠している本の事とか、小さいころの忘れたい過去なんか全部見られたら俺の精神メンタルは崩壊してしまうところだった。


 ともあれ、半ば勝手に俺の知識から言葉を得たアリスは一先ず言葉の壁を乗り越えたのだった。




 言葉が流暢になったアリスは俺と姉に事情を聞かせてくれた。


「まず、先程の魔法をお見せしたことで理解して頂けたかと思いますが、私はこの世界とは別の世界から来た魔法使いです」


 初っ端から異世界と来たもんだ!俺は戸惑いつつアリスに尋ねる。


「魔法っぽいの使ったのは分かった。で、異世界ってのはさっきのフォーセンティアってとこ?何の目的でこっちの世界に来たの?」


俺の脳裏には最近の小説で読んだ「異世界トリップ」「チート付神様トリップ」などの単語が浮かぶ。ここの所それ系ファンタジー小説やネット小説”なろう”などでずいぶん詳しくなってる。


 アリスは表情を暗くして俯いてぽそっと呟いた


「魔法に失敗して・・・」


「・・・・・・失敗?」


言葉の意味が分からなかった。魔法失敗のパターンは俺の知識になかった。


「空間魔法という分野があるんです。物がたくさん入る袋を作ったり、街と街の間を一瞬で移動したり。任意の場所へ瞬時に移動したり・・・。その魔法の研究中に失敗して・・・」


アリスは「詰めが甘かった」と呟きつつ、そう答えた。


「へぇ、そういう魔法もあるんだ。詳しく聞いてもいい?」


姉が興味深げにアリスに尋ねた。


 アリスによると異世界であるフォーセンティアには魔王が居たらしい。

魔王と聞くと、魔族を率いて戦争を起した!と思いがちだが、実はそんなことは無いとの事だ。


 人族の王がただの王(国の数だけいるらしい)、獣族の王が獣王、エルフやドワーフなどの妖精族の王が妖精王、そして魔族の王が魔王というだけで、普通に種族の王様らしい。人族以外は種族で一人しか王位には就かないらしい。


 ちなみに魔族というのは、基本的に人間に近い容姿に翼が生えている種族で魔法に長けているからの魔族ということだそうだ。聞くとゴブリンやトロールなどは魔族ではなく、モンスターという魔物の分類で魔族からも狩られる対象となっているようだ。


 そして、二十年前に当時の魔王が人族の国の一人の姫と恋に落ち、周囲の反対を押し切り駆け落ちしたらしい!しかも反対する勢力から逃れるため、空間魔法の奥義である時空転移魔法で異世界へ飛んだそうだ。


 時空転移魔法は当時の魔王が開発した魔法で、他に使い手が居なかったから追われる心配は無かったんだろう。


 それで、アリスが今回異世界に来てしまった理由というのが、この魔王と姫の捜索の為時空転移魔法を魔王が残した書類などから研究し、実験していたというのだ。


「私はこう見えても国の魔術学院主席で卒業したのです!空間魔法の第一人者なのですよ?」


アリスは自慢げに胸を張った。その歳でもう学校卒業したのか!所謂いわゆる飛び級というやつか?アリスに年齢を尋ねたら15歳との事だった。



「成る程ね~、理由は分かったわ。でもじゃあ、アリスちゃんはその魔王さんとお姫さまを連れ戻しに来た追っ手って事なの?」


 姉が「人の恋路の邪魔はダメよ~?」と言いながらアリスに聞くと


「いえ、今現在では結婚は認められているんです。魔王も代替わりしましたし政治的な問題が無くなったんです」


「ん、じゃあ結婚認めるよー、祝福するよー帰っておいでー。ってこと?」


今度は俺が尋ねた。アリスは頷いて


「近いですね、実は姫の出身国の王が先日病で倒れたんです。それで王が自分が死ぬ前にもう一目姫を見たい、孫の顔が見たい~って状態でして、捜索チームが作られたんです」


なるほど、結婚に反対した結果が駆け落ち(異世界に)されたけど、病気で気が弱くなったってパターンか。


 「あれ?でもアリス異世界これてるよね。これって成功じゃないの?」


俺が尋ねるとアリスは頷いて


「ある意味では成功です。恐らく文献や資料からこの世界へ来た事は確かだと思うんです。問題は魔王の魔力波動を追って転送したはずなのに、この付近に魔王らしき魔力が感じられないんです」


 つまり、魔王がいる異世界には来れたけど魔王のいるべきポイントに飛べなかったってことか。確かにどの国に飛んできたかって分からないだろうしな、アメリカかヨーロッパかもしれんし中国かもしれない。


 「日本、この国かどうかはわかるの?」


「そうですね、魔法が成功しているのなら大きくズレては居ないはずなんです。ただ検証にはしばらく再調査をしなければ分かりませんけれど」


 「再調査にはどれくらいかかるんだ?というか、なんでここに飛ばされたんだろうな?」


そもそも魔王の魔力波動を追ってるなら成功してていい筈なのに、近所の公園だもんな。しかも言葉もろくに通じなかっただろうし。


「あれ?そういやアリスはこの世界の言葉最初カタコトでも話せてたよね?あれはどこで覚えたの?」


俺は疑問に思った事を聞いた。するとアリスはバツの悪そうな顔をして


「さっき、トーヤさんに使った魔法の簡易版、対象への影響が少なく得られる情報も少ないものなんですけど。それを通りがかりの子供に草むらから・・・・」


「それって通り魔・・・」


「ち、違います!それはちょっと泣きながら逃げて行きましたけど、痛みも後遺症もありませんし!」


おまわりさん、犯人はこいつです・・・・。


 「ま、まあ。大まかな状況は分かった。で、俺に声を掛けたのはなんで?俺以外にも通行人くらい二日も居たら大勢通ったでしょ?」


「それは、トーヤさんから魔力を感じたからです」


・・・・・え?魔力?俺から??

お読みいただきありがとうございます

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