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僕の彼女は異世界人  作者: 藤乃叶夢
最終章
133/136

第百三十話 旅の始まり

投稿が暫く空いて申し訳ありません。なんとか完結まで頑張って書こうと思います。


 前話までのあらすじ:Aランクになったトーヤ達に『片翼』の解散によりバトラがチームに加入。五人になったトーヤ達は両親を探しに北へと旅立つ。

 ファレームを出立することにした俺達は、まず転移魔方陣で北に位置する隣国ガルスディアへと飛んだ。ガルスディア国はファレームと同盟国で国同士の交流が盛んだ。


 これからの予定としてはこの国を出て更に北へ、メダリオンが指し示す方角へとひたすら旅を進める事になる。北へは獣族の国トラウドがあり、その先には途轍もなく深い森ラグロクが広がっている。そして更にその先には親父の故郷であろう魔族の国フェレゼブがある。


 獣族の国へはそれ程かからずにたどり着くだろうが、ラグロクの森を抜けるのにはかなり時間が必要だろう。獣族の国では手に入らない物もあるので、ガルスディア国に居るうちに旅に必要な食糧や消耗品などを一通り揃える必要がある。その為、今日はガルスディアの首都であるここメレリアで分担して買い物をする予定だ。


 

 「っと、これで必要な物は全部かな?」


 「そうですね。あともう少し調味料が欲しいので、もう一軒だけ寄っていいですか?」


 「了解~」


 俺とアリスは旅に必要な食材や調味料を買いながらガルスディアの王都であるレクシアを散策している所だ。明日には北へと向けて出発し、大きな街は無くなる為買い出しの最中である。


 一通り必要な物を買い終えると、馬車を調達しに別行動をしていた姉とバトラと合流する予定になっている。恐らく旅の間はアリスと二人きりになれる時間は取れないだろうと、二人でゆっくりと買い物を楽しんでいた。


 食材を買い揃えた後、日用品や貴金属などを売っている店で更に必要な物を選んでいると、ふとアリスが立ち止まって店の一角を眺めていた。後ろから覗いてみるとそこは装飾品が置いてあるコーナーで様々な指輪やネックレスなどが並んでいた。


 (そういや、アリスにプレゼントしたのってこっちの世界に来て直ぐの時だけだな・・・)


 以前アリスにはミスリルのブレスレットをプレゼントした事があったが、実用性重視のミスリルのブレスレットだったし、もう二年以上付き合っていて指輪の一つも買っていなかったことに気付いた。


 (もう二年も付き合ってるんだし、そろそろ指輪でも・・・)



 内心で考えていることをアリスに気付かれないように誤魔化しつつ、その日の買い物を全て終えるとアリスに姉達と合流しておくよう伝えて一人別行動を取ることにした。


 「ごめん、個人的に欲しいのあったからちょっとだけ買ってくるわ」


 「もう、さっき一緒に買っておけばよかったのに。遅くならないでくださいね?」


 アリスに文句を言われながらも俺は急いで店へと戻った。買い物を終えて姉達と合流したのはそれから一時間程過ぎていて、姉やバトラさん達に遅いと怒られてしまった。


 


 俺の所為で遅れが生じてしまったけど、馬車に乗って北へ向けて出発することが出来た。馬車はほろ付きの小さなタイプだが、雨が降った時には無理をすれば四人が雨を凌ぐことが出来るくらいの広さはある。

 買い物はすべてアイテムボックスに入っているので場所を取られることもなく、一人が御者でもう一人が周囲の警戒をしながら交代で馬を進めた。今の所雨に降られる事も無く、良い天気の中旅が出来ている。


 「ガルスディアを抜けるには一週間くらいでしょうね。そこからは獣族の国へと入るけど、街道沿いに歩くしかないからラグロクの森までだと三週間ってとこね」


 俺が御者をしている後ろでは姉が地図を広げて色々と書き込んでいる。ラグロクの森に入ると馬車では進めなくなるので獣族の国で売り払わなければいけない。もっとも、道があったとしても森には魔物が多数生息している所為で馬は怖がって進めないのだけど。


 「まあ、三週間だけの付き合いだけどよろしくな」


 俺はそう言って馬へと話しかける。馬は俺の言葉を理解しているのかブルルと小さくいななくと元気よく歩を進める。ガルスディアの王都を昼前に出発してから休憩を挟みながら八時間程進んだ所で日が暮れて来たので野営の準備をすることにした。


