第二十二話 彼女と初討伐
お読み下さりありがとうございます。
今日は休みなので後ほど追加で投稿すると思います。
翌朝になり、昨晩悩んでいた事は即試すという事で簡単な依頼を受ける事にした。
いきなり人型の魔物は厳しいから、動物型がいいな。俺達三人は朝の9時頃に冒険者ギルドへ赴き依頼書でいい物が無いか探した。
目に留まったのはバーサークボアという猪討伐の依頼だった。王都近くの林に数匹住み着いたので倒して欲しいという依頼書だった。
「これなんかちょうどいいかな?」
俺は二人に尋ねると「無難なとこかしら」と二人共頷いたので受ける事にした。
ちなみにバーサークボアのランクはDだった。大量に沸かない限りは対処できるのではないだろうかと思う。
カウンターに依頼書を受ける事を伝え、受理された。あとは出没すると言われている林に向かうだけなのだが、その前に最低限必要な物を準備する為に万屋に向かった。
「トーヤ、何を買うんですか?」
アリスに聞かれたので、投擲用のナイフを数本と雨が降った時用のマントなどを買うと伝えた。
姉も毒消しなどポーション類をいくらか購入するようだ。アリスは俺達の購入する品を確認し、不足しそうな物を何点か購入していた。
準備も整ったし、早速街道へ出て林へ向かうことにした。今回は近場という事で昼間に見つからない場合は王都へ戻って夜は狩らない事にした。
初の戦闘で夜というのは厳しすぎるという全員の意見だったからだ。
「しかし、バーサークボアか。確か本だと突進してくるから牙に気をつけろって書いてたな」
俺は出発前に読んだ魔物の特徴を書いたページを思い出しながら二人に言った。
「そうね、可能な限り前衛と後衛は直列にならないように、多少ずらしましょう」
姉が言う通りだ、もし前衛が避けた場合にそのまま後衛に突っ込む恐れがある。なので多少位置をズラしながら戦う事にしよう。
「討伐部位は牙らしいのですが、それとは別に肉がそこそこの値段で引き取ってくれるそうですので、あまりひどい損傷は与えないほうが高く売れますよ?」
アリスが本に書いていなかった知識を披露する。そうか、肉って売れるんだな。知らなかった俺はアリスへお礼を言った。
「ありがとうアリス、それは知らなかったよ。じゃあ打撃は避けて刀で切る事にしよう」
肉が潰れては売れなくなってしまうだろうと思い俺は刀で戦う事にする。
王都から出て2時間程歩いた所で目的地である林が見えてきた。林といっても雑木林で下草も鬱葱と生えてて見晴らしは悪そうだ。
俺が前衛として刀で下草を切り払いながら進み、姉とアリスは10mくらい俺から離れた後ろを少し間隔を空けて着いてくる。
20分くらい探していると下草が踏み固められた痕跡を発見した。これが猪が歩いた跡だろうか?俺は二人に指のジェスチャーで合図すると、足跡らしき痕跡が続くほうへと慎重に歩く。
林が途切れ多少見晴らしがよくなった場所に出た瞬間、猪の鳴き声が響いた! どうやら俺達が見つけるより先に向こうがこっちに気づいたようだ!
何時遭遇してもいいように、フォーメーションは維持していたのが幸いだった。猪が俺に突進してきたのを俺が間一髪避けても、後ろの二人には影響が無かった。
俺は猪に向き合い、姿を視認する。どうやら本に書いてあったバーサークボアに間違い無いようだ。
「一定の距離を維持、俺が足止めするから遠距離から仕留めてくれ!」
俺は叫ぶとバーサークボアに向かって走り出す。奴の勢いが乗る前に牙を両手で掴み足止めを試みる! 俺の狙いは成功し、牙を掴んだ事でバーサークボアは突進する勢いを失った。
だが、さすがパワーが途轍もない。俺は全力で牙を押さえつけ猪の動きを抑えた。
「『風の刃』!」
姉から風の中級魔法である風の刃が飛ぶ。流石に狙いは正確で俺の横を通り過ぎ猪の足に当たった。猪の足が切断され体勢が崩れた!
「『風の槍』!」
そこへアリスの魔法が炸裂、これも風の中級魔法だ。少し横へ回ったアリスからの一撃はバーサークボアの横っ腹に文字通り風穴を開けた!
猪はしばらくもがいていたが、30秒もすると力を失い動かなくなった。
俺はやっと牙から手を離し、念のため咽笛を刀で切り裂く。反応が無かったのでアリスの魔法で致命傷だったのだろう。
「ふう、お疲れさん」
俺はやっと緊張を解き二人に向かって言った。姉も緊張していたのだろう、大きく息を吐いて笑みを浮かべた。
「まだ他にいるかもしれませんので、油断はしないでくださいね?」
そんな俺達を見ていたアリスが嗜めた。そうだな、目撃数は複数だったのだ、今の騒ぎを聞き現れるかもしれない。
俺と姉は意識を切り替えて周囲を見渡す。しばらしくしてアリスの忠告が正しかった事を俺は理解した。その後すぐ二匹の猪が現れ、結局一時間の間に五匹程相手にする羽目になった。
「アリスから忠告を受けていなかったら二匹同時の時にやばかったな」
結局五匹の猪を全て討伐し、更に一時間程周囲を警戒したが猪が現れることは無かった。今回はこれで全てのようだ。
この場での解体は他の魔物が寄ってくる可能性があるため、アイテムボックスに収納し王都の近くまで移動してから行うことにした。王都の門が見える距離まで来てから木陰で解体を行った。
「そうね、一匹倒したと思ったら次から次へと現れるんだもの、魔物を殺したと考えてる間も無かったわ」
姉も魔法をかなり使ったので若干疲れているようだ。猪の牙を切り取り、肉を各部に分けていく。三人とも慣れて居ないのでお世辞にも上手いとは言えないが買い取って貰えるだろうか?
「そうだな、かなり連戦して疲れたし宿に戻って反省会としよう」
俺は解体した肉と素材をアイテムボックスに収納し立ち上がる。五匹も魔物を殺したのだが、思った程罪悪感などは無かった。殺さなければこちらが危なかったのだ、姉の言う通り休む間も無く襲って来たせいで悩む間も無かったのも事実だが。
こうして、俺達三人の初討伐は成功を収め報告の為にギルドへと戻るのだった。