表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
第一章 地球来訪編
16/136

閑話 地球での出来事

五章にて書いたものを移動しました

 高校の卒業まで残り一月を切ったある日、俺とアリスは自宅から一時間程離れた街まで出かけていた。俺の家は田舎なので一時間も電車で移動しなければ繁華街が無い為だ。大型スーパーやホームセンターくらいならあるんだけどな。こっちの世界から居なくなる前にアリスにこの世界の都市を見せておきたかったのだ。


 「トーヤ、なんか空気が淀んでます・・・」


 アリスは駅へ降り立つと顔をしかめてそう呟いた。都市といっても田舎だからなぁ、東京とか都会に比べれば全然綺麗なほうなんだと思うんだが。俺はそう考えつつ、アリスの世界には車が存在しないのだから敏感なんだろうと思うことにした。


 「駅前は車通りも多いからな、少し行くと歩行者専用だし公園もあるからそっちに行こう」


 俺はそう言うとアリスの手を取って公園の方へと向かう。本当はバスで移動しようと思っていたが、アリスは車に酔い易いので徒歩で移動するほうがいいだろう。

 アリスを連れて二十分も歩くと綺麗な公園へ辿り着いた。ここならアリスの呼吸も楽になるだろう、俺はアリスの様子を見ながら公園の中を散策した。


 今日は野外イベントがあるようで結構な人が公園に集まっていた、皆アリスとすれ違うとチラっと振り返る。俺はなんとなく優越感を感じつつアリスの手を引いて出来るだけ人の少ないほうへと誘導した。暫くすると遠くから歌声が聞こえてくる、どうやらコンサートかフェスがあるようだ、アリスは歌の聞こえるほうへ耳を澄ませながら周囲を見て回った。


 「すごいですね、これだけ建築物が密集しているなんて私の世界では無い光景です」


 俺とアリスはベンチに並んで座りながら屋台のクレープを食べていた。アリスがこっちの世界に来てから大きな都市へ連れてきたのは初めてだったので感動しているようだった。


 「でも、やっぱり空気が悪いですよね。トーヤの家の辺りでも朝晩の車が多いときはそう思っちゃいます」


 やはり空気だけはお気に召さないようだ。アリスも最初は”鉄の馬車”と言っていたが、暫くすると車やバス、電車という名称を覚えたようで日常会話では異世界人という感じは全くしない。


 「まあ、環境問題だけは科学文明のデメリットだよな、魔法文明でなら有り得ない事だろうし」


 俺はそう相槌を打ちながらクレープを平らげる、アリスは美味しそうに食べているがまだ半分くらい残っているから暫く待つ必要がありそうだ。俺はペットボトルのお茶を飲みながらアリスが食べ終わるのを待った。


 「トーヤ、私にもお茶ください」


 アリスはそう言うと俺の飲んでいたペットボトルを取ると、口をつけた。向こうの世界には間接キスなんていう概念は無いんだろうか?俺は少しドキドキとしながらもアリスが飲み終えたペットボトルを受け取る、これに口をつけるのは俺には難易度が高いなぁと思いつつキャップを閉めカバンにしまう。

 ちなみに俺が今もっているカバンは、異世界の空間魔法『アイテムボックス』のかかった魔法鞄である。アリスから習って鞄に付与してみた最初の作品だ。本来なら魔法さえ唱えれば何も無い空間へと出し入れが出来るのだが、周囲の目があるので鞄に付与する格好となった。


 俺の魔力と精度ではまだそこまで物が入らないが、それでも椅子や本などそれなりに収納する事が可能になった。ちなみに、姉が作った魔法鞄は車を入れるくらいの収納力がある。それほど俺と姉の能力に差があるという事なのだが・・・。


 「さあ、今日はトーヤの世界を見せてくれるんですよね?楽しみにしてますから!」


 アリスはクレープを食べ終えたようで立ち上がると俺の手を取って立ち上がらせた。俺はアリスと手を繋ぎながら色々なところへ案内した。本屋、雑貨屋などは特にアリスの興味を引いたようだ、こちらの世界の文字もある程度読めるようになったアリスはこっちの世界の文学に興味を持っていて、昔の神話についてや古代の英雄の話などを購入したようだ。


 「まだ読めない字が多いですけど・・・」


 アリスはそう言いながらも本を何冊か購入していく、シリーズ物の場合は全巻購入するので結構な量になる。向こうに戻ってしまえば続きが手に入らないので今買っておかないと後悔するとの事だった。


