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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
最終章
134/136

第百三十一話 情報

遅くなりましたが131話です。

更新が遅くて読んで下さっている方には申し訳ないと思っています。

 朝を迎え、野営のテントなどを片付けて出発してからずっと姉はアリスを冷やかしながらも指輪を見せて貰っているようだ。アリスも頬を染めながらも嬉しそうに姉に指輪を見せている。



 「しっかし、トーヤがアリスちゃんに指輪を贈るなんてね~。あーあ、私も欲しいなぁ」


 などとわざとらしく言いながらバトラを見るので彼は居心地が悪そうに御者台へと逃げてきた。

結果的に荷台に女性陣が三人と、御者台に男二人と別れる状況になっていた。


 そんな賑やかな荷台から聞こえてくる声に苦笑しながら馬車をすすめる。道中は特に危険な魔物に会う事も無く、一週間かけて順調にガルスディアと獣族の国であるトラウトの国境にあたる街へとたどり着くことができた。



 「ここが交易の街メッシオか」



 この街を見た俺の感想は「賑やか」の一言に限る。獣族の国との交易を求めるガルスディアを含む人族の国の商人が各地から集っているのがその原因だ。


 街に一歩足を踏み入れると、そこには多種多様な獣族と人族が入り乱れていた。ファレームでは獣族はあまり多くは居なかったので、ここまで獣族が多いのは初めてである。


 「ユグドラルに行った時も思ったけど、ファンタジーだよな」



 俺の言葉に頷く姉に対し、違和感を感じないアリスとバトラとフラウは何をそこまでという風体で俺達を見ていた。まあ、ファレームの万屋よろずやの店員はウサ耳だったんだけどな。


 「ひとまず、ここで立っていても仕方ありませんし宿でも探しましょう」



 暫くボーっと立っていた俺と姉の背をアリスが叩いて正気に戻す。メッシオの街は交易が盛んなので宿もいっぱい建っているが客も多く、夕方遅くなるとほぼ埋まってしまう恐れがあるらしく俺達は宿を探しに足早に進んだ。


 その日、なんとか泊まれる宿を見つける事が出来たのは尋ねまわって四件目だった。そこでも二部屋しか空いていなかったので、カップルごとに別れて部屋を取った。ちなみに今日は俺達の部屋にフラウが一緒だ。


 この宿屋も標準的な宿と一緒で一階が食堂兼酒場になっている。俺達は部屋で少しだけ休息を取ると一階に降りて食事をとった。流石に商人が多いせいもあって、あちこちの席から商売に関する話題が漏れ聞こえてくる。



 「メダリオンの反応は相変わらず北へと伸びているから、このままで行くと魔族の国へと入る事になるかな?」


 「方向が分かっても距離が分からないのが問題よね」



 俺の言葉に姉が溜息を吐きながら呟く。明日からは獣族の国へと入る事になるが、獣族の国内で済むのか魔族の国まで行くことになるのか判断が付かない。目的の場所に辿り着くまで一週間かかるのか、一年かかるのかが分からない旅は精神的にも辛い。



 「このメッシオで商人達に聞き込みでもしますか?獣族はもちろん、探せば魔族の商人も居る筈ですし」


 アリスの提案に俺は腕を組んで考える。


 「聞いて回るにしても親父達がなんて名乗っているかが分からないんだよな。地球での名前なのかこっちの世界での本名なのか」


 「地球で撮った写真があるじゃないですか。あれを見せて回ればいいのでは?」


 「ああ!写真があったな。流石アリスだ。じゃあ、写真を二枚ほど選んで手分けして明日は聞き込みでもしてみようか」


 俺の言葉に姉も頷く。他のメンバーも特に反対は無いようだ。旅の疲れも若干だが溜まっていたし、明日はゆっくりと体を休めながら情報の収集をすることに決め俺達は食事の続きをとった。




 翌日、夜が明けると共に街中は喧噪に包まれていた。流石商人だけあってせわしないというか街のあちこちから取引や買い付けの声が聞こえてくる。俺達は手分けして獣族の商人や魔族を探しては写真を見せて親父達を見たことが無いか聞いて回った。


 期待はあまりしていなかったが情報は全く得られず昼になった。俺とアリスは一旦宿へと戻り姉達と合流することにした。これは昼に一度情報の有無を報告しあう事に決めていたからで、万が一情報があった場合に夕方までお互いが知らなかったという事にならないよう姉が言い出したことだ。


 宿に戻ったが姉とバトラの姿は無かった。まだ聞き込みしてるのかと思い俺とアリスは果実水を注文すると空いている席へと座り、姉達が戻ってくるのを待った。

 俺達が宿に着いてから三十分程して姉達が宿屋へと戻って来たのが見えた。俺は手をあげると姉達を手招きした。



 「お疲れさん。こっちは収穫無しだったけど姉貴のほうはどうだった?」


 「私の方は少しだけど情報が得られたわ!」



 駄目元で期待せず聞いた言葉に、まさかの情報ゲットの返事が返ってきた。


 「マジか?!」


 「うん。獣族の商人の一人がね、ここから十日程行った所に出来た小さな開拓村にお母さんらしき人を見たって言ってたの」



 姉が聞いた話は、数年前に出来た開拓村へ行商に行った一人の商人から聞いたらしい。その村は人族ばかりで構成されていて、その村の代表として商談をした女性が写真の人に似ていたというのだ。


 「獣族の国内で人族ばかりの開拓村?珍しいな」



 姉の話を聞いて一番に思ったのはそんな事だった。人族のみで構成されているなら黙って人族の国に住めばいいのにと思ったのだ。



 「いいえ、トーヤ。別段珍しい事でもありませんよ?人族の国々よりは獣族の国のほうが税金や徴兵の制度が甘いので、あえて人族の国から離れて行く人も少なくはありません」


 「へ?そうなの?」


 俺の疑問をアリスがやんわりと否定した。



 「ええ。他に人族の国で政争に敗れた貴族とかが獣族の国へ流れたりする事もありあますね。妖精族の国は人族は住み難いですし、魔族の国は実力主義ですから獣族の国へ流れて行く人も少なくないのです」



 アリスの言葉に成程なと納得した。


 「それで、どうするよ?方角は目的と合ってるがその村に向かうか?」


 話が脱線しかけたのをバトラが元に戻した。そうだった、開拓村が出来た理由とかじゃなくそこに母さんらしき人が居るという話だったな。


 「勿論もちろん、どうせ通る道だしね。実際に行ってみて母さんかどうか確かめる」



 「気持ちはわかるが期待し過ぎるなよ?」



 「ああ、わかってるさ」



 バトラの忠告に素直に頷く。あくまで似ているだけで母さんだと言う保証は無いのだし、変に期待してて別人だった時はすごいへこみそうだしな。目的地も決まった事だし、午後からは買い出しに予定を変更して明日にはその開拓村へと向けて出発することにした。

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