 小川が流れている近くに馬車を停め、バトラと俺とでテントを二組張る。その間にアリスが晩飯の準備をして、姉が馬の世話をしている。フラウはたき火用に周辺から小枝などを集めているが体が小さいのでそれほど役に立っては居ない。


 テントを設営して簡単なスープとパンで夕食を取り、見張りの順番を決める。まだ街からさほど離れて居ないことと、街道沿いだから魔物は現れないだろうが野生の獣くらいは出るかもしれないので俺とアリス、姉とバトラという組み合わせで見張る事にした。


 パチパチと小さく音を立てながら燃えるたき火に枝を加えながらアリスと共に見張りを始めた。姉とバトラがテントへと入って暫く経ち、音もしなくなったので既に寝入っただろう頃合いを見計らってアリスへと小声で声を掛けた。



 「なあ、アリス」


 「ん?どうしたんですトーヤ」


 小さな灯りの魔法の下、本を読んでいたアリスは俺の声に顔を上げた。俺はアイテムボックスから昼間に購入した物を取り出してアリスから見えないように片手に持つ。


 「アリスと出会ってからもう二年も経つのに、今までろくにプレゼントもしてなかったなーと思ってさ。この旅で親父達に会えるかもしれないし、あった時にアリスの事をちゃんと紹介するつもりだけど」


 「トーヤからはブレスレットを貰いましたよ?」


 アリスはそう言うと腕のブレスレットを掲げて見せた。ミスリルのブレスレットは手入れがきちんとされているのか買った時と変わらない輝きを放っている。


 「いや、それはそうなんだけどさ。アリスと付き合い始めて二年も過ぎたし、俺はずっとアリスと一緒に居たいとも思ってる」


 「・・・ありがとう。私もトーヤの事好きですし嬉しいです」


 俺の言葉に頬を少し赤らめて俺の肩へともたれかかってくる。何時もならここでいちゃついて終わるんだが、今日はきちんと自分の思いを伝えておかなければと背筋を伸ばす。

 俺は先ほどアイテムボックスから出した小さな箱をアリスの目の前へと持っていく。アリスは小首を傾げて「これは何?」とばかりに俺の方へ向く。


 「一生、俺と共に居て欲しい。これはあれだ、プロポーズっつーか何つーか」


 恥ずかしい!生涯通してプロポーズなんて生まれて初めてだ。俺は指先で小箱の蓋をあける。そこには指輪が焚火の灯りを受けて輝きを放っている。


 「日本では結婚して欲しい相手に指輪を贈るんだ、できれば受け取って欲しい」




 俺の言葉に長い沈黙が続いた。やばいな、これは外した?まさか受け取って貰えないとか・・・。そんな最悪な考えが頭の中を埋め尽くす。長い沈黙の中、アリスの顔を見れずに十秒、二十秒と時間だけが過ぎ耐え切れなくなった俺はチラッとアリスの表情を伺う。


 「嬉しいです・・・」


 アリスは静かに泣いていた。目から涙を流し、やっと指輪の入った小箱を受け取ってくれた。俺はホッとしてアリスの頭を胸に抱きしめた。


 「ふう、良かった。断られるかと思った」


 安堵のため息を吐きながらアリスの涙を指で拭う。そしてアリスの右手を取り、指輪を薬指にはめる。確か婚約指輪ってこの指で良かったよな? 疑問に思いながらもはめるとアリスは嬉しそうにはにかみながら指に着けた指輪を眺めている。


 「親が見つかったらアリスのご両親にも挨拶に行こう。その・・・、これからもよろしく」


 「そうですね、まずはトーヤのご両親を見つけないとですけど。旅が終わったらきちんと挨拶してくださいね?」


 そんなやり取りをしながら二人で顔を見合わせ微笑みあう。





 ふと、視線を感じたのでテントの方を振り向くと、声が聞こえていたのか他のメンバーが顔をだしてチラチラと覗いていた。俺が気付いた事でサッとテントの中に消えていったが完全に全部見られていたんじゃないだろうか。


 恥ずかしさを誤魔化しつつ時間になるまで野営を続ける。この旅が何か月かかるかわからないけど、親に再会する前にアリスとの関係をちゃんとしたものに出来た事にほっとした。

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