 本屋を出た俺達は夕方になってきたので家へと帰ろうと駅へと向かう。途中、欲しい物があったのでアリスを店の前に待たせて一人で店の中へと入る。一緒に入ってもよかったのだが、下着類を買うつもりだったので一緒だと気まずかったのだ。


 急いで必要な物を購入して店の外へ出ると、外で待っていた筈のアリスの姿がそこに無かった。俺が周囲を見渡すと少し離れたところで複数の男に囲まれたアリスの姿を見つけた。またナンパか?アリスは美人なので街を歩いていると何度かナンパされかけたのだ、俺が傍にいるのに気付くと大概は去っていったのだが・・・。


 「ちょっと、俺の連れに何か用か?」


 俺はそう声を掛けてアリスの方へと歩いていく、男達は俺がまだ若いと見ると馬鹿にしたような態度で返事をした。


 「あぁ?俺はこの綺麗な人にだけ用があるから餓鬼は一人で帰りな!」


 四人組らしい男達は見た感じ二十代だろうか?二十歳過ぎの人らが十五のアリスを囲っているのはどうかと思うんだが。俺は溜息をつきながらアリスの手を取って自分の方へと引き寄せた。


 「残念だけど、彼女は俺の家の人なの。兄ちゃんらは他を当たって」


 アリスを引き寄せた際に胸に抱き寄せた感じになったのだが、それが男達には面白くなかったようだ。単純に俺みたいな未成年に口答えされたのが気に入らなかっただけかもしれないけど。


 「あぁ?!女の前だからって粋がってんじゃねぇぞ?ちょっとツラ貸せよ!」


 男達四人は俺とアリスを囲って路地裏へと行くように促す。ナンパするにしても人や相手に迷惑にならないようにしろよと思いながら俺は男達に言われるまま路地裏へと入った。素直に着いてくる俺がびびっているとでも思ったんだろう、男達は下卑た笑みを浮かべながら小さな駐車場で俺とアリスを囲って言った。


 「ちょっと教育が成って無い餓鬼にはお仕置きが必要だよなぁ?!」


 男の一人がそう言うと俺の胸倉を掴んだ、お前らのほうが教育足りてないんじゃないのか?そう思いながらも俺を掴んだ腕を義手のほうで掴んだ。


 「あいたたたた?!」


 義手は普段の俺よりも握力が強い、そんな力で腕を掴まれた男は馬鹿みたいな悲鳴をあげながら俺の服を離した。俺は感情を抑えて男へ説得を試みる。


 「急になにするんですか。いい歳して未成年相手にナンパしたり囲ったり、恥ずかしくないんですか?今ならお互いに怪我しないで済みますからさっさと何処かに行ってください」


 俺の心からの説得を聞いた男達は青筋を浮かべて殴りかかってきた。おかしい、相手を侮辱しないように言ったつもりだったんだが、俺はそう考えつつ男達の拳を避けた。


 「はぁ、面倒だけど身体強化の実験ついでにちょっと頭を冷やしてあげないとな」


 俺はそう言いアリスへ離れるように言う、男達は拳を避けながらの余裕そうな俺に更に怒りを高めたようだ。口々に意味不明な言葉を叫びながら襲ってくる。


 「トーヤ、右手では殴らないでくださいね?死にますから」


 アリスもしつこくナンパしてきた男達には辟易してたようで止める事も無かった。只、義手での攻撃を止めただけだった。俺は「了解」と短く答えると男達に相対した。



 結果、五分もしないで男達は地面へ転がっていた。空手有段者であるだけでなく魔法で身体強化や知覚強化をした俺にとっては本気で相手する必要も無い程度だった。


 「悪い事言わないから、次から未成年相手だからってこんな事しないほうがいいですよ?」


 俺はそう言い捨てるとアリスの手を取って裏路地から抜け出した。

家へと帰る間、アリスが何故か機嫌が良かった。ナンパされたりと余計なトラブルがあったけど楽しんで貰えたのだろうと思って俺は二人で家へと帰宅した。

 家へと入る時、不意にアリスが立ち止まって俺の手を引いた。俺も立ち止まるとアリスの方へと振り返る。


 「トーヤ、今日は私を守ってくれてありがとう。嬉しかった!」


 アリスはそう笑顔で言うと俺の背へと腕を回してギュっと抱きしめてきた。俺は突然の事に呆然としていると、アリスは頬を染めながら俺を残して家へ入っていった。

 俺は暫くして中に入ってこない俺を不審に思った姉が家の中から声を掛けるまで立ち尽くしたままだった。その後の俺は姉曰く挙動不審を絵に描いたようだったと今でも言われている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