第二十六話 彼女の心配
今日は仕事と用事で24時間徹夜の状態でやっと書きました
更新遅くなって申し訳ありません。
意識が遠くなっているのであとで修正はいるかもです
俺は控え室へと戻り血まみれの義手や怪我をした膝を水で濡らしたタオルで拭いていた。今更ながら膝が笑っている、結果としては勝ったが膝を一本持っていかれるなんて実践なら死に直結していた。 アリスは一緒に控え室へとやってきて俺の義手を布で拭きながら怒っていた。
「トーヤは無茶し過ぎです!先程の怪我を見た瞬間の私の気持ちがわかりますか?こんな賭け試合で無茶をして、もしかしたら致命傷を負って居たのはトーヤかもしれなかったんですよ?」
何も言い訳は出来ないな、腕を失って姉を泣かせ今度は脚を失いかけてアリスに心配を掛けた。俺は二年前から何も変わっていないのかもしれない、後先考えず結果のみ見て手段やリスクを考えていない気がする。
俺は「すまない」とアリスに謝りながら、姉にはこの事は言わないでくれるよう頼んだ。姉が知ったら激怒するのが目に見えていたからだ・・・。
コンコン、控え室のドアが叩かれた。返事を待たずに司会をしていた男が入ってきた。
「トーヤさん、お怪我は完治いたしましたか?少し支配人がお話したいと申しておりますので起こし願えますかね?」
こちらの返事を待ってはいるが断れるような雰囲気では無さそうだ。俺の所為では無いが貴重な魔道具を使い闘士を半殺しにされたのだから何か言われるのは確実だろう。
「わかった、だが彼女は残して俺だけでいいか?俺の問題だしな」
司会の男はチラっとアリスを見て、トーヤさんだけで大丈夫だと告げた。アリスは心配そうにしていたが俺は大丈夫だと言い含めアリスに先に帰るよう伝えて男に着いて行った。
男に連れられて控え室を出ると闘技場の奥にある部屋に通された。
「支配人、トーヤさんをお連れしました」
どうやらこの奥に支配人がいるようだ、俺は覚悟を決め扉を開けて中に入った。
「よう!お前さんがトーヤか?随分と威勢のいい新人だな!」
中には40代らしき細身の男が座っていた、この男が支配人か?随分と線が細いな。
俺は荒くれ者っぽい男が居るのだと思っていたので拍子抜けした。そんな俺を見ながら男は話を続けた。
「本当はよ?『癒しの領域』を使うといっても殺すかどうかの話になった時点でお前さんは怖気づくと思ってたんだよ。それがどうだ?逆に望んでいたかのように相手と戦い、しまいにゃ勝っちまった!大番狂わせだな!」
支配人の男が何を言いたいのかが分からない、俺を脅かそうとして失敗したのを怒っているのか?だが支配人の顔は笑っている。
「まあ、あれだよ。お前さんみたいに死を恐れない奴は大歓迎だ、もうちょい強くなって経験を積んだら闘士に成ってみねぇか?お前さんならいい稼ぎをしてくれそうだ!」
あ、勧誘だったのか。てっきりお前の所為で大損だとかそういう文句を言われるのかと。
どうやら支配人の男は俺の事を気に入ってくれたようだ、だが闘士としてか・・・名を売る目的からすると逆に日のあたらない場所に居そうなイメージなんだが。
「俺はある目的の為に名前を売ることを当面の目標にしてるんだけど、その目的が済むまでは闘士としては登録できないと思うんだ」
俺は素直に言った、闘技場の闘士になっても親父の耳に入るとは思えなかった。
「まあ、予約って奴だよ。俺が直接声を掛けるなんて滅多に無いんだぞ?冒険者として限界を感じたらまた寄ってくれ」
支配人はそう言うと小さな袋を投げてきた、俺が受け取るとチャリっと金属音が鳴った。開けてみると銀貨が3枚、300エルが入っていた。これは?と問いかけると支配人は楽しませてくれたチップだと笑っていった。
「何か困った事があったら声を掛けな、裏になら顔が利くからな。格安で請け負うぜ」
支配人はそう言うと帰っていいと手を振った。
俺は外へと続く道を案内されながら司会の男にさっきの支配人の言葉の意味を聞いた。すると男は小声でささやいてきた。
「支配人は盗賊ギルドにも通じているからな、表に出ないような噂や情報も手に入る。冒険者をやってくなら仲間に盗賊を入れるか盗賊ギルドと通じていたほうが何かと便利なんだ。もっとも盗賊でなければ盗賊ギルドと連絡なんて取れないがな。お前さんは運がいい」
なるほど、幸か不幸か俺は盗賊ギルドの関係者に見初められたわけだ。今後の冒険者活動に多少なりともメリットになる結果となった事を今は喜ぶべきなのだろうかと考えながら外へと出た。
外へ出るとアリスが帰らずに待っていてくれた。アリスは俺を見つけると安堵の溜息をついた。
「もう、トーヤに何かあったらと気が気じゃなかったんですよ?特に何もなくてよかったです」
俺は事の顛末をアリスに話した、闘士へと誘われた事や支配人が盗賊ギルドの関係者で今後情報を売ってくれるかもしれない事などだ。
「へぇ、闘技場って盗賊ギルドとも繋がっているんですね、今後役立つ事もあるでしょうから許してあげます」
アリスに何故か許され、俺達は姉の待つ宿へと帰路に着いた。