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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第二章 異世界訪問編
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第二十五話 彼女と試合結果

今回で闘技場のシーンは終わりです。

戦闘シーンは難しいです・・・

9/13 最後の所を少し修正しました

 しばらく試合は中断されていたが流石なのは司会の男だった。観客が動揺しないようにありとあらゆるマイクパフォーマンスで会場を沸かせていた。俺の事を今年の期待の新人だとか持ち上げる様な事も混じっていて少し恥ずかしかった。

 15分程で係員が司会の元へやって来て何やら耳打ちをすると、司会の男が先程の闘士の意識が戻り、特に問題が無いことを告げた、会場に一段と大きな歓声が響く。

 よかったと思った、流石にこんな賭けの試合で相手に大怪我は負わせたくなかった。少しは気持ちが軽くなったところで次の試合をするというアナウンスが流れた。


 既に三人倒していたのでアリスは損はしないだろうと思うと気が楽だ、後は俺がどこまでやれるかの腕試しだけが残る。出場者への賞金は五人目を倒してからだ、五人倒すと1,000エル(十万円)で、そこから倒す毎に倍になっていく。十人抜きの10万エルは無理だとしてはたしてどこまでやれるか。

 司会から俺に向けて伝える事があるらしく、会場と俺の注目を集めた。


「先程までトーヤ氏の腕を見誤っておりました!運営サイドでは最高の救護班を用意を致しております。また最高級の魔道具『癒しの領域キュアフィールド』を発動致しまして、例え致命傷を受けたとしても瞬時に再生させる事が可能となります!これで出場者も全力で、観客の皆様もご安心して観戦頂けます!」


 観客席から今まで以上の歓声が上がる、『癒しの領域キュアフィールド』という魔道具を知らない俺は何がすごいのか理解できなかったので、他の観客と同様に驚いているアリスに説明を求めた。


 「『癒しの領域キュアフィールド』というのは魔術師学院などで実践形式の試合で使いますが例え致命傷でも決して死ぬ事は無い領域を発生させるんです。とても価格が高くてある程度の時間で効果を失う消耗品なんです。魔術学院では自分達で補填してますが、闘技場だと補填するのに多額のお金が必要になる筈なんです・・・」


 つまり、俺と相手の闘士が遠慮なく戦えるようにという為に高額な魔道具を使うってわけか。さっきの試合みたいな出来事があっても大丈夫と。逆に言えば相手を殺すくらいの行為が認められるって事だよな?それだけ相手も本気で来るってわけだ・・・。

 俺の手と膝に不意に震えが走った、いくら死ぬ事は無いといっても死ぬほどの痛みは襲ってくる筈だ、逆に相手を殺す感覚も俺に感じられるのだ。

 産まれてから今まで手加減して来た、いくら本気で試合をしてもそれはスポーツの域を出ないレベルだった。今から殺すか殺されるまでの戦いをしなければならないと思うと自然と体が震える。

 手加減出来ればいいのだろうが、ここまで準備するということは相手は手加減して来ないという事だろう。だとすれば俺だけが手加減したらやられるのはこっちだ。


 不思議と恐怖はあまり感じていない自分が居た、どこか他人事と思っているのかもしれない。どうせ死なないという意識があるのだろうか。それとも・・・本気の殺し合いを経験できる事を期待しているのか?

 

 「トーヤ?・・・」


 アリスが俺の顔を見て不思議そうに首を傾げた。顔に何か付いているのかと手で触ってみると頬が少し引きつっていた。いや、これは俺は笑っているのか?

 長く日本という平和な国に育って今まで殺意など持ったことも無かった、今でも殺意を抱いてはいないとは思うが本気の殺し合いを経験できるというチャンスに対し俺は笑っていた。

 決して死ぬ事は無い、それは確かだ。でも、この世界で生きる為に決して避けられない戦いの予備戦を今経験しておくのはメリットに違いない。


 俺は覚悟を決め、アリーナの中央へと足を進めた。今度の対戦者は無手に手甲だけの装備だった。俺と同じ格闘者か?防具も俺と同様に着けていない。

 先に致命打を与えたほうが勝つ・・・か、相手は足の運びも身に纏っている雰囲気も今までとは全く違っていた。やはり楽に勝たせてくれる訳が無い、予想通りと言えばそうなのだが。

 俺も本気で身体強化を行う、相手の闘士も同様に身体強化を行っているようだ。

身体強化をすると軽い打撃では影響が及ばない、恐らく一撃一撃が全力の打撃になるのだろう。

 

 「では、第四試合の開始です!」


 司会の合図と同時に俺は地を蹴って前にでた! 相手は様子を見て受けに回るようだ。俺の左右のコンビネーションパンチから下段への蹴りでフェイントを行い、中段への変則蹴りを放つ!

 相手は軽くステップを踏みながらパンチを避け、フェイントにも引っかからず中段蹴りも膝でブロックする。こちらの攻撃を防いだ直後に反撃を仕掛けてくる! 俺と同様に左右のパンチから肘打ちや膝での攻撃、懐に入られるのを嫌って俺は後ろに一歩ステップして避ける。

 

 身体強化でかなり運動能力も動体視力も強化してあるのに目で追うのがやっとのスピードだ。俺は更に意識を集中して魔力を高める、力へ回す魔力を若干速度へと配分を変える。

 この身体強化での魔力配分を変える方法は独自に思いついたものだ。本来は一定の魔力強化は均等に全身に回るため、俺のような力と速度など細かな調節などは聞いたことが無いとアリスには言われた。

 さっきより俺の速度が一割程度上がった、相手は俺の速度が上がった事に驚愕の表情を浮かべた。俺の攻撃速度に反応が微妙に遅れて来ている。


 数十回に及ぶ打撃の応酬の末、俺の蹴りが相手の即頭部に入った! 相手は一瞬脳が揺らされたようで膝が抜けた。俺はこの隙を逃さず右手での抜き手を相手の鳩尾に放つ!

 ズブリと嫌な感触が俺の義手から伝わってくる、相手の体に俺の義手が手首まで埋まっている。相手はごふっと血を吐きながら自分の体を見たあと仰向けに倒れた。


 「試合終了!四回戦もトーヤ選手勝ち抜きです!!」


 司会の声が聞こえる、と同時に俺は膝から崩れ落ちた。一体何が?と思って足を見ると膝が逆方向に折れていた。焼ける様に痛い!悲鳴をあげなかったのが奇跡なくらいの痛みが遅れて襲ってくる。どうやら俺が抜き手を放った時に相手が膝に向けて前蹴りを繰り出していたらしい。

 タイミングがあと一秒も早ければ俺のほうが体勢を崩して抜き手は外れていただろう・・・。よく脳震盪を起こしかけたあの一瞬でこれだけの蹴りを放ったもんだ。俺は相手に敬意を抱いた、一歩間違えれば俺が負けていたんだと思うと勝てた事が嬉しくもあり、紙一重の差だったのだと自分の力不足も思い知ることができた。


 結局、試合は俺の勝ちで決着がつき、魔道具の効果で相手の怪我も俺の膝もすぐ治った。

 だが俺はここで棄権すると審判に伝えた。今の戦いで精神力を限界まで使っていたのと、魔力も大分消費してしまい次の戦いは勝てないと判断したからだ。

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