第十五話 彼女と異世界へ
今回で第一章が終わります
親父達の消息が掴めてから三ヶ月が過ぎた、今日は俺の卒業式がある。
そして、数日中には異世界へ旅立つ予定だ。この三ヶ月は何かと忙しい日々だった。
まず親父の知り合いである社長さんに会い借家と資産の整理を行って貰おうということになった。社長さんは親父の日記に書かれていた人で元ヤ○ザらしいが・・・。
俺達には親戚の子供みたいに優しくしてくれていた人だったので気にせず何時も通りに会いに行った。社長さんはある程度の事情を把握していたようで、
「ほう、親父さん達を探しに海外へねぇ・・・。生きてる目星がついた?なら止める訳にもいかねぇなぁ」
と、あっさりと納得し資産整理を請け負ってくれた。そして
「戻ってきた時にはまたあの家を貸してやる、家財道具や親父さんの書斎の本とかは残しておいてやるから戻ってきたときにはまた声をかけな」
やはり社長さんはいい人だった。親父の頃からお世話になりっぱなしだけど、やはり戻る場所があると思うと嬉しいもんだ。
「それと、親父さんからの預かり物があるからこの地図の場所にある倉庫に行け」
そう言われ地図と鍵を渡された。
家に帰ってから地図を三人で見ると、そう離れていない場所にある貸し倉庫らしく翌日行ってみる事になった。
車で30分程の場所にあるその倉庫は借主ごとに分かれていて鍵に書かれている番号に該当する倉庫は広さが20m×20mくらいだった。
俺達三人は中に入ると電気をつけた。そこに広がっていたのは・・・
「な、何これ・・・?」
姉は驚き声がうわずっている、俺は驚いて声もでなかった。
「これは、鎧や武器の類ですね?あちらの世界から持ち込んだものでしょうか?」
アリスだけは落ち着いて周りを見渡していた。
そう、倉庫に並べられていたのは鎧や壁に並べられた武器の類、その総数50点にも及びそうだ!
内訳はこうだ
・武器 15点 (刀、槍、直剣、杖など)
・鎧 20点 (金属鎧、皮鎧、ローブ、手甲など)
・装飾品 15点 (ネックレス、指輪など)
「すごいですね・・・、ここにある物はほとんどが何かしらの魔法が付与されています!」
アリスが感動し叫んだ。どうやら普通に鍛えた武具ではなく魔法の効果を付与しているらしい。
「ここにあるのでどのくらいの値打ちがあるんだろう?」
俺が気になってアリスに尋ねた。アリスはしばらく一点ずつ鑑定していたが
「ほとんどが高価なものだというくらいしか分かりませんね、城一つ買えるとか思うのですが・・・」
いや、ちょっとまって!城ってどんだけの価格かわからないけど、とてつもない値段じゃない?!
「これ、異世界にもって行ってもいいのかな?」
姉が装飾品を手に取りながら言った、どうやら確認というより「私の物!」という感じで持って行く気なようだ。
「まあ、お二人にも覚えてもらったアイテムボックスの魔法で収納すれば問題ないでしょう」
俺達はそれぞれ気に入った武器と防具をそれぞれアイテムボックスに収納した、当然アリスにも数点仕えそうな物を選んで貰って預けた。
「いえ、こんな高級な装備お借りしていいんでしょうか?」
アリスは恐縮しているようだが、使える人が使ったほうがいいと思うし、価値がよくわかっていないからそんなに高級という感じがしない。
「ああ、大丈夫だろ?俺達は自分で選んだ奴で足りるしそれはアリスにあげるから」
アリスが申し訳なさそうな、でも嬉しそうに「ありがとう」と言った。
こうして、一通り倉庫の中を片付けアイテムボックスに入れていると、変わったメダリオンが目に付いた。六芒星に龍を象った絵が彫られている。何かカッコいいので俺が貰う事にした。
しかし、これだけの物を保管しておきながら何も手紙などが無かったのに驚いた。ずっと秘匿しておくつもりだったのだろうか?それとも親父が死ぬ前には伝えるつもりだったのか?
こうして倉庫の物を全て受け取り家に帰った、使わない物でも向こうで売ればかなりの資金になるだろう。向こうに行ってから生活に困ることはこれで無さそうだ。
そして、俺達姉妹がアイテムボックスを習得している事でもわかるだろうが、空間魔法は習得できている。アリスから魔法を学んでから半年が経過しているが、俺達の魔法スペックは次の通りだ。
十夜
・内燃系魔法 (上級)
・放出系魔法 (初級)
・空間魔法 アイテムボックス
P A 150 (総合身体能力)
INT 50
M P 400
千秋
・内燃系魔法 (初級)
・放出系魔法 (中級)
・空間魔法 アイテムボックス
P A 70
INT 100
M P 700
アリスティア
・内燃系魔法 (上級)
・放出系魔法 (上級)
・空間魔法 アイテムボックス、空間転移、時空転移
P A 30→40
INT 100→150
M P 700→1000
正確な数値は向こうの世界に行ってからギルドなどで調べないといけないだろうけれど、アリスと比較しての数値だと思って欲しい。
俺は身体能力(PA)が高く内燃系、つまり身体強化や自己治癒能力を高める事に関してはアリスに既に並ぶくらいまで覚えている。INTが低くてもPAに威力が依存するから使い勝手がいいのだ。
姉は逆に身体能力はそこそこだが、放出系の魔法が既に中級は覚え終わっている、今は上級を学んでいるが狭い日本では使ったら即通報といわれているので続きは異世界に行ってからになりそうだ。
アリスはこの半年でINTとMPが更に上がった、やはり長く魔法を扱っていただけに俺達の追従は許さないようだ。
こうして、身の回りも整理が終わり、向こうでの当面の武装と資金も用意できた。
あとはホームセンターで色々と購入して、向こうの世界に行ってから使えそうな物を仕入れたり、業務用スーパーで食料品を大量に仕入れたりした。
こうして、日本で3月の終わりに俺達三人は日本から異世界へ転移した。
次から異世界編になります